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フリージングとイレギュラー

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手合せ

~アーネットside~
カーニバルの方は無事終わり、リカバリーセンターに向かったが大した傷を貰わなかったのですぐに回復できた。
回復した後、エリザベスと校舎に戻ろうとした時、他の女子達が訓練センターに向かって走っていた。


「………なーんで、皆、訓練センターに向かってるんだろうね?」
「……さぁ? 私には分かりませんが、訊ねてみましょう。……何故、そんなに急いでいるんですか?」
「カーニバルに乱入して来た男とキム先生の手合せをするんだってさ! だから、急いで見に行くのよ!!」


引きとめた女子は、すぐにまた訓練センターに走っていった。


「どうします?」
「……(私を助けた人か……興味があるかな)私も覗いてみようかな~」
「なら、私も行くとしましょう。興味があります」


そうして、私達は訓練センターに向かって走り出し、到着した時には始まる直前だった。
~アーネットside out~


~真紅狼side~
軽い準備運動を繰り返していると、向こう側からキムが教師専用の戦闘服で出てきた。


「……蒼騎、お前はそれでいいのか?」
「常にこの姿で戦ってきているから、別に苦にもならん。で、ルールは?」
「“参った”と認めたら負け。ただし、蒼騎、シフォンを倒したあの戦い方を使え。それ以外はそちらで勝手にしろ」
「シンプルでいいな。では、このコインが地面に落ちたら勝負開始と言う事で………」
「いいだろう。………「ピンッ!」蒼騎、本気で行かなければ、すぐに終わってしまうぞ………「カンッ!」………!!」


コインが地面に落ちた瞬間、キムは消えていた。
さぁて、どうしようかね………
そんなことを考えていたら、目の前から、薙刀らしきものが俺の腹目掛けて突きを放ってきた。


ボッ!


「………あぶね。感覚も掴んだし、反撃と行こうか」


今度は後ろからの突きだったが俺は左に避けた後、そのまま薙刀らしきものを掴み、遠心力を利用して吹っ飛ばした。


「どっせい!」


ブンッ・・・!


「なっ! あの状態から掴んでくるだと!?」


俺は、キムの姿を確認した後、一気に距離を詰める。


――ブラックアウト――


キィンッ!


『消えた!?』


観客は全員驚いている。
キムは、俺を探ろうとするが無駄だった。
何故なら、俺はキムの目の前に居るのだから。


「………戦闘中の余所見はいかんなぁ………?」
「な!? どこから………がっ!!」


ドゴンッ!


ブローを叩き込み………


――スパイクライド――


体勢を崩しているキムの体を駆けあがり、そのまま回し蹴りを叩き込む。


ガァン!


「………ぐっ」
「ちょっとばっかし、気が抜けてんじゃねぇだろうなぁ? お前は俺に対して『本気で行け』と言ったが、お前こそ本気で行かなければ、一方的な試合になるぜ?」
「いいだろう。これから、本番だ」


頭を揺らされているキムはどうにか立ち上がり、その後、再び消えた。
またさっきと同じか………と、思ったが、今度はさっきのとは違った。
加速時の波動音が均等に聞こえてきたのである。


パパパ………パンッ!


ガンッ・・・!


「がっ!? ごっ、ぐえ!!」


気配を読むことを忘れていた俺は、一撃目が当たってから防御の姿勢も取ることが出来ずに、連撃の嵐を食らった。


「……どうだ、蒼騎。なかなか効いただろう?」
「おー、痛ってぇ痛ってぇ。なかなか効いたが、軽いな」
「……鬼の体は伊達じゃないってか?」
「もう少し楽しみたいが、これは軽い手合せだから終わらせるか」
「蒼騎に出来るかな?」
「やってやるよ」


お互い、立ち上がり構えた。
キムは薙刀を低く構え、俺はぶらりと両腕を下げている。
緊張が高まり、観客も自然と静かになっていく。
そして………………


カランッ・・・・・・・


なにかが落ちる音が聞こえた瞬間、俺達は同時に出た。
俺は肘打ちを叩き込んだ後、“チェーンドライブ”を叩き込もうと思ったが、キムの攻撃の方が早く、すでに薙刀を振りおろしていた。


ガキィッ!


キムの攻撃は虚しくも地面にぶつかり、俺は身を捻りながら避けることに成功した。
そしてキムが薙刀を引き戻そうとしたので、俺は柄の部分をおもいっきり踏んだ。


ドン………!!


「し、しまtt………「遅ぇ」……くそ!!」


踏みつけた薙刀から脚を離して、すぐにキムの腹に肘打ちを叩き込んだ。


「オラァ!!」
「………ぐぅ!!」
「オラオラオラオラオラァ…………でやっ!!」


ドカッ、バキキキ………………ドゴンッ!!


顎を振り抜かずに後ろに下がり、炎を纏った右手を前にかざして高速で突進した。


「………………そらよ」


ゴォア!!


「…………か………はっ………………」


爆発の中から、キムが吹き飛ばされながら出てきた。
キムは立ち上がろうとしたが、手に上手く力が入らないのか、立ち上がることが出来ず、そのまま動かなくなった。


「ま、こんなもんかな?」


キムが倒れてから、数秒で喧しくなった。


「きゃあああ、キム先生大丈夫ですか!?」
「ちょっと、アンタ! やりすぎよ!!」
「最低ー!」


……………ウゼェ。
実にウゼェ。
合意の元の手合せだったのによ、なんで俺がここまで言われなくちゃならんのだ?
本当にウゼェ。


「くだらねぇ文句を言うなら、見に来るんじゃねぇーよ。ガキ共」
『なんですって!?』


今の一言で、数名を除く女子がキレていた。


「“酷い”とか“最低”とか言う暇あったらな、ちったぁ自分を鍛えろよ。これから命を賭けなければいけない戦いがあるかもしれないのに、ただ呆然と眺めているだけとか、お前らは馬鹿か? 自分達が何をするためにここに来たのか、今一度考えろ。……………まぁ、命を懸けた戦いなんてしたことのないお前らには難しい問題か」


そう言い放ち、俺は訓練センターを出ていった。
出て言った後、すぐに後ろから声をかけられるとは思わなかったがな。
~真紅狼side out~


~アーネットside~
真紅狼がキム先生との手合せが終わり、火傷など傷を負ったのを見た他の女子は彼を罵倒した。
だが、彼は嗤って吹き飛ばし、私達がここに居る理由を思い出させる様な事を言ってきた。


“自分達が何をするために”


『私達は人類をノヴァから救うため』っていうのが、表的な理由が語られているけど、私は違う。
私は小さい頃は父と二人で暮らしていたが、私に聖痕の適合率が高い事を知り、しばらく経ってから入学後に父が病気で亡くなった。
母は私が幼いころに亡くなっていた、その為必然的にゼネティックスに入るしかなかった。
私が戦う理由は死んだ父さんが私の頑張ってる姿を見せたいからだ。
だから、私は追った。
真紅狼の後を………


「真紅狼、待って!」
「ああー? っと、アーネットとエリザベスか。なんの用だ?」
「え、えーっと………」


呼びとめたのはいいが、次に何を言うのか考えていなかった。
すると、エリザベスが………


「一体、貴女は何をやっているんですか………」
「エリザベス………」
「私が助け船を出して上げましょう。真紅狼さん、これからお茶などいかがですか?」
「まぁ、いいが………」
「では、行きましょう」


そうしてエリザベスの案内の元、食堂に向かった。
食堂に着いた私達は、真紅狼が珈琲、私達は紅茶を飲みながら話を始めた。


「さて、アーネットが俺を呼びとめた理由を聞きたいんだが?」
「……真紅狼にとって戦う理由って何なのかを聞きたくてね」
「私も興味があります」
「………俺が戦う理由はどこにでもある理由さ。“大切なモノを護る”それだけだ。俺が心の底から“護りたい”という奴を護るんだよ。まぁ、この場合、基本女になるわけなんだがな………」
「それって、つまり、真紅狼にとって“愛した女性”になるのかしら?」
「まぁ、そうだな。護れるなら俺は殺人をやっても、護るさ。他人から世界から“悪党”と言われようが恨まれようが罵られようが………な」
「真紅狼さん、それは異常な考えですよ?」
「何故だ、エリザベス? 護るってのはな、簡単そうに見えて案外難しいんだ。むしろ、人を殺す方が簡単なんだぞ?」


真紅狼は淡々と言葉を紡ぐ。
その言葉の重さはまるで体験して来たような感じを含ませる程の雰囲気だった。


「俺は不器用なんだよ。暴力と言う圧倒的な力でしか人を護れない。………ま、今は“大切なモノ”や“愛する女性”がいないから、ただ壊すだけだがな」


時折、真紅狼が話している最中に見せる表情はどこか寂しげなモノに見えた。
真紅狼の言っていることは、とても理解できるが、理解しにくいところもあった。
まさに両極端な話だった。
だけど、私は真紅狼の言っていることが異常な考えとは思わなかった。
むしろ、こういう男がまだいるんだなぁ。と思ってしまった。


「(護ってもらうなら、真紅狼に護ってもらいたいな~)」


………なんで、私はなんでこんなこと考えてるのよ?!
突然、頭の中に出てきた言葉を追い払った。


「アーネット、大丈夫か?」


すると、真紅狼の顔が目の前に来ていていた。
うわわわわっ!! 近い、顔が近い!!


「顔が赤いぞ? 熱でもあるのか?」
「だ……いじょうぶ。大丈夫だから///」
「そうか? まぁ、あんまり無理するなよ? 大きな怪我は無かったとは言え、無理をすれば、傷に障るぞ」
「え、ええ///」
「こんなところだ。疲れたから、帰っていいか?」
「あ、はい。有難うございました、真紅狼さん」
「なかなか有意義な時間だったよ、エリザベス。それとアーネット、お大事に」


真紅狼は席を立った後、伝票を持っていってしまった。
『ここは俺が払ってくよ』と言いつつ、手をひらひらと振りながら去っていった。
そして、私とエリザベスの二人になってから、エリザベスが突然口を開いた。


「………アーネット」
「な、なによ? エリザベス」
「貴女、真紅狼さんが好きですね?」
「な、ななな、何を言ってるのよ!!?」
「では、先程真紅狼さんが顔を近づけた時、顔が真っ赤になってましたが?」
「………抜け目ないね、エリザベス」
「で、どうなのですか?」
「………ま、まぁ、多少は………その////」
「もういっその事、二年に上がった時に決めるリミッターは真紅狼さんに決めたらどうです?」
「ちょっ、いきなりなんてこと言うのよ!?」
「まぁ、冗談ですが………」
「冗談に聞こえなかったんだけど?」


『そうですか?』とエリザベスは立ちながら言い、去っていった。
私はもうしばらく、火照った顔を冷ます為に一人で食堂にいた。
~アーネットside out~


あー、どんなに落ち着かせても真紅狼の事ばっか考えちゃう。 
 

 
後書き
はい、アーネットにフラグが建ちました。

元々、立たせるつもりなので当り前の事!(キリッ!
原作ではアーネットのリミッターはモリソンですが、知りませんそんなことは。
 
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