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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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番外編 蜂蜜を愛するお嬢様と黄巾の乱

 
前書き
袁術編です。 

 
南陽郡に入った妾がまず目にしたのは荒廃した田畑、民は生気を感じさせない目をしている有様だったのじゃ。

渚は南陽郡は本来、豊かな郡だと言っておったが、豊かな郡の民が何故、こんなに酷い状態なのだと憤ったのじゃ。

渚の話では汚職官吏が民から苛烈な搾取を行っているからと言っておったのじゃ。

この妾がこの地の大守になった以上、そんな真似を見過ごすことできぬのじゃ。

渚、榮奈、明命、亜莎、そして南陽郡に向かう道中に士官した紀霊、文聘、諸葛玄に汚職官吏のことを調べさせたのじゃ。

榮奈は本来3人を見つけたら、兄様の元に帰る予定じゃったのじゃが、南陽郡の酷さに心を痛め、汚職官吏を排除するまでいてくれることになったのじゃ。

新しく加わった紀霊、文聘、諸葛玄の真名は菜々、涼、鉄心じゃ。

菜々は長い髪が印象的な女性、涼は勝ち気な感じの女性、鉄心は真面目なおっさんなのじゃ。

皆の助けも会って、やっと大物を捕まえたのじゃ。

しかし、袁江とはのう・・・・・・。

同じ袁家の一族でありながら、汚職に関与するとは死罪じゃな。

力を持った悪党は殺さねば、欲を捨てることは出来ぬ。

生かしておけば、いずれ、また牙を向くに決まっておるのじゃ。

「は、放さぬか! この儂が誰か知っておるのか!」

ブクブクと太った男を涼が縄で縛って連れてきたのじゃ。

袁江は何とも悪人面した男じゃな。

「袁公路様、これはいかなる存念だ!」

袁江は私に不満げに抗議してきたのじゃ。

「涼、縄を解いてやるのじゃ。さて、お前は南陽の民から本来の税率に上乗せした税を徴収し、その差分を貴様の懐に入れるそうではないか! それは、本来国庫に入るべきものではないのか?」

妾は袁江に問いただしたのじゃ。

「それは何のことでございます。この袁江、そのようなことは全く預かり知りません」

袁江は白々しく知らぬと言ったのじゃ。

「明命! あれを袁江に見せてやるのじゃ」

「畏まりました」

明命は袁江の前に進みでると裏帳簿である竹巻の束を袁江の前に置いたのじゃ。

「袁江、それを見てみるのじゃ。なかなか面白いことが書いておるぞ」

妾は袁江を小馬鹿にするように言ったのじゃ。

「それでは拝見させていただきます。こ、これは・・・・・・」

袁江は冷や汗を流して、竹巻を握ったまま黙っていたのじゃ。

「それを見て沈黙したということはそちの汚職の罪を肯定したと取ってよいな」

「こんなもの知らぬ。袁公路様、濡れ衣を着せこの儂を貶めようとは、あまりに酷過ぎますぞ。あなたの父上に抗議せねばなりません。今、謝罪されれば、許してさしあげましょう」

袁江は不快を覚える表情で私を見て、父上様に言いつけると言ったのじゃ。

この者は妾が幼いと思って舐めておるのか。

「罪を認めぬとは、お前はこの私を何と思っておるのじゃ。この南陽郡の大守じゃぞ」

「はい、存じております。この南陽郡にはここのやり方がございます。それを曲げようとすれば、袁公路様の御身が気がかりでございます。昨今は賊が増えておりますのでお気をつけください」

袁江は開き直って、妾を脅迫してきおったのじゃ!

もう・・・・・・、許せぬ!

こんな下衆が妾の一族にいるとは!

「汝南袁家の者なれば恥を知れ! 民は国の柱じゃ。それを虐げるとは天に唾を吐くも同罪、その行為は漢室に弓引くも同然じゃ。涼、この者とその家族を斬首にするのじゃ!」

妾は頭に血が上って、袁江を罵倒したのじゃ。

「そんなことしてどうなるか分かっておるのか? 他の豪族は黙っておらんぞ!」

袁江は妾を嘲笑するように言ったのじゃ。

「望むところじゃ! 民を苦しめる者は賊と同じじゃ。賊を狩るのに理由など要らぬわ! 妾の前に立ちふさがる賊は何人とて生かしてはおかぬ。涼、直ぐに袁江の家族を全て捕らえてまいれ。明朝、民の前で処刑を執行するのじゃ」

妾は袁江を睨み言い放ったのじゃ。

「な、ちょっと待ってくれ、儂は袁公路様と同じ袁一族ではないか・・・・・・。話し合おう。い、命ばかりは勘弁してくだされ! 汚職をしている者は儂だけじゃない。は、話す。汚職をしている者達の名を明かすから、見逃してくだされ!」

袁江は妾の態度が脅しでないと感じとり、血の気の引いた表情で必死に助命を願いでてきたのじゃ。

「お前は他にも汚職をしている者を知っておるのか?」

「知っている。知っている。儂は袁家の人間だぞ。この南陽で汚職している者なら全て知っておる」

袁江は私の態度に命が助かるかもしれないと淡い期待を感じたのか、必死な形相で応えたのじゃ。

「ふむ・・・・・・、ならばお前の知っている者達の名を全て挙げよ。助命の話、考えてやらなくもない」

妾は助命する気などなかったが、袁江から情報を引き出すために言ったのじゃ。

「話します。この袁江は袁公路様に忠義を尽くします」

袁江は恭しく頭を垂れたのじゃ。

「鉄心、袁江に筆と竹巻を用意してやれ。袁江、お主はそこに汚職を行いないせし者の名を書くのじゃ」

妾は横に控えていた鉄心に命じ、袁江に汚職官吏の名を書かせたのじゃ。

「はっ! 直ぐに用意いたします」

鉄心はそそくさと袁江の前に筆と竹巻を用意したのじゃ。

「袁公路様、こ、これを書けば見逃してくださるのか?」

袁江は筆を取る前に、不安気な表情で尋ねたのじゃ。

「書きたくないのなら、別に構わぬぞ。妾はお主に強要はせぬ。妾の気が変わらぬ内に書いた方がいいと思うがの。妾はお前が死のうが一行に構わぬ」

妾は気にも止めずに玉座に座ると、袁江は慌てて竹巻に汚職者の名前を書き始めたのじゃ。

袁江が書き上げた汚職者の数はざっと200名にも上ったのじゃ。

こんなにも南陽にはゴミが巣食っておったとは、道理で風通しが悪いはずじゃな。

「あの・・・・・・、袁公路様、お約束通り見逃しください」

袁江は最初とは違って卑屈な態度で話かけてきたのじゃ。

「助命を考えてやる話じゃったな」

「はい!」

袁江は期待に膨らませた表情で妾の顔を見ていたのじゃ。

「そちには褒美に死をくれてやるのじゃ。汚職をせし袁家の者を家族皆殺しにすれば、良い見せしめとなるはずじゃ。貴様を処刑した後、お前が密告した汚職官吏に不正に貯めた財を吐き出せば、死罪を免じてやると伝えるつもりじゃ。無論、逆らう者もおろうが、その者達は皆殺しにして、全ての財を没収するのじゃ。豪族とはいえ、大守に弓引くは朝廷に歯向かうことと同義じゃ。当然、その者達は逆賊、生かしてはおけぬ。生きて不正な財を差し出すか、死んで全てを失うか。賢いものなら、どちらを選ぶべきかわかるであろう」

妾は袁江を侮蔑に満ちた表情で睨んだのじゃ。

「わ、儂を騙したのか――――――!」

袁江は怒りの形相で妾を睨んだのじゃ。

「騙してなどおらぬ。妾は助命を考えてやるといっただけじゃ。熟考して、お主を生かしてはおけぬと結論が出たのじゃ。それに、お主は袁家の名を汚した愚か者じゃ。死してご先祖様に詫びるがよい。涼、この者を連れて行くのじゃ!」

「はっ! 畏まりました。この者を牢屋に入れておけ」






翌日、袁江とその家族を城の前で斬首に処したのじゃ。

これに豪族達の一部が反発したが、榮奈と渚が大守配下の軍3000を率いて、逆賊として皆殺しにしたのじゃ。

妾の容赦ない行動に対し、豪族は表向き反抗を止め汚職で貯めた財貨を差し出したのじゃ。

汚職を働いた官吏や豪族から取り上げた財貨は一度国庫に入れ、後ほど飢えに苦しむ民の食料を買うために使用したのじゃ。

これで民の飢えを当面は救うことができると思うのじゃ。

政とはほんに大変なのじゃ。
 
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