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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百話 スターライト=セレナーデ

               第百話 スターライト=セレナーデ
ケーン達が要塞内部に突入した時ロンド=ベルの面々はギガノスの主力を相手にしていた。
「ヘッ、甘いぜ!」
ダンクーガの断空砲が放たれる。それで数機まとめて消し飛ぶ。
「そんなものかよ!もっと来やがれってんだ!」
「また熱くなってるね、藤原中尉」
「そうだね」
バーニィがクリスの言葉に頷いた。
「それにしてももっと激しい戦いになると思ってたけど」
「案外そうじゃないわね」
「敵の動きも悪いし数も少ないし」
「どうしてかしら」
「それは多分敵の指揮官のせいだね」
「万丈さん」
万丈が彼等にそう言った。
「敵の今の指導者はドルチェノフ元帥」
「ああ、あの」
「連邦軍でも鼻つまみ者だったそうですね」
ドルチェノフはそれで有名だったのである。連邦軍の中では嫌われ者であったのだ。クリスの顔は露骨に嫌悪感が出ていた。
「そう、その彼が指導者なんだ。今のギガノスの」
「うわ」
「何かすごそう」
「そう、だから実際に凄いことになってるんだよ」
「ギルトール元帥じゃこんなふうに楽に勝てなかったかしら」
「多分ね」
「やっぱり。そう思うとラッキーかしらね」
「さて、それはどうかな」
「違うんですか!?」
「うん、かえって何をするかわからないからね」
万丈はバーニィにそう返した。
「ああしたタイプは追い詰められるとね」
「実際今かなり追い詰められていますよ」
「移動要塞だってあの調子ですね」
「下手すると大変なことをしでかすな」
「大変なこと」
「それを防ぐ為に僕達がいるんだけれどね。じゃあやるか」
「はい」
「けどあれを言うにはちょっとタイミングが」
「ははは、僕だっていつも同じことはしないさ」
「じゃあ何を」
「目の前の敵を倒すだけさ。勝平君」
「おうよ」
勝平がそれに応える。
「派手にいくとするか」
「万丈さん、もう派手にやってるよ」
「そうですよ、勝平今も無茶やって」
「無茶やるのが戦いってやつなんだよ」
ザンボット敵陣に斬り込んでいた。そしてグラップを手に暴れ回っていた。
「では僕も」
ダイターンの額に手を当てる。
「サンアタック!?」
「そうさ、けれど今回のサンアタックはちょっと違うよ」
恵子に対して言う。そしてサンアタックを放った。
「喰らえ、サンアタック乱れ撃ち!」
日輪の輝きがその額から無数に放たれる。それで敵を屠っていった。
「まあざっとこんなものさ」
「凄い・・・・・・」
「何か私達も負けていられないわね」
バーニィとクリスは驚きを隠せなかった。
「じゃあこっち戻ってくれよ」
ここでキースが彼等に声をかける。
「キースさん」
「コウもいるけどさ。大変なんだよ」
「了解」
「じゃあ今からそっち行きます」
「おいおい、じゃあこっちは僕とザンボットの二機だけかい?」
「光竜と闇竜要塞の方だしな」
実は光竜と闇竜はダイターン、ザンボットと同じ小隊なのである。大型で小回りの利かない彼等のフォローを務めているのである。
「参ったな」
「じゃあそっちに今から行きます」
「おっ」
ミカの声が通信に入って来た。
「コスモクラッシャー隊、急行します」
「有り難いね。じゃあゴッドマーズも」
「はい」
今度はタケルの声が入って来た。
「俺も行きますから。頑張って下さい」
「やっぱりコスモクラッシャー隊は戦局を見てるよな」
「本当、どっかの誰かさんとは大違い」
「ちぇっ、また俺かよ」
「ははは、勝平君は勝平君の戦い方があるさ」
「万丈さんまで」
「何はともあれ一気に攻めよう」
「ああ」
ナオトがそれに頷く。
「一気にいくぜ」
「うん」
「あれっ、どっちがどっちなの!?」
ミカはナオトと万丈の声を聞いて戸惑いを見せた。
「って俺がこっちで」
「僕はこっちだけれど」
「御免なさい、声が似てたから」
「ははは、確かに」
万丈はそれを聞いて思わず笑った。
「そっくりだからね」
「うちの隊長と甲児の声も似てるしな」
「いつも言われるな、それは」
ケンジはアキラの言葉に苦笑した。
「似ていないと思うけれどな」
「いや、そっくりだと思うよ」
「ナミダまで言うのか」
「だって本当にね。そっくりなんだもん」
「じゃあいっちょロケットパーーーーーンチッ!とでも叫んでみるか」
「って本当に同じですよ、隊長」
「やれやれ。困ったものだ」
「俺の声もビルギットさんにそっくりだって言われるしな」
「私この前聞き間違えたわよ」
「いいよな、ミカとナミダとタケルは」
「どうして?」
「間違えられなくて。これでも困ってるんだぜ」
アキラは苦笑いを浮かべていた。
「あんまり声が同じだからさ」
「そういえばバーニィ君とシーブック君も声が似ているね」
万丈が言った。
「それもそっくりで」
「あと綾波レイちゃんとクリスさんもそうですよね」
ミカがそこに付け加える。
「あれっ、そうかな」
タケルはそれを聞いて意外といった声をあげた。
「全然違うように聞こえるけれど」
「そうかしら。私には同じに聞こえるわ」
「そうなのか」
「よく僕の声はブライト艦長だって言われるけれどね」
「万丈さんはまたそっくり過ぎますよ」
「弾幕薄いぞ!何やってんの!とか」
「クッ、弾幕薄いぞ!何やってんの!」
その遠くからブライトの声が聞こえてきた。
「うわ、見事なハーモニー」
ナミダはそれを聞いて思わず言った。
「同じ人みたいだよ」
「ううむ、参った」
とは言ってもその言葉には危機感はない。
「そういえば今中に言っている面々もだな」
ナオトが言った。
「ケーンにしろタップにしろライトにしろな」
「イーノやキャオ、あとイルムさんってとこだな」
「そうそう」
アキラとミカが言う。
「似てるから」
「そういえば彼等は大丈夫かな」
「ええ、今のところは大丈夫みたいですよ」
タケルが彼等の気配を探った。その後で述べた。
「ドラグナーチームとGGG機動部隊、Wの五人潜入成功です」
「彼等の努力にも期待だね」
「上手くやってくれるといいがな」
「そうね」
要塞の外では激しい戦いがなおも続いていた。そしてそれは要塞の中にも達していた。
「ルネ姉ちゃん、行くわよ!」
「よし!」
光竜とルネが動きを合わせる。そして前後からメタルアーマーに攻撃を仕掛けた。
「小さくてもね、動きはそっちより速いんだよ!」
「うわああっ!脱出を!」
攻撃を受けたギガノスのパイロットが脱出する。そして基地の中で爆発が起こる。
「一機一機は大したことないね」
「ああ、意外にな」
凱がそれに応える。
「数だけはいるようだがな」
「それでも何か敵に戦意が感じられねえな」
「それはあるな」
ライトはタップの言葉に応えた。
「どうにも。やる気がな」
「やはり。ギルトール元帥の存在が大きかったようですな」
軍曹はそんな二人に対して言った。
「やっぱりあの人か」
「はい。カリスマ性がありましたから」
「ふうん」
「しかし」
だが軍曹はここで付け加えた。
「まだ安心は出来ませんぞ」
「そうだ、お袋を見つけ出さねえと」
ケーンが声をあげる。
「早くしねえと戦いに巻き込まれて」
「それはどちらですか?」
氷竜が彼に問う。
「援護するから。教えてくれ」
「ああ、こっちだ」
ケーンは炎竜の言葉に応えて左を指差した。
「そちらですね」
「間違いない」
闇竜にも返す。
「わかった。それでは」
風龍が動く。
「けれど方向音痴は勘弁な」
「俺はマサキじゃねえから安心しな」
雷龍には言い返した。
「一度見たものは忘れねえよ」
「よし、じゃあ行くぞ!」
「了解」
ボルフォッグが凱に続く。
「ブラザー達も来たもんね~~~~~~っ!」
「おっ、助っ人登場かよ」
「頼りにさせてもらうか」
「マイク達、悪い奴等ギッタンギッタンにしちゃうもんね!」
デュオとウーヒェイにそう答える。
「頑張っちゃうもんね!」
「しかしだ」
「ホワット!?」
トロワの言葉に目をクエスチョンマークにさせる。
「これだけ大勢で中に突入するとは思わなかったな」
「そうですか!?あっ、そうですね」
カトルはマイク達を見て納得した。
「マイクさん達がいますから」
「マグアナック隊も来るな」
「ええ、彼等は何時でもスタンバっていますよ」
ヒイロの言葉にも何気なく返す。
「何か賑やかになってきたな」
「隠密ってわけにはいかなくなってきたな」
「じゃあルートをそれぞれ変えるか?」
凱はケーンとライトに提案してきた。
「それぞれって!?」
それにタップが尋ねる。
「俺達GGGは敵の陽動に回る」
「そして僕達とドラグナーチームでケーンさんのお母さんをですね」
「そういうことだ。一箇所に集まるよりその方がいいだろう?」
「そうですね」
軍曹は凱の提案に頷いた。
「それも宜しいかと」
「よし、じゃあそうするか」
「了解」
「俺達はこっちだ」
「そして俺達はこっちだ」
ケーンと凱はそれぞれのルートに足を踏み入れた。
そして進みはじめた。当然目の前にいる敵は残らず倒していく。
「敵の部隊はさらに要塞奥深くにまで達しています!」
ドルチェノフにとっては聞きたくない報告が次々と入ってきていた。
「プラートも来ています!」
「奴はどう来ておるか!」
「こちらにまっすぐです!」
「何だと!」
「どうやら裏切り者が続出しているようです!その者達の先導と思われます!」
「クッ!許さぬぞ!」
ドルチェノフは顔を紫色にして呻く。
「やらせるな!」
「ですが閣下!」
戦局がギガノスにとって悲観的から絶望的、そして破滅的になるのは時間の問題であるのは誰の目にも明らかであった。ギガノスというよりはドルチェノフにとってであるが。
「何としてもここに辿り着かせるな!要塞内にある全戦力を集結させよ!」
これが間違いであった。今更集結なぞ無理であった。だがドルチェノフは元帥でありその命令は絶対だ。こうしてギガノスは無理な集結にかかった。
「おいおい、何か急に戦力がなくなってきたぜ」
ゴルディマーグは目の前の敵が減ったのを見てこう言った。
「しかも残ってる奴もそそくさと行っちまうしよ」
「おそらく敵に何かの変化があったのでしょうね」
「問題はその変化が何かね」
ルネはボルフォッグにそう返した。
「どっちにしろ。これをあたし達によくしないとね」
「とりあえず敵を追うぞ」
凱はそう決断を下した。
「敵を追うのかい?」
「ああ、そして敵を倒していく。それがケーン達の為にもなるからな」
「優しいね、やっぱり」
「おいおい、褒めたって何も出ないぜ」
「かわりにケーンの幸せが出るよ」
「ふふふ、そうだな」
要塞内では凱達が敵を追っていた。そして外でも変化が起こっていた。
「私がですね」
「はい」
ルリがリンダに対して言っていた。
「お願いできますか」
「私に出来ることなら」
リンダは強い声でルリに頷いた。
「やらせてもらいます」
「お願いしますね、ケーンさんの為にも」
「はい」
「そしてプラート大尉の為にも」
「兄の為にも」
「あの方はここで死んではならない方です」
ルリは表情も言葉の調子も変わらなかったが確かにこう言った。
「ですから。あの人の為にも」
「わかりました」
「問題は誰に貴女と一緒に行ってもらうかですが」
「おい」
ナデシコのモニターにクインシィが姿を現わした。
「私が行く」
「いいのですか?」
「とりあえず場はカントとナッキィでも充分だ。バイタルジャンプで一気にやる」
「場所はわかりますか?」
「やってみる。おおよそのことはこの子が見極めてくれる」
「そうですか。それではお願いしますね」
「ああ。リンダ」
「はい」
「一緒に行こう。そして家族を」
「お願いします」
リンダはクインシィのブレンに乗った。そしてそのままバイタルジャンプで何処かへと向かったのであった。
ケーン達は要塞内を突き進んでいた。敵はいなくなったが戦闘により崩壊寸前になっている要塞は次々と誘爆を起こしていた。
「ウワッ!」
爆風がドラグナー達を襲う。だが彼等はそれを何とか防いだ。
「チッ、えらいことになってきたな」
「ケーン、もうすぐなのか」
「ああ、もうすぐだ」
彼はヒイロにそう返した。
「あの扉の向こうだ」
目の前の鉄の扉を指差して言う。
「あそこにお袋がいる」
「そうか」
ヒイロはそれに頷くと前に出て来た。
「下がっていろ」
「下がっていろっておめえまさか」
「安心しろ、扉を破壊するだけだ」
「っておい」
「大丈夫だってケーン」
タップが心配する彼に対して言った。
「ヒイロは。ミスったりはしねえよ」
「そうだな。こいつが何の考えもなしに何かをするとは思えないしな」
「出力は抑える」
ヒイロはツインバスターライフルを構えた。
「扉だけを。潰す」
バスターライフルに炎が宿った。それは一直線に扉を撃った。
それで扉が破壊された。その向こうには通路があった。
「よし!」
「行くぜ!」
ケーンがその中に突っ込んでいく。その後に仲間達が続く。
「お袋!」
ドラグナーから飛び降りる。他の者もマシンから降りそれに続く。
「クッ、ここまで侵入者が!」
「やらせるか!」
「邪魔すんなって言ってるだろ!」
「御前等が正しいのならギガノスは崩壊しない!」
まずはデュオとウーヒェイが出る。その拳で彼等を防ぐ。
「ここは俺達に任せな!」
「御前等はその間に!」
「済まねえ!」
「今のうちに!」
ケーン達はさらに進む。だがまたギガノス兵達が来た。
「今度は俺が残る」
「俺もだ」
ヒイロとトロワが残った。
「カトル、御前はベン軍曹を頼む」
「ケーン達もな」
「わかりました」
「悪いな、こんなことまで」
ケーンが彼等に対して礼を述べた。だが彼等はそれはいいとした。
「気にするな」
「俺達はこの為に来た。それだけだ」
「済まねえ」
ケーン達は要塞内のかなり奥にまで達した。そしてその中の一室に辿り着いた。
「ここだ」
ケーンはタップ達の方を振り向いて言った。
「ここにお袋がいる」
「そうか」
「しかしよくわかったな」
「一度会わせてもらったんだよ」
「ドルチェノフにか?」
「そうさ。鏡越しにな。それもマジックミラーだ」
語るその顔には苦渋が満ちていた。
「戦いが終わったら本当に会わせてやるとか言われてな」
「少尉殿の親子の情を利用するとは」
「許せませんね、ドルチェノフ元帥」
「だがそれも。これで終わりだ」
「はい」
「開けるぜ」
「ってちょっと待てよ」
「どうした!?」
ライトの言葉に顔を向ける。
「鍵・・・・・・あるのか?」
「ああ、ここにな」
パイロットスーツから取り出してきた。
「持って来たぜ」
「よくそんなの持ってたな」
「ギガノスの連中からくすねてたんだよ」
タップの問いに答える。
「何時か。何があっても助け出そうと思ってな」
「そうか」
「じゃあ開けるぜ」
「ああ」
二人もカトルと軍曹もそれに頷いた。
「お袋、無事でいてくれよ」
ケーンは鍵を入れながら祈っていた。そして扉を開けた。
扉の中は個室であった。そこには一人の女性がいた。
「母さん!」
「母さんって」
その女性、アオイ=ワカバはその声に顔を向けた。
「ケーン!?ケーンなの!?」
「そうだよ母さん、助けに来たんだ!」
「その前に貴方、どうしてここに」
「ワカバさん」
ここで軍曹が前に出て来た。
「貴方は」
「私はケーン=ワカバ少尉の戦友であるベンという者です。階級は軍曹です」
「ベン軍曹ですね」
「はい」
軍曹はこくりと頷いた。
「少尉は、ロンド=ベルに参加しております」
「あの連邦軍の」
「左様です。ドラグナーのパイロットです」
「まあ色々あってね」
ケーンはその横で照れ臭そうに言う。
「そして今日は。貴方を救出する為にここまで」
「敵の本拠地まで」
「そうさ、早く脱出しよう母さん」
「馬鹿っ!」
だがアオイは息子の差し伸べた手には従わず逆に叱ってきた。
「なっ、馬鹿って」
「こんなところにまで!来るなんて何を考えてるの!」
アオイはそう言って息子を叱った。
「母さんが泣くことになったらどうするの!」
「どうするのって言われてもさ」
「少尉は貴女の為に命を賭けてここまで来られたので」
軍曹も少し戸惑っていた。
「それで馬鹿と言われるのは少し」
「ええ、わかっています」
それがわからない程彼女は愚かではなかった。
「ケーンが。私の為に来てくれたのは」
「お袋・・・・・・」
「大きくなったわね、ケーン」
「ああ」
「そして。有り難う」
「母さん・・・・・・」
二人は抱き合った。こうして母と子は無事再会と救出を果たしたのであった。
「おいケーン!」
そこで後ろからデュオ達の声がした。
「敵はあらかた倒したぜ!ずらかるぞ!」
「目的は果たしたのだろうな!」
「ああ、やったぜ!」
「よし、では行こう」
「この要塞はもう長くは持たない。行くぞ」
「いや、俺はまだここでやることがある」
「何だ、そりゃ」
「タップ、ライト」
「ん!?」
「俺達か!?」
「ああ。お袋を頼むぜ」
「頼むって」
「一体どうしたんだ。一緒に脱出しないのか」
「ちょっとドルチェノフの野郎に用がある。お袋を使って俺を苦しめやがって」
今度はドルチェノフへの怒りが蘇ってきていたのだ。
「一発殴ってやらなきゃ気が済まねえんだよ」
「また馬鹿なこと言いやがって」
「まあいいか」
タップとライトはそれでも納得した。
「じゃあ行きな。お袋さんは俺達が無事ナデシコまで届けるからよ」
「御前はドルチェノフをやりな」
「わかった」
「ケーン」
「母さん、また後でな」
「また無茶ばかりして」
「まっ、それが俺だから。勘弁してくれよ」
ドラグナーの方に向かう。敵はもう残ってはいなかった。だがそのかわりに赤いブレンがそこにいた。
「赤ってことは」
「ケーン、やっぱりそこだったな」
ブレンのコクピットが開いた。そこからクインシィが顔を見せた。
「クインシィさん、何でここに」
「御前と一緒に行きたい女がいてな」
「それってまさか」
「そう、そのまさかだ」
「ケーン!」
「リンダ、どうしてここに」
宇宙服に身を包んだリンダが姿を現わした。ケーンは彼女を見てこれまでになく驚いた。
「私も。ここにいないと駄目だから」
「戦場にか」
「ええ、兄さんを止める為に」
「兄さんって」
「ギガノスの旦那のことだよな」
タップとライトがそれを聞いて顔を見合わせる。
「早く止めないと。兄は死ぬつもりよ」
「死ぬっておい」
「いや、間違いない」
ヒイロが言った。
「あの男は大義の為に生きている。そして大義の為にその命を捨てることを惜しいとは思っていない」
「それじゃあ」
「間違いありませんな。プラート中尉のお兄様はここでドルチェノフと刺し違えるおつもりです」
「どうするんだよ、ケーン」
タップがケーンに声をかけてきた。
「義理の御兄さんなんだろ」
「ちょっと待て、おい」
ケーンがそれに突っ込みを入れる。
「何時俺があの旦那の弟になったんだよ」
「だからリンダちゃんと一緒になれば自動的にそうなるだろ」
「あっ、そうか」
ライトの言葉に納得する。
「それじゃ何があっても助けないとな」
「ヒーローらしくな」
「よし」
ケーンの腹は決まった。
「クインシィ、あんたはこのまま帰るのか?」
「そうだが」
「じゃあ皆に伝えてくれ。ちょっと行って来るってな」
「家族を救いにだな」
「ま、まあな」
クインシィまで言ったので少し顔を赤らめさせた。
「宜しく頼むぜ」
「わかった」
「で、タップとライトはお袋を頼む」
「おうよ」
「レディーファーストってとこだな」
「じゃあ行くか」
「ちょっと待てよ、おい」
だがここでデュオが声をかけた。
「俺達はどうするってんだよ」
「あっ、忘れてた」
「忘れてたってな、おい」
「御前等は御前等でやってくれないか?」
「では陽動に回らせてもらうぞ」
ウーヒェイが提案してきた。
「それでいいな」
「ああ」
「ベン軍曹はタップさん、ライトさんと一緒にナデシコに戻って下さいね」
「わかりました」
「では早速行くとするか」
「わかった」
ヒイロがトロワの言葉に頷いた。こうして彼等はそれぞれ動きはじめたのであった。
その頃マイヨ達はドルチェノフの元に突き進んでいた。そしてそれは当の本人が最もよくわかっていた。
「総統!最後の防衛ラインが突破されました!」
「う、うろたえるな!」
そう言う本人が一番うろたえていた。
「まだSP隊がいるではないか」
「そ、そうでありました」
部下はその総統に言われとりあえずは落ち着きを取り戻した。
「でだ」
「はい」
「貴様、行って来い」
「えっ!?」
「聞こえなかったのか、貴様がプラート達を止めて来いと言ったのだ」
「ほ、本官がでありますか!?」
「そうだ!こんな時にこその側近であろう!」
「総統はどう為さるのですか!?」
「わしは転進する!そしてその間に態勢を立て直す!」
つまり逃走するということである。
「よいな!何としても奴等を討ち取れ!」
「無理です!相手はギガノスの鷹です!」
「最初からそんなことを言ってもどうにもならんわ!さっさと行け!」
自分は席を慌しく立ち上がった。そのまま扉へ駆けて行く。
「健闘を祈る!」
「総統閣下ーーーーーーーーーっ!」
部下を見捨てて逃げ出した。彼はそのまま格納庫に向かう。
格納庫に辿り着いた。しかしその瞬間に格納庫が破壊され一機の赤いメタルアーマーが出て来た。
「おや、運がいいねえ」
そのメタルアーマー、スタークダインから女の声がした。
「こんなところで御面会とはね」
「貴様、まさか」
「そう、そのまさかさ」
ミンはそう答えた。
「ドルチェノフだね」
「・・・・・・・・・」
答えはしない。答えなくてもばれているのがわかっていたからだ。
「そろそろ年貢の納め時だよ。覚悟しな」
「クッ!」
彼はまた背を向けて逃げ出した。格納庫から去ろうとする。
「待ちな!」
ミンはそれを見てスタークダインから飛び降りた。そして彼を追うのであった。
ドルチェノフは基地の中を遁走する。ミンはそれを追う。追われるドルチェノフは通信室に逃げ込んだのであった。
「通信室かい」
ミンはそれを見てニヤリと笑った。
「これは。使えるかもね」
そして通信室に入った。中には将兵達はおらずドルチェノフが顔を紫色にして立っているだけであった。
「ここまで来たか」
「あんたに聞きたいことがあってね」
「聞きたいことだと!?」
「そうさ」
ミンは答えた。
「ギルトール元帥のことをね」
ここで彼女はこっそりと部屋の通信のスイッチを入れていた。だがドルチェノフは狼狽していてそれには気付いてはいなかった。これが大きく動く元となった。
「あれはプラート大尉の仕業だ」
彼は慌てふためいた声で言う。その声には威厳も何もない。
「あたしも今まではそう思っていたさ」
ミンはそれに答えた。
「けどね、おかしいんだよ」
「何がだ!?」
「どうもそこに居合わせた奴がいるらしくてね」
「どういうことだ」
「そいつが真犯人じゃないかなって思うんだけど」
「知らぬ、そもそもあいつは死んだ筈だった」
「あいつって!?」
「プラート大尉だ。それなのに何故」
「それはねえ」
ミンはわざと隙を作った。構えていたライフルを下ろす。
「今だ!」
ドルチェノフはそれを見逃さなかった。すかさずミンにタックルを浴びせる。そして転がったライフルを奪い取った。
「ワハハハハハハハハハ!形勢逆転だ!」
ミンにライフルの照準を合わせて勝ち誇る。ミンは床に腰を落としていた。
「わしに逆らった罪だ!死刑だ、死刑!」
「ちょ、ちょっと待っておくれよ!」
ミンはさらに芝居を続けた。
「何だ!?命乞いか!?」
「違うよ。最後に聞きたいんだ」
「最後に」
「そうさ、ことの真相をね。実際のところはどうなんだい?」
「フン、教えてやろう」
ドルチェノフは勝ち誇った声でそれに応じる。
「ギルトール元帥を殺したのは」
「ギルトール元帥を殺したのは」
「ズバリこのわしだ!」
彼は勝ち誇った顔のまま言い切った。
「元帥がマスドライバーを使用しようとしなかったからだ!だがわしは私利私欲でそれをしたのではない!ギガノスの為にしたのだ!わかったか!」
「ふうん、やっぱりね」
「では覚悟はいいか」
「ああ、あんたがね」
「何っ!?」
「実はね、放送のスイッチを入れていたんだ」
「何だと!?」
「全軍に向けてね。つまりここでのあんたとあたしの会話は全部流れているんだ」
「馬鹿な!そんなことがあってたまるか!」
「本当のことさ。今の話だってね」
「クッ!」
「もうあたしの仕事は終わったね」
ミンはすっと動いた。そしてライフルを蹴り上げて奪い返す。
「さあ、そっちこそ覚悟はいいかい?」
「まだだ!」
またしても逃げ出した。だがミンはそれをあえて追わなかった。
「どっちにしろあいつはもう終わりさ」
不敵な笑みを浮かべてこう述べた。
「後は主役に任せるか」
そして格納庫に帰って行った。この頃ギガノス軍はその様子を一変させていた。
「もう終わりだな」
「ああ」
ギガノスの将兵達は次々と武器を投げ捨てていく。
「馬鹿な話だ、あの様な男の為に戦っていたとは」
「ギルトール元帥ならともかく。あの男の為に戦うことはない」
そう言いながら武器を捨てていく。
「ドルチェノフは最早我々の指揮官ではない」
「投降するぞ、こんな馬鹿馬鹿しい戦いはもう終わりだ」
「了解」
ギガノスの将兵達は戦いを止め投降する。こうしてギガノスは終わった。
だが戦いはまだ終わってはいなかった。只一人諦めようとしない男がいたからだ。
「ええい、誰かおらんのか!」
ドルチェノフは要塞の中を見回しながら喚いていた。
「敵が迫って来ているのだぞ!謀反人が来ているのだぞ!」
だがどれだけ喚いても返事はなかった。基地の中は静まり返っていた。
「早く始末しろ!プラート大尉を倒せ!SP隊、行け、行くのだ!」
それでも返事はなかった。いい加減彼も痺れを切らした。
「ヌウウ、どいつもこいつも舐めくさりおって!」
これは完全な逆恨みであった。
「ならばよい!わしがこの手で!」
さっきの場所とは別の格納庫に向かう。そしてそこから巨大なメタルアーマーに乗って姿を現わしたのであった。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
彼はあのギルガザムネに乗って出撃してきた。
「奸賊共!何時までもエース面はさせんぞ!」
基地の中に出る。丁度その前にプラクティーズ達のマシンがいた。
「ドルチェノフか!」
「そうだ!」
彼等に答える。
「小童共、覚悟はよいか!」
「覚悟するのは貴様だ!」
「ギルトール元帥の仇、覚悟!」
三機は連携しながらギルガザムネにかかる。だがこの三人でもこの巨大な怪物の相手にはならなかった。
「無駄なことを!」
三人をその巨大な刀で蹴散らす。忽ちのうちに三機の青いマシンが宙に舞った。
「クッ!」
「何という強さだ!」
さしもの三人も声をあげる。
「覚悟はよいか!」
「待て!」
だがここで三人の後ろから声がした。
「ムッ!?」
「ドルチェノフ、遂に姿を現わしたな」
「その声は」
「そうだ、私だ」
ファルゲン=マッフがゆっくりと姿を現わした。
「遂にこの時が来た。ギルトール閣下の御無念を晴らす日が」
「プラート大尉か・・・・・・」
「大尉殿!」
「御前達は下がれ」
マイヨはまず三人に対して言った。
「ですが」
「この男は私がやる」
マイヨの声はこれまでになく強いものであった。
「そうでなければ」
「・・・・・・わかりました」
「では。御武運を」
「うむ」
プラクティーズの面々は下がった。そしてマイヨはドルチェノフと正対した。
「遂にこの時が来たな、ドルチェノフよ」
「プラート、貴様・・・・・・!」
「最早貴様は終わりだ。貴様につく者はもう一人もいはしない」
「おのれ!」
「そしてギルトール閣下の仇、今ここで取らせてもらおう」
「わしを・・・・・・倒せるとでもいうのか!」
「そうだ」
マイヨは表情を変えずに答えた。
「どの様なメタルアーマーに乗っていようと私は負けはしない」
ファルゲン=マッフからレーザーソードを抜いた。
「参る。覚悟するがいい」
「おのれ、小童があ!」
ドルチェノフもあがく。その巨大な剣でマイヨに切り掛かる。
「ならばわしのこの手で!」
「ぬうっ!」
「始末してくれるわ!覚悟せよ!」
出鱈目にその剣を振り回す。だがそれでも相当な威力と迫力があった。
マイヨは迫力に押されはしない。だがその剣圧には押されていた。
「何という剣圧だ」
「どうした、さっきまでの威勢はどうした!」
ドルチェノフは押されるマイヨを見て叫ぶ。
「所詮は口だけよ!このわしには誰も勝てはせぬ!」
「まだ言うのか!」
「覚悟せよ!ハハハハハハハハハハ!」
だがマイヨはその剣をかわす。それでも攻撃を仕掛けることは出来なかった。劣勢は明らかであった。
「このままだと・・・・・・」
負ける、それが脳裏によぎった。
「だが私は・・・・・・!」
「死ねい!」
唐竹斬りをかわす。後ろに飛び退いたところで声がした。
「よお、お困りみてえだな!」
「その声は・・・・・・!」
マイヨは声がした方を向いた。するとそこにドラグナーがいた。
「ドラグナー・・・・・・。ケーン=ワカバか」
「おう!俺だけじゃねえぜ!」
「どういうことだ!?」
「兄さん!」
「リンダ、御前まで!」
これは予想外であった。マイヨも驚きを隠せない。
「兄さん、ここで死ぬつもりなんでしょう!」
「うっ・・・・・・」
その通りであった。マイヨはここでドルチェノフと刺し違えるつもりだったのだ。そしてギガノスの大義に殉じようと考えていたのだ。
「そんなこと、させないから」
「リンダ・・・・・・」
「そういうことさ。それで助太刀に来たんだよ」
「フッ、ローマで会った時とは変わっているな」
「格好よくなったってか?」
「いい男になったな」
「へへっ、旦那に褒めてもらえるとはね」
「ケーン、そんなこと言ってる場合じゃないわよ」
「おっとと」
ドルチェノフはまだそこにいるのだ。
「やいドルチェノフ!」
「やっと気付いたのね」
リンダが突っ込みを入れる。タップとライトがいないから彼女が突っ込み役になっている。
「今まで散々世話になったな!一発返してやるぜ!」
「ほざくな小僧!」
ドルチェノフは思わぬ助っ人に怒りを爆発させていた。
「こうなっては御前の母親も始末してくれるわ!最初からそのつもりだったしな!」
「やっぱりそうかよ!だが安心しな!」
「何だと!?」
「お袋はもう救出したんだよ!ロンド=ベルの仲間達と一緒にな!」
「クッ!」
「だから思う存分やらせてもらうぜ!覚悟しやがれ!」
「おのれ、おのれえ!」
「ギガノスの旦那!」
ケーンは今度はマイヨに声をかけてきた。76
「あのギルガザムネってマシンは長時間戦えねえ!そこを突くぜ!」
「そこをか」
「もって精々十分だ」
「十分」
「そうさ、それが終わったら一旦普通の操縦に切り替えなくちゃいけねえみてえだ」
グン=ジェムとの戦いでそれを見切っていたのだ。
「そうじゃないと身体がもたねえ」
「身体が」
「そうさ、だからどうしてもそれを切り替えなくちゃいけねえんだ、十分経つとな」
「わかった。では」
「その時になったら動きがガクンと落ちる。そこを突くぜ」
「ふっ、ならば」
マイヨはそれを聞いて言った。
「共同戦線といくか」
「おうよ!リンダ、ちゃんとつかまってな!」
「ええ!」
二人は共にドルチェノフへ向かった。まずはドルチェノフが優勢であった。
「無駄無駄、無駄なことよ!」
彼はギルガザムネの時間は殆ど考えてはいなかった。
「このギルガザムネは無敵よ!」
「そろそろだ、ケーン=ワカバ」
「ああ!」
マイヨとケーンはそれぞれ頷き合う。
「その時が来たら・・・・・・動きを合わせてくれよ」
「何か考えてるな」
「ああ、とびっきりの手をな」
ケーンはニヤリと笑った。そしてそれを仕掛ける気であった。
「覚悟せい!」
ギルガザムネは二人まとめて真っ二つにしようとする。だがここで異変が起こった。
「ヌッ!?」
急にその動きが止まったのだ。そこが狙い目であった。
「今だ!」
「やるのか!」
「ああ、俺の言う通りにしてくれよ」
「フッ、わかった」
マイヨはケーンの言葉に頷いた。
「俺は右、旦那は左だ」
白いマシンと青いマシンが同時に動いた。
「一気に斬り抜けるぜ!」
「よし!」
同時にレーザーソードを突き立てる。
「覚悟ぉぉーーーーーーーーーーーっ!」
「これで終わりだ!」
右からドラグナーの、左からファルゲン=マッフのレーザーソードがドルチェノフのギルガザムネを貫いた。如何にギルガザムネといえど耐えられる攻撃ではなかった。
「ウグググググ・・・・・・」
「よし!」
「終わったか!」
「お、おのれえっ!」
ギルガザムネは爆発し大破した。これで終わりであった。
「行くか、旦那」
「何処へだ!?」
「決まってるじゃねえか、皆のところへだよ」
「皆か」
「どっちにしろギガノスはもうねえんだろ?じゃあロンド=ベルに来てくれよ」
「しかし私は」
ギガノスの人間だった。それがおめおめと、と言うつもりだった。だがケーンの方が先だった。
「旦那の同志も俺達と一緒に戦ってたしよ」
最後の戦いでは確かにそうであった。
「もう俺達は敵同士じゃないんだ。だから」
「兄さんにとってもその方がいいと思うわ」
「リンダ・・・・・・」
「父さんともよく話して。お願い」
「・・・・・・わかった」
マイヨは遂にそれに頷いた。
「では行くか、同志達の下へ」
「おうよ」
「行きましょう、兄さん」
三人は要塞からの脱出にとりかかった。だがこの時一つ見忘れがあった。
「ウグググググ・・・・・・」
ギルガザムネの脱出ポッドは稼動していたのである。ドルチェノフはその中からかろうじて脱出した。
「わしは死なんぞ!」
ドルチェノフはコクピットから這い出てそう呟いた。
「死んでなるものか!わしがいる限りギガノスは不滅!」
そう言いながら扉へ向かう。だがそれは開きはしなかった。
「ヌッ!?」
しかもパイロットスーツの中の酸素もなくなってきていた。周りでは爆発が起こっている。
「酸素が・・・・・・しかもドアが」
もう終わりであった。周りには誰もいない。
「誰かおらぬのか!わしは総統だぞ!」
他の者は全て投降しているのだ。彼はギガノスの最後の一人になっていた。
「み、見える!」
彼は酸素がなくなり、その薄れいく意識の中で幻を見ていた。
「ギガノスの栄光が。統一ギガノスに」
最後に叫ぶ。
「栄光と勝利を!」
そう叫んだ瞬間に要塞は爆発した。そして宇宙の塵となったのであった。
「これで完全に終わりだな」
「ええ」
リンダはケーンの言葉に頷いた。
「ギガノスは終わったぜ」
「ケーンさん、リンダさん」
ドラグナーの通信にルリが入って来た。
「お疲れ様でした」
「ああ」
「投降及び共闘したギガノスの将兵達はそのまま連邦軍に編入されることになりました」
「そうか」
「ドルチェノフ派の将校が何人か軍事法廷にかけられる意外は。御咎めもなしです」
「またそりゃ随分寛大だな」
「ミスマル司令や岡長官の御判断です。三輪長官は大反対でしたが」
「そういやあのおっさんまだ頑張ってるんだったな」
「ギガノスの将兵は全員戦犯として裁判にかけろと仰っていました」
「無茶苦茶言ってるな」
「それは何とか抑えました」
「やれやれだぜ」
「ただ、その交換材料として」
「何かあったのかよ」
「次は小バームにあたることになりました。そしてそれが終わったら次はプラント周辺の警戒です」
「プラント周辺!?」
「うむ、どうやらそこにティターンズの艦隊が向かっているらしいのだ」
グローバルが出て来た。
「ティターンズがかよ」
「ティターンズは今ブルーコスモスを取り込みました。彼等は何処からかコーディネイターの存在を聞きつけその存在を深く憎悪しています」
「つまりティターンズと同じ連中ってことかよ」
「そうなります」
この言葉には一理あった。ティターンズはアースノイド至上主義でありスペースノイドを嫌悪していた。もっともそれは多分に建前であり実際には強化人間を開発し、ジオン共和国と関係が深かった。今では木星の勢力やクロスボーン=バンガードまで取り込んでいるのだから。
「そのブルーコスモスの艦隊が向かっている模様です」
「ったく。連中も地球から追い出されたってのによくやるぜ」
「だがそれを放置するわけにもいくまい」
「ああ。じゃあ今度はバームとそっちだな」
「うむ」
「何でもやってやるぜ。こうなったらよ」
「私もな」
マイヨもそれに応えた。
「共に戦わせてもらおう。一連の戦いについて思うところができた」
「旦那・・・・・・」
「兄さん・・・・・・」
「ギルトール閣下はあの青い地球のことを最後まで想っておられた」
地球の方を見て言う。
「あの美しい地球を。破壊してはいけないと」
少なくとも彼はギレン=ザビではなかった。目的の為には手段を選ばない冷酷な男ではなかったのだ。だからこそマイヨは彼に心酔し、多くの将兵がギルトールについたのだ。
「私はこれからその為に戦おう。それが閣下の大義だと思うから」
「目覚めたってわけだな」
「そういうことになるな」
ケーンの言葉にすっと笑う。
「まさか。貴様に教えられるとは思わなかったがな」
「俺だと不満なのかい?」
「いや、ケーン=ワカバ」
マイヨはここでケーンの名を呼んだ。
「御前は器の大きい男だ。私がそれに気付かなかっただけだ」
「何か褒められると照れるな」
「リンダを任せられるな、安心して」
「おっ」
「もう、兄さんたら」
「そして私の背中も。いいな」
「ああ、任せておけ」
「大尉殿!」
そこにプラクティーズの面々もやって来た。
「御前達」
「我等も御一緒させて下さい!」
「大尉殿と共に!」
「いいのだな、それで」
マイヨはそれを拒むことはしなかった。拒もうとも彼等は来るとわかっていたからだ。
「はい!」
「どの様な戦いになろうとも我等三人!」
「大尉殿と共に!」
「わかった、ではこれからも頼むな!」
「はい!」
「後ろはお任せ下さい!」
「おいおい、それは今俺が任せられたばかりだってのに」
「じゃあおめえはリンダちゃんを守りな」
「そうそう、ナイトとしてね」
「タップ、ライト」
二人はナデシコのモニターから彼に声をかけてきていた。
「ケーンさん、お母様は無事ナデシコに辿り着かれました」
「そうか」
ルリのその言葉に頬をほころばせる。
「ハッピーエンドってやつだな」
「戦いはまだまだ続くけれどな」
「まあそれもどんどんハッピーエンドにしていくさ」
「よし」
「じゃあ次いってみよう」
ギガノスとの戦いは大団円で終わった。ケーンもリンダもマイヨも満足のいく形でその戦いを終えたのであった。
「ハハハ!そうだよ、そう!」
ナデシコの格納庫でゴルディマーグが上機嫌で話をしていた。
「あんた、話がわかるじゃねえか!」
「全くだよ、こっちだってそれが嬉しいよ」
見ればミンと話をしていた。彼女もちゃっかりとロンド=ベルに加わっていたのであった。
「ロンド=ベルつったら何か堅苦しいイメージがあったんだけどね」
「そんなことはナッシング!至ってノリのいいポジティブな面々ばかりだぜ!」
ハッターもいた。ミンは彼等と見事に打ち解けていたのである。
「酒もあるし美女もいる!」
「えっ、酒!?」
「それは聞き捨てならないね」
そこへベッキーとシモーヌもやって来た。
「酒とくればねえ」
「あたし達がいないと」
「ちょっと待った」
ミンはここで気付いた。
「ええと、あんた」
「ハッター軍曹と呼んでくれ」
「嘘嘘、ハッちゃんでいいから」
「こらフェイ!」
茶々を入れてきた。フェイに噛み付く。
「ハッちゃんと呼ぶのは止めろと何回も言っているだろう!」
「だってハッターなんて名前愛嬌がないんだもん」
フェイも慣れたものでしれっとしている。
「だからハッちゃん。可愛いでしょ」
「ヌウーーーーーーーーッ!俺はアーム=ド=ザ=ハッター軍曹だ!いい加減に覚えるのだ!」
「長いからやだ!」
「何という口の減らない女だ!いつもいつも!」
「・・・・・・いつもこんなのかい?」
ミンは隣に来たシモーヌに尋ねた。
「ああ、そうだけど」
「騒がしいね、どうも」
「まっ、そのうち慣れるから」
「グン=ジェム隊も似たようなもんだって聞いてるけど?」
「まあね」
ベッキーの言葉に頷く。
「確かに。あそこも騒がしかったね」
「けど悪い気はしないだろ?」
「ああ」
その言葉に頷く。
「あの時とは面子が違うけどね。上手くやれそうだよ」
「あのハンサムな大尉さんともかい?」
「な、何言ってんだよ」
シモーヌのからかい半分の言葉に顔を赤くさせる。
「あたしは別にね」
「けどあの大尉さんは渋いねえ」
「あんなのが側にいたら。惚れるのも無理はないよ」
「・・・・・・まあね」
結局ミンもそれを認めた。
「あれだけ一途だとね。思わず」
「けど大尉の方はそれには気付いてないみたいだね」
「じゃあ気付かせてやるよ」
ミンはそう言ってニヤリと笑った。
「絶対にね」
「そうかい」
「じゃあ応援するよ」
「ああ、頼むよ」
「ところでよ」
ゴルディマーグがその巨大な指でミンの肩を突いてきた。
「何だい?」
「さっき俺達に何か言いたそうだったけどよ」
「ああ、酒のことでね」
「酒か」
「あんた達ロボットなんだろ?」
「ああ」
「それで酒は大丈夫なのかい?」
「まあ雰囲気だけ楽しんでるぜ」
「そうなのかい」
「だからそっちは気にしないでくれよ」
「ああ、わかったよ」
「うちの隊長は飯とか食うこともできるけどな」
「へえ」
「牛丼が好きなんだよ」
「面白いね、牛丼なんて」
「他にも牛丼好きなのは多いよ、うちは」
シモーヌが言った。
「フォッカー少佐にサンシローに洸に竜馬にね」
「何か多いね」
「それに一矢に。あれっ」
ここでベッキーもシモーヌも気付いた。
「皆声が似てるね」
「凱以外はね」
「声が似てると好きな食い物も似るのかね」
「そういやあんたの声はフォウそっくりだね」
「あの青緑の髪の娘かい?」
「似てるねえ、本当に」
「一度直接話してみたらどうだい?」
「面白そうだね、じゃあそうさせてもらうか」
「ああ、そうしなよ」
「こりゃまた見物だね」
そう話す横ではハッターとフェイは言い争っていた。ミンはそうしたロンド=ベルの雰囲気に早くも馴染んでいたのであった。
ギガノス軍は一部がロンド=ベルに加わりその大多数は連邦軍に編入されることとなった。月の基地も接収され、そこに連邦軍が入ることになった。
「これでまた一つだな」
「はい」
ブライトはラー=カイラムのモニターでヘンケンと話をしていた。
「月も我々の手に還った」
「ですね。これは非常に大きいです」
「もっとも戦力はあまり置けないがな。まだティターンズにネオ=ジオンがいる」
「はい」
「彼等もまた動くだろうし。月には防衛の戦力しか置けそうにもない」
「仕方ありませんね」
「それに君達はすぐに次の戦いに向かうのだろう?」
「ええ」
ブライトはそれに応えた。
「今度は小バームです」
「そうか、今度は彼等か」
「思えば彼等との戦いは不可解なはじまりですが」
「なあブライト大佐」
ヘンケンは彼にあらためて声をかけてきた。
「何か?」
「実際のところどう思う?本当に竜崎博士がリオン大元帥を毒殺したと思うか?」
「まさか」
ブライトはそれをすぐに否定した。
「会見の場でその様なことをする者はいません。ましてや竜崎博士はその様な方でもありませんでした」
「そうだな」
一矢の父である竜崎博士は落ち着いた理性的な人物だと知られていたのである。
「有り得ないです、普通では」
「そうだな。それにバームの戦士達も皆高潔だった」
「はい」
アイザムにしろハレックにしろ。彼等は立派な戦士であったことは彼等もわかっていた。
「あの敵の指揮官リヒテル提督にしろ。卑劣なところはない」
「彼等は。決して邪悪ではありません」
「そうだな。では一体何故こういうことになったのか」
「そこにも謎がありそうですね」
「だな」
「ただ、これだけは言えます」
「何がだ?」
「我々の中にも高潔な者がいれば卑しい者がいるように」
「彼等の中にもいるかも知れないか」
「彼等の考えは我々のそれと非常に似ておりますし」
何度も戦ったからこそわかることであった。
「若しかすると。双方の中にいる何者かがこの戦いを企てたのでないでしょうか」
「何者かが、か」
「我々が戦い、得をする者が」
「人類、若しくはバームにいる」
「その者を倒せばこの戦争も終わるでしょう」
「わかった、ではそちらもあたってくれ」
「はい」
ブライトは頷いた。
「では今よりバームとの戦いに向かいます」
「この戦争、双方にとってあまり利はないが」
「だからこそ終わらせるべきです」
その言葉が全てを物語っていた。無益な戦争を終わらせる為の最後の戦い、それが今ロンド=ベルが向かう戦いなのであった。
「では検討を祈る」
「ハッ」
最後に敬礼で別れた。ロンド=ベルは地球圏にある小バームへ向かっていた。そこに全ての決着があった。

第百話完

2006・6・17  
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