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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第八十二話 猛攻!毒蛇部隊

                  第八十二話 猛攻!毒蛇部隊
ロンド=ベルが東北部でバルマー軍と戦っていた頃モンゴルの大平原に異様な一団がいた。
「いい眺めだねえ」
ミンは何処までも続く大平原を見て満足そうに言った。
「緑ばかりで。他には何もないよ」
「わし等の戦場にはこうした場所も相応しいな」
その後ろからグン=ジェムが声をかけてきた。
「そうは思わないか」
「特に相手が相手だからな」
グン=ジェムの横にいるガナンが釘を舐めながら言った。
「ロ、ロンド=ベル」
ゴルもいた。
「そろそろ来るそうだよ。それも新入りまで入ってね」
「それは本当か、ジン」
「こんなことで嘘を言っても何にもならないさ。七隻の戦艦でこっちに向かっているってね」
「ほう、それは楽しみだ」
それを聞いたグン=ジェムの顔がほころぶ。
「それではこちらも歓迎の用意をするか。いいな」
「おうよ、補給はもうバッチリすんでるぜ」
ガナンがそれに応えた。
「何時でも戦闘に入れるってもんだ」
「こ、今度こそロンド=ベルの奴等倒す」
「マシンはそれでいいな。では次はわし等だ」
「そういや昼飯の時間だったね」
「今日は羊を丸ごと潰したからな。派手に食うぞ」
「おっ、いいねえ」
「ひ、羊が食える」
「それじゃあまずは基地に戻るぞ。そして腹ごしらえだ」
「おう!」
彼等はジープで基地に戻った。そしてテントの中ですぐに食事に入った。
見ればテーブルの上に肉が山の様に積まれている。そこには骨付きの肉や骨のない切られた肉まである。それは様々であったが羊の肉を煮たものであることに変わりはなかった。
「じゃあ食うぞ」
「おうよ」
四人はグン=ジェムの言葉を合図に食事をはじめた。肉の他にはワインにパイ、それに果物等が置かれている。彼等はそれをまるでバキュームの様に口の中に放り込んでいた。
「で、ロンド=ベルだが」
「何かあるのかい?」
ジンがグン=ジェムの言葉に顔を向ける。
「その新入りってのはどういう連中なのだ?」
「ガオガイガーとかだね」
「あの勇者とかいう連中だな」
ガナンがそれに応える。
「そうだ。前にゾンダーとかとやり合ってた連中さ」
「確か意識を持つロボットがいたね」
「そうさ、かなり手強いってね」
ジンはミンの言葉にこう返した。
「後マクロスとファイアーボンバーだね」
「ああ、あのロックバンドか」
「大佐、知ってるのかい?」
「ロ、ロックバンド」
「知ってるも何も有名なバンドだからな。わしの耳にも入っとる」
グン=ジェムはミンにこう述べた。
「しかし何でバンドが戦場なんかに」
「戦争を止めさせたいそうだね」
ジンはこう言った。
「それでバルキリーに乗って歌ってるそうだ」
「へえ、何だか知らないけれど酔狂な連中だね」
ミンは呆れたのか感心したかの様な言葉を口にした。
「戦場で歌うなんてね。リン=ミンメイじゃあるまいし」
「ミンメイちゃんか」
ガナンはミンメイの名を聞いてニヤリと笑った。
「いいねえ、ああした感じの美少女は。歌もよかったし」
「何だい、あんたミンメイのファンだったんだ」
「嫌いじゃねえな。CDも持ってるしな」
「おやおや」
「お、おではミレーヌちゃんがいい」
「俺はシャロン=アップルの方がいいな」
ジンの好みは二人とはまた違っていた。ナイフとフォークで上品に食べながら言う。
「あのメタリックな感じがな」
「御前はどうなんだ、ミン」
男達の好みがわかったところでグン=ジェムはミンに尋ねてきた。
「誰がいいんだ?」
「あたしはバサラだね」
ミンは笑ってこう言った。
「あのワイルドな感じがね。いいよ」
「わしはビヒーダだな」
「おっ、大佐はそれかい」
「わしは大柄な女が好きでな」
彼は大きく笑いながら言う。
「メルトランディだろうが何だろうが。いい女はいいものよ」
「言うねえ」
「じゃあ今度の戦いは美女の品定めも兼ねて」
「は、派手にやる」
「じゃあ飯を食ったらすぐに行くぞ」
「了解」
四人はグン=ジェムの言葉に応えた。
「派手に行くぜ」
「そしてどいつもこいつもぶっ潰してやる」
彼等の戦意は半ば自然にあがっていた。そして戦いに向かう決意を固めていた。
グン=ジェム隊の偵察通りロンド=ベルはモンゴルに入っていた。そしてその上空を飛んでいた。
「今のところは何もありませんね」
「はい」
ルリがユリカの問いに答えた。
「レーダーにも反応なしです」
「了解。けれど気をつけて下さい」
だがユリカは油断しないように言った。
「ここにはギガノス軍がいますから」
「グン=ジェム隊ですね」
「そうです」
ハーリーにこう返す。
「彼等の勢力圏に入っているということを忘れないで下さい」
「グン=ジェム隊ですか」
メグミがそれを聞いてふと口に出した。
「何か。変わった敵ですよね」
「ギガノス正規軍とはちょっと感じが違いますね」
それにハーリーが応える。
「どっちかと言うと。世紀末の世界とか地震の後の関東に出て来そうな」
「それは言わない約束ですよ、ハーリー君」
だがそれをルリが窘めた。
「世界が違います」
「あっ、そうでした」
「まあ声が似ている人はいるんだけれどね」
「ハルカさん、それを言っちゃうと」
「冗談よ、冗談」
ハルカは笑ってメグミに言う。
「けれどああした筋肉質の男っていいわよね」
「ハルカさんってそうした人が好きだったんですか」
「男はね。やっぱり筋肉よ」
「へえ」
「そしてギャグも言えると完璧かしら。そんなに青筋立てんでもいいやねん、って感じで」
「そうなのですか。けれど私はやっぱりアキトで」
ユリカは相変わらずアキトしか目に入ってはいない。
「アキトがやっぱり最高ですね」
「はい」
ルリは声には感情はなかったが目の光が少し微妙になった。
「優しいし格好いいし」
「艦長、ここでおのろけは」
「すいません。それで今の状況は」
メグミの言葉にちょっと我に返る。
「やっぱりレーダーに反応はなしです。いえ」
「何かありましたか?」
「ジャミングを受けています。レーダー波が異常に荒れています」
「レーダー波が」
「危険ですね」
それを聞いてルリが言った。
「今来られると」
「報告だ」
「あら、早速」
モニターにヒイロ達ウィングのメンバーが出て来た。
「敵影だ」
「数は?」
「三百ってとこかな」
「そうですか」
ルリはデュオの報告に応えた。
「数自体があんまり多くないけれどな」
「しかし問題はその質だ」
トロワが言った。
「どうやらグン=ジェム隊らしい」
「ウーヒェイ君、それマジ?」
「マジっていうかここはグン=ジェム隊の勢力圏ですよ」
メグミがハルカに突っ込みを入れる。
「はい、グン=ジェム隊です」
カトルがそれに答えた。
「四天王もいます。間違いありません」
「わかりました。それでは総員出撃」
ユリカはそれを受けて出撃命令を出す。
「迎撃準備にかかって下さい。何処から来てもいいように」
「敵は左から来る」
ここでヒイロが言った。
「左ですね」
「そうだ。俺達も今からそちらに戻る。すぐに準備に取り掛かってくれ」
「わかりました。それでは」
「頼む」
そう言い残してヒイロ達はモニターから姿を消した。そしてロンド=ベルは出撃準備に取り掛かった。
「ったくお約束って言うか何かよ」
ケーンはパイロットスーツを着ながらブツクサと言っている。
「やっぱり来やがったか」
「しかも来るのはあのグン=ジェム隊」
タップはもうヘルメットを着けようとしていた。
「いい加減嫌になってくるよな、ここまでお約束だと」
「けれどわかっていたことじゃないのか?」
ライトがそんな二人に言う。
「お約束ならな」
「これであのギガノスの旦那が復活してくりゃもっとお約束なんだけれどな」
「おいおいケーン、それだと御前にとってまずいことになるぜ」
「何でだよ」
「主役の座取られちまうぞ?いいのかよ」
「そりゃまずいな」
「じゃああの旦那の復活はなしってことだな」
「さもないと俺達までまずくなるからな」
「っていうか俺達も結構頑張ってるのにな。何かあの旦那は目立つんだよな」
「キャラクターの違いじゃないのか?」
ショウが三人に言う。
「マイヨ=プラート大尉だったな」
「ああ」
「あそこまで生真面目で理想家だとな。どうしても認めたくなる」
「そういうものかね」
「俺はな。少なくともそうだ」
「まああの旦那とは違うな」
「黒騎士かよ」
ケーンはトッドに応えた。
「ああ、そうだ」
「あの旦那も大概だよな」
「きっと今でもヨーロッパのどっかでショウ=ザマがどうとか言ってるぜ」
「あの旦那はまた特別なんだよ」
トッドは三人に対してこう言った。
「腕はたつんだけどな。あんな性格だからな」
「難儀なこって」
「周りが見えない性質なんだよ。そう割り切っときな」
「前はトッドもそうだったよね」
「おい、俺もかよ」
トッドはチャムの言葉に反応した。
「前はかなり粘着だったよ」
「昔のことはよしてくれよ」
「そうだな。昔のことはいい」
ショウもそれには賛成した。
「俺だって消したい過去はあるしな」
「あら、ショウ君ってそんなに過去があったかしら」
それを聞いた誰かが言った。
「マーベルだって。それに君付けは」
「残念ね。私はマーベルじゃないわよ」
だがそこにいたのは未沙だった。
「何で間違えたのかしら」
「その前に何でナデシコに?」
「マクロスじゃなくてな」
「ちょっと用事があって来ていたのよ」
ケーン達に答える。
「戦闘が終わるまで戻れなくなったけれど」
「そういうこってすか」
「何か怖いお人が」
「何か言った?」
「いえ、別に」
未沙に見られただけで三人は言葉を引っ込めた。
「何にも
「ならいいけれど」
「そういえばショウ達もグランガランから離れているよな」
「こっちは打ち合わせがあったんだよ」
「打ち合わせ?」
「ああ、エステバリスチームとな。少し用事があって」
「そうだったのか」
「どうもエステバリスは接近戦が苦手だろ、それにこっちは遠距離戦が苦手だ。それをどうしていくかってな」
「難しい問題だよな」
「御前さん達はその点バランスがとれてるけれどな」
トッドはケーン達を羨むように言葉を返した。
「そこんとこ大事にした方がいいぜ。俺のダンバインとかは接近戦用だからな」
「けどそれがいいんじゃないのか」
「そうか?」
「オーラバトラーは小回りが利くしな。それに格闘戦に強いし」
「ああ」
「モビルスーツとかヘビーメタルを相手の戦いの時には頼りにしてるぜ。特にあのオーラ斬りな」
「あれはある程度のオーラ力がないと駄目だけれどな」
「けれどうちのオーラバトラー乗りは皆やってるからな。それは有り難いよ」
「全くだ。オーラバトラー様々ってやつだな」
「誉めたって何も出ないぞ」
ショウは苦笑いしてケーン達に言う。
「俺達だって何かと大変だしな」
「まあそう言わずに」
「ハンバーガーの一個でも」
「そんなに欲しかったら戦場でやるよ」
トッドが言った。
「フォローしてやるぜ。感謝しな」
「おっ、悪いねえ」
「ここは同じアメリカ人ってことで」
「そんなこと言ったらここにはアメリカ人は一杯いるんだがな。まあいいぜ」
トッドも悪い気はしなかった。
「何かあったら来てやるよ。いいな」
「頼むぜ、トッドさん」
「それじゃあ俺は昼寝でもして」
「何馬鹿なこと言ってるの」
しかしケーンには未沙から雷が来た。
「ワカバ少尉にも働いてもらいます」
「あっ、やっぱり」
「今度そんなこと言ったら始末書よ。しっかりしなさい」
「ちぇっ、ベン軍曹より厳しいや」
「では少尉殿、行かれて下さい」
「その軍曹も来てるし」
「じゃあ行きますか」
こうしてケーン達も出撃した。全員出たところでグン=ジェム隊が戦場に姿を現わした。
「フッフッフ、見事な布陣だな」
グン=ジェムはロンド=ベルを見てまずはこう言った。
「事前に我等の襲撃を予想してか。相変わらず動きが早い」
「けど大佐、そう太平楽を言っていられる場合じゃないよ」
だがここでミンが突っ込みを入れる。
「最近ギガノスも危ないらしいからね」
「月の方だろ?俺達には関係ねえよ」
ガナンが言う。
「俺達は俺達だ。月でお高く止まっている連中とは違うさ」
「補給もこっちでやってるしね」
ジンもそれに同意した。
「いざとなりゃ元の山賊にでも戻ればいいしな」
「ま、また強い奴等から金を奪う」
「よせ。今のわし等は軍人だ」
グン=ジェムは一応はこう言った。
「山賊だったのは昔の話だ。いいな」
「まあそういうことだね」
「今のわし等はギガノス正規軍だ。それは覚えておけ」
「それじゃあギガノスの為にやるか」
「そうだね。それじゃあ大佐」
ジンに続いてミンが言った。
「攻撃命令をかけてくれよ」
「おう、全軍攻撃用意」
グン=ジェムの指示が下る。
「攻撃目標はロンド=ベルだ。派手にやるぞ」
「了解!」
「ヒヒヒ、今度こそぶっ潰してやるぜ」
ガナンが釘を舐めながら呟いた。そしてグン=ジェム隊はロンド=ベルに殺到して来た。
「来た来た来たってところだな」
ライトはそのグン=ジェム隊を見ながら言った。
「これはまだやる気満々なようで」
「また随分軽い調子だな」
それを聞いたアルゴがライトに声をかけてきた。
「それ程悠長な相手ではないが」
「何、緊張しまくっていてもかえって悪いし」
「ここはある程度リラックスしねえとな」
「タップはいつもリラックスし過ぎだけれどな」
「ケーンにだけは言われたくはねえよ」
「おやおや」
「何か獣じみた動きで来るぞ」
ライトがマギーを見ながら報告する。
「タップ、射撃用意だ」
「了解」
それに従いドラグナー2が動く。
「砲撃戦用意」
ブライト達も命令を出す。
「一斉発射を仕掛ける。いいな」
「了解。それじゃあ」
それに従い照準が合わせられる。
「てーーーーーーーーっ!」
ブライトの号令と共に攻撃が繰り出される。だがそれに対してグン=ジェム隊は素早く左右に散った。
「この程度はこっちも予測済みなんだよ」
ガナンはスタークガンドーラを左右に動かしながら不敵に笑っていた。その周りではロンド=ベルの攻撃が雨の様に降り注いでいるが彼は無事であった。
「定番ってやつだからな」
「け、けど損害出てる」
「この程度で怖気づくわけじゃねえだよ?おい」
今度はゴルに対して言った。
「それどころか燃えてくるだろ」
「も、燃える」
「そうさ。やっぱり戦場は派手じゃなくちゃな」
「それじゃあフォロー頼むよ」
ミンのスタークダインが前に出る。
「波状攻撃と洒落こみたいからね」
「妨害は任せておけ」
ジンが他の三人に伝えた。
「丁度いい頃合いになってきたしな」
「頼むよ、今度も」
「ああ」
「正念場ってやつだからね」
「お、おでも行く」
ゴルのスタークゲバイも出て来た。
「大佐にいいところ見せる」
「ほう、ゴルも成長したな」
後方にはゲイザムがいた。それに乗るのはグン=ジェムである。
「大したことを言ってくれる。ではここは任せるとするか」
彼は余裕の顔で戦局を見ていた。部隊は損害を出しながらもロンド=ベルに接近していた。
「おいおい、随分勇敢に来てくれんじゃねえの!」
ケーンがそんなグン=ジェム隊を見て叫ぶ。
「こうなったらやってやらあ!行くぜ!」
「待てってケーン」
だがそんな彼をライトが制止した。
「何だよ」
「ここは落ち着くんだ。戦いはまだはじまったばかりだからな」
「落ち着くって言ってもよ」
「短気は損気って言うじゃねえか。ここはライトの言う通りにした方がいいぜ」
「タップまで」
「そういうこと。まあ御前さんの出番は敵がもっと近寄って来てからだな」
「わかったよ。じゃあそうさせてもらうか」
ケーンはここはライトの言葉に従うことにした。そして突撃は控えた。
「全軍引き付けろ」
ブライトもライトと同じ様な指示を下す。
「そして射程を合わせて一気に叩くぞ」
「了解」
「それじゃあそれで」
皆それに頷く。そして間合いを合わせる。
「もうすぐだ」
ブライトは敵軍を見据えながら言う。
「充分に引き付けて。そして」
間合いに入ったと見た。その瞬間だった。
「てーーーーーーーーーーっ!」
ブライトの号令が下る。それと共にロンド=ベルの一斉攻撃が加えられた。これによりグン=ジェム隊はその動きを止めた。
「チッ、やっぱり一筋縄じゃいかないみたいだね」
「けどそれではいそうですかってわけにはいかないな」
ミンとガナンはその一斉攻撃を前にしても落ち着いた顔であった。
「じゃああたしが斬り込むよ」
「おう、じゃあ俺が援護してやるぜ」
「俺もだ」
ジンもフォローに回ることになった。
「お、おでは突っ込む」
「ああ、あんたもいないとね」
ミンはゴルが出て来たのをみて笑みを作った。
「役者が揃わないんだよ」
「役者っておいおい」
キリーがそれを聞いて苦笑いを浮かべる。
「まるでアニメじゃないんだから」
「まああたし達も役者なんだけれどね」
「こっちは二枚目だけれどな」
真吾がそれに続く。ゴーショーグンの面々は相変わらずであった。
「フン、二枚目だからどうだっていうんだい?」
ミンは真吾にこう返す。
「現実はそうは甘くはないよ」
「いつも二枚目が勝つとは限らないんだよ」
「またえらくベタな台詞だな、おい」
ジュドーがそれを聞いて言う。
「そんな世紀末な格好で言っても説得力ないぜ」
「全くだ」
隼人がそれに同意して頷く。
「そう思うだろ、リョウ」
「そうだな。ああした格好の奴等は最後には負けるのが運命だ」
「御前が言うと説得力あるな」
「グン=ジェム隊、一つ言っておく」
乗ってきたのか竜馬はさらに言った。
「御前達はもう、死んでいる」
「まだ足はあるよ」
「そ、それがどうした」
「負けは決まっているという意味だ。俺達は負けはしない」
「今一瞬だけれど声の色変わらなかった?」
「変わったよな」
プルとプルツーが囁き合っていた。
「何か。急に低くなって」
「リョウさんもあんな声が出せるとはな」
「言いたいことはそれだけか」
「あっ、また」
どうやら竜馬は低く落ち着いた声も出せるようである。
「では通らせてもらおう」
「ゲッターが相手なんて光栄だね」
「それじゃあこっちも手加減なしで行くか」
ジンも出て来た。
「出来れば俺は司馬亮と戦いたかったが」
「生憎俺はお断りだ」
亮がそれに答える。
「どういう理屈か知らないが」
「南斗の因縁だ」
「南斗の?」
「そうだ。だがまあいい」
彼はそれ以上これにはこだわろうとしなかった」
「そんなことを言ったら収納がつかなくなるからな」
「とにかくダンクーガの相手になるんだな」
「それだったらこっちも容赦しないよ」
「ここにも六将の一人がいるとはな」
ジンは沙羅の声を言って呟いた。
「面白いことだよ」
「あたしの声のことなんてどうでもいいんだよ」
「そうだ、そんなこと言ったら俺だって大変なことになるんだぞ」
「式部、それは言うな」
そんな雅人をアランが窘めた。
「俺もだからな」
「おっと、そうか」
「とにかく相手になるつもりならやってやる」
真ゲッターはミンのスタークダインに向かった。
「俺達は先に進まないといけないからな」
「そういうことはあたし達を倒してから言うんだね」
スタークダインはチェーンソーを出してきた。
「この電気ノコギリを避けられたらね」
「リョウ、気をつけろよ」
「わかってる」
弁慶の言葉に応える。
「あの女から。尋常じゃない殺気を感じる」
「当然だろ、ここで始末してやるつもりなんだから」
ミンは酷薄な笑みを浮かべて言う。
「覚悟おし。一思いにやってやるよ」
「俺達だってそう簡単にやられるわけにはいかない」
ゲッターが動きはじめた。
「このゲッターの動き。ついて来れるか」
「その程度だったらね」
スタークダインも姿を消した。
「簡単だね」
「なら」
竜馬はスタークダインが前に出て来たのを見てゲッタートマホークを取り出した。
「これでどうだっ!」
「何のっ!」
ミンは振り下ろされた巨大な斧を受け止めた。マシンとしての体格はかなりあったがそれでも受けたのであった。
「甘いねっ!」
「くっ!」
「リョウ、こいつは思った以上にやるぞ!」
「俺に変われ!」
隼人が言った。
「陸上での戦いに持ち込むんだ!」
「わかった。オーーープンゲェェェェェーーーーーーーーット!」
「チェンジゲッター2、スイッチオン!」
ゲッターが変形した。そして瞬く間に青い禍々しい姿となった。
「それがゲッターの別の姿かい」
「そうだ。来い、グン=ジェム隊の女!」
隼人はまた叫んだ。
「俺が相手になってやる」
「望むところだよ。行くよ」
「フン!」
右腕のドリルでチェーンソーを受け止めた。
「やるね!」
「その程度ならな!」
隼人も負けてはいなかった。ゲッターチームはミンと激しい戦いに入っていた。
ゴルはブラックゲッターが相手をしている。ブラックゲッターの素早い、獣の様な動きにも動じるところはなかった。
「クッ、こいつ」
武蔵はゴルのスタークゲバイを見ながら呟く。
「思ったより硬いな」
「ゲ、ゲッターになんか負けない」
ゴルはどもりながら言う。
「グン=ジェム隊の力見せてやる」
そしてゴルも攻撃を放って来た。ブラックゲッターは影となりそれをかわす。
「HAHAHA、下手糞ね!」
「兄さんが動かしてるんじゃないでしょ」
メリーが突っ込みを入れるがそんなことを意に介するジャックではなかった。全く平気であった。
「ここは接近するか」
「おっと、そうはいかないぜ」
スタークゲバイの後ろから声がした。
「何だって!?」
「俺がいるからな」
そこにはガナンのスタークガンドーラがいた。そしてブラックゲッターに向けて攻撃を放つ。
「うわっ!」
「チッ、かわしやがったか」154
紙一重でかわしたブラックゲッターを見て舌打ちする。
「上手いことやりやがって」
「武蔵、御前はそのままスタークゲバイをやるんだ」
「サンシロー」
サンシローとガイキングが武蔵のブラックゲッターの側にやって来た。
「俺があの釘野郎の相手をする。いいな」
「ああ、頼むぜ」
「こういった時はお互い様だ。行くぞ」
スタークガンドーラを見据えて言う。
「御前の相手はこの俺だあ!」
「ヘッ、今度は恐竜かよ」
ガナンは突進して来るガイキングを見て釘を一旦吐き出した。
「恐竜のステーキと洒落こもうかい!」
「やれるものならやってみろ!」
そう言いながら拳を飛ばす。
「恐竜のステーキは高いぜ!」
「高くても何でも食えればいいのさ」
ガナンはその拳をかわして返す。
「どうせ金はツケなんだからな」
「それじゃあ今度ばかりは払わせてやるぞ!」
「出来るものならな!」
サンシローとガナンも戦いに入った。その横ではダンクーガとジンのスタークダウツェンが剣を交えていた。
「やっぱり御前達が相手かよ!」
「そっちが望んだことだろ!」
「今更何を言っている」
沙羅と亮がジンに言葉を返す。
「こうなったら真っ二つにしてやるよ!」
「それはこっちの台詞だぜ!」
忍がそう言うとダンクーガは剣を抜いた。
「断・空・剣!」
「忍、一気にやろうぜ!」
「おう、雅人!」
ダンクーガはその巨大な剣を横薙ぎにする。しかしそれはジンが後ろに跳んでかわしてしまった。
「その程度じゃ俺には当たりはしないよ!」
「チッ!」
「どうやら口だけのことはあるみたいだね!」
「当たり前だ!俺はグン=ジェム隊四天王だ!」
ジンは言い切る。
「この程度でくたばるタマじゃないんだよ!」
「じゃあもっと激しい攻撃を見せてやるよ!」
沙羅は叫ぶ。
「それ見て地獄へ落ちるんだね!」
「気の強い女だな」
「当たり前さ!伊達に獣戦機隊にいるんじゃないんだよ!」
沙羅の気がさらに上がる。
「その喉笛、何時までも満足にあると思わないことだね!」
「それはこちらの台詞だ!」
「じゃあ見せてみなよ!」
それでも沙羅は怯まない。
「ここでね!死ぬ前にね!」
「死ぬのはそっちだよ!」
彼等も一騎打ちに入っていた。四天王はそれぞれロンド=ベルの猛者達と激しい戦いに入っていた。
「また皆派手にやってるな」
その中ケーン達ドラグナーチームは乱戦の中に身を置いていた。
「俺達もここは派手にやろうぜ」
「おうよ」
タップがそれに応える。
「ドッカーーーンと派手にやろうぜ」
「よしきた、それじゃあ」
その前にはグン=ジェムのゲイザムがいた。
「あれをやるか」
「やるのか?」
「ああ、今度こそな」
ケーンの目が何時になく強く光る。
「この前の借り、返させてもらうぜ」
「ほう、誰かと思えば」
グン=ジェムの方もケーン達に気付いた。
「あの時の小童共か。元気だったようだな」
「ヘン、俺達がそう簡単にくたばるかよ!」
「生憎足はあるぜ!」
「そういうこと。まあ誉めてもらって悪い気はしないけど」
「わしが敵を誉めるのは限られた場合でな」
グン=ジェムは三人に対して言った。
「敵が死ぬ前だ。その言葉の意味がわかるか」
「さて」
「何のことやら」
しかしここはいつもの調子でとぼけてきた。
「貴様等はここで死ぬということだ」
「そんなに言うのならやってもらいたいね」
「そうそう、不死身のドラグナーチームがどうやって死ぬのかね」
「おいちょっと待ちやがれ」
しかしここでモンシアからクレームが入って来た。
「モンシア中尉」
「不死身ってのは俺達第四小隊の専売特許なんだよ、その言い方は止めやがれ」
「じゃあ何て言えばいいのかな」
「不滅のドラグナーチームってのはどうかな」
「おう、いいじゃねえかそれ」
モンシアから返事が返って来た。
「それならいいぜ。とにかく不死身じゃなきゃな」
「了解」
「あとお詫びに後でウイスキーでも一杯おごってくれりゃいいからな。それじゃあな」
「ちぇっ、ちゃっかりしてるな」
「何か言ったか?」
最後にケーンの言葉に突っ込みを入れた。何はともあれドラグナーチームは不死身から不滅になった。
「何はともあれ行くぜ!」
「おっさん今度こそ覚悟しやがれ!」
「フン、若造共が」
グン=ジェムは三人を前にしても微動だにしない。
「このわしの前に出て来たこと、後悔するがいいわ!」
「生憎俺達は頭が悪いんでね」
「後悔なんてのは知りたくてもわからねえんだよ!」
そう言いながらケーンのドラグナーが向かう。そこでゲイザムは攻撃に出て来た。
「甘いわあっ!」
「なっ!?」
青龍刀が出された。それが大きく縦に一閃された。
「うわっ!」
ケーンはそれを何とかかわした。だがそれはドラグナーの右腕を傷付けていた。
「チッ、かわしおったか」
「な、何て一撃なんだよ」
さしものケーンもいつもの軽い調子はなかった。
「まるで化け物だ」
「ハハハ、見たかわしの剣を!」
グン=ジェムは呆然とするケーンを前にして高らかに笑った。
「これがわしの剣だ!ようやく本気を出す気になってきたわい!」
「なっ、今までのは本気じゃなかったのかよ」
「そうだ!」
タップの言葉に対して返す。
「伊達に長く生きているわけではない!この剣技はこれで終わりではないぞ!」
「クッ!」
「ケーン、気をつけろ!」
「ああ、わかってるぜ」
そうライトに返す。
「こうなったら。俺だってな」
「ほう、どうするつもりだ」
「やってやらあ!ここに逃げるわけにはいかないんだよ!」
「殊勝な奴だ。若いのになあ」
グン=ジェムはケーンのその言葉を聞いてニヤリと笑った。
「ではわしの強さ、地獄で語るがいいわ」
「俺が行くのは天国だ!それもリンダと一緒になるまで死ぬわけにはいかないんだよ!」
「いつ、どさくさに紛れてまた言ってやがるぜ」
「まあ、ケーンだから許されるけれどな」
「当たると痛ぇぞおっ!」
シールドを手にゲイザムに向かう。盾で受け止めるつもりだった。
「シールドで防げると思うかっ!」
ゲイザムはグレネードを投げて来た。
「チッ!」
ケーンは反射的にそれをかわす。その動き自体は見事なものであった。しかしその動きこそがグン=ジェムの狙いであった
のだ。
「かかったな!」
「させるかよっ!」
青龍刀が振り下ろされる。ケーンはそれを盾で防ごうとする。しかしそれは適わなかった。
盾が両断された。そして吹き飛ばされる。同時にケーンのドラグナーも吹き飛ばされた。
「うわあああああああああっ!」
「ケーン!」
「大丈夫か!」
タップとライトもそれを見て思わず我を忘れた。そして叫んだ。
「だ、大丈夫さ」
だがそれでも彼は何とか生きていた。ゆっくりとだが態勢を立て直す。
「だが、何て馬鹿力なんだ。こんな奴ははじめてだ」
「どうだ、わしの強さは」
「ギガノスの旦那とはまた違った強さだ。このままじゃ」
「覚悟は出来たか?」
「歯が立たねえ。一体どうすれば」
「死ぬがいい。念仏は唱えてやるからな」
「クッ、このままじゃ」
「ケーン、逃げろ!」
「このままじゃ本当に死ぬぞ!」
「だが。どうやって」
「行くぞ!」
ゲイザムが突進して来た。ドラグナーはダメージを受け過ぎ満足に動くことすら出来はしない。ケーンはもう覚悟を決めていた。
「終わりかよ、こんなところで」
だがそうではなかった。何者かがここで攻撃を放って来た。そしてグン=ジェムのゲイザムの青龍刀を破壊した。
「何だと、わしの刀を」
「その立派な刀の柄の部分には特殊合金が使われているな」
「なっ、どうしてそれを」
「簡単なことだ。そこを攻撃すれば容易に破壊出来る」
声が聞こえてきた。
「何故それを」
「俺にはわかるのだ」
また声が言った。
「この俺にはな」
「貴様は」
「あれは一体」
戦場に見たこともないマシンが四体そこに立っていた。攻撃はその先頭にいる巨大なライフルを持ったマシンからだった。
「貴様等、一体何処のマシンだ」
「おいおい、俺達はマシンなんかじゃないぜ」
グン=ジェムの問いに帽子を被ったマシンが答えた。
「俺達はバーチャロイドっていうんだ。宜しくな」
「急にこの世界に来ちゃったけれど。地球みたいね」
「地球なのは確かだが我々の知っている世界ではないな」
女形のマシンに巨大ないかついマシンが答えた。
「ここは。何処なのだ」
「おいブラザー、ここが何処かわかるか!?」
「いや、わからない」
先頭にいるマシンが帽子を被ったマシンに答えた。
「だが。戦闘が行われているのは確かだ」
「いつもの調子かよ。落ち着いたことだ」
「で、そこの坊や達」
女形のマシンがケーン達に声をかけてきた。
「あたしの勘じゃあんた達が正義の味方みたいだけれど。一体何が起こってるの?」
「何がって言われても」
「わからねえかな。戦争やってるんだよ」
「そして今困ってるわけ。一応正義の味方なのには変わりないけどね」
ドラグナーチームの三人が彼女に答える。
「それじゃあそっちに入っていいかしら」
「俺達に言われても」
「とりあえず上の判断で」
「というわけで大文字博士」
「どうでしょうか?」
「うむ、私か」
ケーン達に話を振られた大文字は一瞬戸惑った様子を見せたがすぐに元に戻った。
「そうだな。ケーン君を救ってもらったし。ここは好意に甘えよう」
「そうこなくっちゃ。じゃあまずは自己紹介だな」
帽子のマシンがまず言った。
「俺はアーム=ド=ザ=ハッター。いかしたナイスガイさ」
「おいおい、今頃ナイスガイなんて言うのかよ」
ケーンがそれに突っ込む。
「もうちょっとましな言い方ってのがあるだろ」
「それじゃあ鬼軍曹でいいぜ。ハッター軍曹と呼んでくれ」
「了解」
「ベン軍曹と同じかよ」
「感じは全然違うけれどな」
「あたしはフェイ。フェイ=イン=ザ=ナイトよ」
「か、可愛い」
彼女を見てリュウセイが声をあげた。
「何て可愛いんだ」
「あら、見所のある坊やがいるわね」
フェイの方もリュウセイに気付いた。
「あたしの魅力に気付くなんて」
「あんな美人見たことねえぜ」
「ちょっとリュウセイ君」
だがそんな彼に光竜が声をかけてきた。
「私達に言ったことは嘘だったの?」
「この前あれ程誉めて下さったのに」
「あら、その若さでプレーボーイ!?」
フェイの方もそれを聞いて声色を変えた。
「悪い子ね。そんなのじゃロクな大人にならないわよ」
「いや、そういう問題じゃないと思うけど」
「まあいいわ。これから宜しくね」
「了解」
「私はライデン」
巨大なマシンが名乗った。
「ライデン512E1だ。覚えておいてくれ」
「またガタイのいいのがやって来たな」
凱が彼を見て言う。
「ゴルディマーグみたいだな」
「おう、俺も何だか親近感が沸くぜ」
「宜しく」
「こちらこそな。派手にやろうぜ」
「で、最後だけどよ」
「俺か」
「そうだよ兄弟、早く名乗りな」
「俺はいい」
最後のガンを持つマシンはハッターの言葉に応えようとはしなかった。
「俺には名前はない。テムジン747Jというコートネーム以外にはな」
「だからそれじゃ愛想も何もないだろ」
「愛想なぞいらない」
「そういう問題じゃなくてな。何かこう」
「じゃああたし達のリーダー格だからチーフでいいんじゃない?」
「チーフか」
「そうだな。ここにいる間はテムジンが私達のリーダーだ」
ライデンも言った。
「チームでいいと思うが。どうだ」
「そうだな」
テムジンは感情を表わすことなくそれに頷いた。
「ではそれでいい」
「そういうことだ。俺達四人、これから宜しくな」
「ああ。ところでよ」
リュウセイがまた尋ねてきた。
「何だ?」
「あんた達、中には誰か乗っているのか?」
「いや、俺達はそのままのマシンさ」
「そういうこと。自分で考えて動けるのよ」
「それでは私達と同じですね」
ボルフォッグがそれを聞いて言う。
「おっ、同志が」
「これから仲良くやりましょう。宜しくお願いします」
「ああ、こちらこそな」
「よろしくぅ」
こうして突如として姿を現わした四体のバーチャロイドが新たに加わった。彼等は早速攻撃を開始してきた。
「行くぞ!」
まずはライデンが攻撃を開始した。ビームを放ちそれで敵をまとめて撃破する。
「全体攻撃ってやつ!?やるじゃない」
それを見てフェイが声をあげる。
「じゃああたしも!いっくわよお!」
そして彼女も攻撃に入った。
「パワー全開!デンジャラス!」
全身が黄金色に輝いた。そしてハート型のビームを放つ。
「エモーションハート!メルトダウン!」
それで彼女も敵を一掃した。その外見からは想像も出来ない強力な攻撃であった。
「どうかしら」
ハッターの方を振り向いて言う。
「軍曹さんより強かったりしてね」
「何だと!俺を侮辱するってのか!」
ハッターはそれを聞いて激昂した。
「おいブラザー、どう思う!」
「俺には関係ないことだ」
しかしテムジンはそれに取り合おうとはしない。
「俺は俺の戦いを行うまで。では」
すっと前に出た。
「MARZ戦闘教義指導要綱十三番」
「そんなのもあるのかよ」
リュウセイはそれを聞いて呟いた。
「何番まであるか聞いてみたいな」
「私も貴方に教えることが一杯あるけれどね」
アヤがここでリュウセイに言った。
「何だよ」
「色々とね。うふふ」
思わせぶりにこう笑った。だがその笑みの真意は誰にもわからなかった。
「一撃必殺」
テムジンは突進した。そしてサーフィンをするかの様に巨大な刃に乗った。
そのまま敵に向かって激突する。攻撃を受けたメタルアーマーが一撃で両断される。
「う、うわああああっ!」
慌ててコクピットから逃げ出すグン=ジェム隊のパイロットがいた。彼が何とか逃げ出したところでマシンが爆発した。
「指導完了」
テムジンが最後に呟いた。刃はその右腕に握られていた。
「やるじゃねえか、ブラザー」
ハッターがそれを見て声をあげる。
「俺の兄弟分だけはあるぜ」
「で、貴方は何もしないわけ?」
「何だと?」
ここでフェイに顔を向ける。
「今のところ何もしてないわよね」
「おいおい、真打ちは最後に出るものだぜ」
「あつまり最後まで寝てるってことね。駄目駄目じゃない」
「ええい、口の減らない女だ!」
フェイの攻撃にたまりかねて言う。
「俺の腕を見てから言え!」
「じゃあ見せてよ、早く」
「黙っていろ!じゃあ見てな!」
ハッターはさっと動いた。その帽子を投げる。
「トゥッ!」
帽子は激しく回転しながら敵に向かった。そして敵の小隊の側を通過する。その際その敵達を激しく切り裂いていたのであった。
数個爆発が起こる。ハッターはそれを見て得意気に言った。
「どうだ」
「大したことないじゃない」
「何だとっ!まだわからないのか!」
いい加減ハッターも激昂してきた。
「この俺のパワーとテクニックが!」
「そんなことあたしにだって出来るわよ。大口叩く暇あったらもっと頑張ってよね」
「くーーーーーーーーーっ、口の減らない女だ!」
「何かまた濃いのがやって来たな」
「賑やかになりそうです」
凱とボルフォッグはそんな彼等を見ながら話をしていた。何はともあれ彼等の参戦は戦局に非常によい影響を与えていた。
「大佐、まずいぜ」
ジンがグン=ジェムのゲイザムに通信を入れた。
「このままじゃ」
「わかっておる」
グン=ジェムはそれに応えた。既にケーンから間を離している。
「ここは一旦退くぞ。そして態勢を立て直す」
「ああ」
「ゴル、後詰を頼むぞ」
「わ、わかった」
「毒蛇部隊撤退だ。後方に退くぞ」
「おうよ!」
グン=ジェムの指示と共に彼等は戦場を離脱した。彼等の撤退と共に戦いは一先は終わったのであった。
だが微妙に後味の悪い戦いであった。とりわけケーンにとってはそうであった。
戦いが終わりナデシコに帰還したケーンは非常に疲れた顔をしていた。そして一言も言わずに自分の部屋へと引き揚げたのであった。
「危険ですね」
ルリがそんな彼の後ろ姿を見てこう言った。
「今のケーンさんは」
「ルリちゃんにもそれがわかるか」
「はい」
ライトの問いに頷いた。
「今のままですと。よくありません」
「どうすりゃいいかな」
タップが問う。
「あのままじゃ。やっぱりまずいよなあ」
「今日のところはまずは静かにしておきましょう」
ルリは淡々とした口調で言った。
「ケーンさんのことです。明日にはまず出て来るでしょう」
「そんなに上手くいくかね」
「いえ、いくと思うわ」
リンダがタップとライトに答えた。
「ケーンは。あまりしがらみに捉われたりしないから」
「つまりは単純ってわけか」
「ですがその単純さがケーンさんのいいところです」
「誉めてるの、それ」
「はい」
ルリはライトの言葉に頷いた。
「ケーンさんの立ち直りの速さと明るさは非常にいいと思います」
「成程ね」
「長所が短所というわけか」
タップとライトはその言葉に異様に納得出来るものがあった。
「それが。結果としてあの人を救うことになります」
「それじゃ」
「俺達も動くのは明日からにするか」
「はい。それでは今日は」
「新入りへの挨拶に向かうとするか」
「また個性的なのがやって来たしな」
「あの人達ならマクロスにいるわよ」
「人!?」
タップとライトはリンダの人という言葉に首を傾げさせた。
「バーチャロンっていったよなあ」
「ええ」
「あれって人なのかな。GGGのメンバーと同じでロボットなんじゃないかな。だから人間じゃないと思うぜ」
「けれど仲間なのは一緒よ」
「まあそうだけど」
「仲間であることには変わりないわよ。だから人って呼んでも別にいいんじゃ」
「ううん」
「まっ、うちには元メルトランディのエースもいるし他にも色んな出身や経歴の人間もいるしいいんじゃないか」
「そうだな、よく考えたら俺とライトも結構あれな経歴だしな」
「スクールの落ちこぼれトリオ。気楽にいくとしよう」
「おうよ」
「けれど真面目にやる時は真面目にやってよね」
ここでリンダの突込みが入る。
「さもないとダグラス大尉の雷が落ちるわよ」
「おっと、いけねえ」
「それもあったよ」
彼等はもういつもの彼等に戻っていた。ケーンも部屋の中で次第に落ち着きを取り戻してきていた。
「このままじゃ終わらねえぞ」
彼は一人呟いていた。
「グン=ジェムの野郎、絶対にぶっ倒してやる」
そう決意したのであった。窓の向こうではモンゴルの大平原が夕陽の赤い光の中にあった。そしてその夕陽は次第に緑の海の中にその姿を消そうとしていた。

第八十二話完

2006・3・21  
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