真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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番外編 覇王様と黄巾の乱
前書き
番外編 第二弾です。
番外編に公孫賛編、董卓編を追加しようと思います。
私は自分に割り当てられた部屋で春蘭、秋蘭と一緒に時間を潰している。
「城に篭って2ヶ月になるわね。皇甫嵩は何をしているのかしら」
波才が率いる黄巾賊に攻め立てられ、潁川郡の長社の城に篭っているわ。
このままじゃ、いずれ城が落ちるわね。
とはいえ、主将は皇甫嵩だから、この私にはどうしようもない。
「ア――――――、もうっ! イライラするわね。秋蘭、お茶を次いで頂戴」
「華琳様、少々お待ちください」
秋蘭は部屋の隅でお茶の準備をすると、手際良くお茶を入れてくれた。
「秋蘭、ありがとう。心が落ち着くわね。お茶を飲んだら、皇甫嵩のところへ行くわ。二人とも私と一緒に来なさい」
「華琳様、畏まりました」
「華琳様、畏まりました」
お茶の香りで冷静になった私は皇甫嵩に意見しに行くことにした。
私はこんなところで死ぬ訳にはいかない。
黄巾の乱は漢室が民の信認を失った証、もう漢室に未来はない。
私の手で国の混乱を治めて見せる。
できれば、正宗にも協力して欲しいけど・・・・・・。
無理な話ね。
彼もきっと私と同じことを考えている。
いえ、私なんかよりずっと前から、このことを予見していたのだと思う。
今思えば、彼の人材集めの旅はこれから訪れる戦乱を生き残るための準備だったのね。
彼は間違いなく天下を狙っている。
私は彼に出遅れてしまったけど、この私にも矜持があるわ。
彼に何も抗いもせず、跪く気はない。
私は彼に跪くことになったとき、私はどうするのかしらね・・・・・・。
駄目ね・・・・・・。
こんな状況に陥って、気弱になっているのね。
私は曹猛徳よ!
私は何者にも負けない!
正宗、あなたを屈服させて、天下を手中にしてみせるわ!
だから、ここで黄巾賊の手に掛かり、死ぬわけにはいかない!
私は気を引き締めて、秋蘭と春蘭を引き連れ皇甫嵩を探しに行った。
皇甫嵩を探すと城壁の上の方が騒がしくなっていた。
「この騒ぎ何事なの」
私は何事かと城壁に昇り近くの兵士に声を掛けた。
「黄巾賊の野郎、捕まった仲間を鼻そぎの刑にしやがったんです! それに・・・・・・、許せねえ。墓を荒らしやがっているんです!」
兵士は黄巾賊への怒りで拳を握りしめていた。
「何ですって・・・・・・」
破才は私達への示威行為でこんな真似をしているのかしら。
でも逆効果ね。
こんなことしたら、城に篭った兵士は降伏するどころか、死ぬ物狂いで戦う。
賊ながら良将の破才がこんな馬鹿な真似をするなんて・・・・・・。
「秋蘭、春蘭、皇甫嵩の所に行くわよ!」
皇甫嵩が何かしたんじゃないのかしら。
私が皇甫嵩を探してしばらくして、当の本人から声を掛けられた。
「曹猛徳、どうしたのだ。そんなに急いで」
「皇甫嵩、あなたのことを探していたの。あなた何かしたわね」
「流石、曹猛徳だな。黄巾賊に偽情報を流した」
皇甫嵩は私に感心したように軽く笑うと、城壁の外を囲む黄巾賊を見て言った。
「流した情報は2つ。捕虜になると鼻そぎの刑になると恐怖している。城内では城外の墓を荒らされるではないかと恐怖している」
彼女は周囲を気にしながら、私にだけ聞こえるような小さな声で言った。
「田単の故事ね・・・・・・」
「1週間後に黄巾賊を叩き潰す」
私の言葉に皇甫嵩は私を見て頷くと言った。
皇甫嵩は翌日、黄巾賊に見える場所を女子供や老人に守らせ、黄巾賊に降伏の使者を送った。
破才は主戦派を説得する期間として5日をくれたらしい。
官軍が降伏することを聞いた、城内の民は我先に黄巾賊に金品を差し出した。
これに、破才は私達の降伏を確信したようで、黄巾兵に警戒を解かせた。
それから3日後、黄巾賊の兵士達は私達が降伏するものと信じ込み校規がかなり緩んでいるようだった。
ついにこのときが来た。
当初より3日繰り上げになったが、皇甫嵩は手間取ることなく総攻撃の指示をだし、既に攻撃の準備は出来ている。
私は皇甫嵩の指示を受け、秋蘭に数百の兵士を預け、彼女に夜陰に紛れて黄巾賊の陣中に火を放たさせた。
半刻しない内に黄巾賊の陣から火の手が上がったのを確認した。
「兵士諸君! 城に篭るのもこれで終いだ! 憎っき逆賊共を皆殺しにしてしまえ!」
皇甫嵩は城門を開門し、全ての兵士に対し鼓舞した。
「オオオオオオオ――――――!」
兵士達は彼女の言葉に心を震わして雄叫びを上げると黄巾賊達を襲いかかった。
「曹猛徳、私達も兵士達に遅れはとっていられない。行くぞ!」
「言われなくても分かっているわ! 春蘭、先行して道を切り開きなさい!」
「華琳様、お任せください! この春蘭、華琳様の前に立ちふさがる者は誰であろうと切り捨ててみせます。お前達、私に続けぇ――――――!」
春蘭は意気揚々に大剣を振り上げると黄巾賊の群れに勇猛に突き進んだ。
「我が精兵達、春蘭に遅れを取るな!」
春蘭に遅れ、皇甫嵩と私は黄巾賊に斬り込んだ。
突然の敵襲に黄巾賊は動揺して、彼らは混乱していた。
兵士達は皇甫嵩の策によって黄巾賊への恐怖を植え付けれているので、死にものぐるいになって黄巾賊に襲いかかり、寝込みを襲われた彼らは成す術も無く斬り殺されていった。
私は人の恐怖心がここまで人を変えるのかと戦慄した。
夜襲は三刻で決着がつき、私達の勝利で幕を閉じた。
戦況が落ち着いてから、朱儁が遅れて参戦してきたけど、そんなことどうでもいい。
破才の首は私が獲りたかったけど、皇甫嵩に奪われたわ!
春蘭、秋蘭共に頑張ってくれたから、なかなかの武勲を上げたと思うけど・・・・・・。
大将首を獲れなかったのは残念だわ。
でも、無い物ねだりをしても意味ないわね。
私は殺伐とした周囲を一瞥すると、空を見上げ漆黒の闇に煌めく星々を眺めた。
まあ、いいわ。
この作戦が成功したのは皇甫嵩の手柄だから、彼女に華を持たせてあげる。
それより、朱儁は情けない爺ね。
私達が前線で血を流しているというのに、後方で戦況を伺ってから参戦するなんて。
朱儁のところにいた孫堅だったかしら、あんな臆病者の所になぜいるのかしら、でも彼女みたいなのは春蘭だけで十分ね。
そう言えば、彼女は今回の戦で功名を焦って、大怪我を負ったそうね。
彼女の武は一流だけど、血の気が多くて粗暴な上、短慮な性格だから、この先、長生きはしないわね。
「私もこの乱を平定したら、人材探しを始めないと・・・・・・。正宗・・・・・・、私はあなただけには負けたくない」
私は誰にも聞こえない声で独白した。
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