真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
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第62話 呉にゆかりの者達
私は自分の執務室に戻るとこの部屋の隣にある応接室に入って行きました。
「お待たせして申し訳ない」
私が一礼すると4人の女性も同じく一礼しました。
呂蒙、周泰の2人は凄く緊張している様子でゼンマイ仕掛けの人形のようです。
2人の服装は原作と違い農民の普段着そのものです。
2人も自分が場違いな場所にいると思っているのか落ち着かないようです。
揚羽が司馬家の情報網で調べ上げた限り、孫家との接点は全然ありませんでした。
史実でもまだだと思います。
でも、ある程度用心した方がいいでしょう。
「そんなに固くならなくてもいい」
私が2人に優しく微笑むと、2人は顔を真っ赤にして俯きました。
「劉司隷校尉、話を勧めてはくださらないか」
周瑜が私に声を掛けてきました。
彼女は原作通り赤いチャイナドレスを着ています。
彼女も未だ孫家の接点は見えませんでした。
ここに来るまでに水蓮に報告を受けたのですが、周瑜は呂蒙、周泰のことが気に入らないような態度だったらしいです。
まあ、周瑜は周家の者ですから、農民と一緒の旅が嫌だっただけではないでしょうか。
もしくは黄蓋のときみたいな苦肉の計・・・・・・。
念のため周瑜、呂蒙、周泰には気をつけて置きましょう。
「そうだな。では、まず私から挨拶をしよう。私は劉正礼、知っていると思うが司隷校尉の官職にある」
「私は周公瑾と申します。劉司隷校尉、私はまだあなたに士官するつもりはないです」
「『まだ』ですか?ええ、それで構わない。あなたの士官の条件は重々承知している」
「それならばいいです」
周瑜は私の言葉を聞いて納得しているようでした。
「あ、あの私はりょ、呂子明と申します。りゅ、劉正礼様、よろしくお願いいたします」
呂蒙は原作のような眼鏡を掛けていません。
揚羽の報告では周囲から「阿蒙」と呼ばれているとありました。
「私はしゅ、しゅう、周、よう、幼平です。りゅ、劉正礼様、よろしくお願いいたします」
揚羽の報告では農民そのもので、暇なときは山野で狩りをしているとありました。
この2人は教育が必要な気がします。
「私が最後ですね。劉正礼様、わざわざお会いしていただきありがとうございます。私は商人の魯子敬と申します」
魯粛は私に丁寧な挨拶をしました。
彼女の服装は落ち着いた服装で、実家が裕福という割には地味な格好でした。
「魯子敬、夏候蘭に聞いたがお前は私に会いたいと言ったそうだな。この私に何のようなかな」
私は先に魯粛が私の面会を求めた理由を聞きました。
「はい、私は商人をしておりますので、職業柄各地の情報に詳しゅうございます。私は劉正礼様のご高名を知りまして、どうしても懇意になりたくはるばる揚州よりまいりました。実際にお会いしまして、想像通りの人物でございました。この魯子敬、劉正礼様に私の全ての穀物倉を寄付したく存じます」
魯粛は周瑜に家族の保護をして貰う代わりに、穀物倉を差し出したと言います。
これは私に魯粛の家族を保護してもらおうと思っていることでしょうか?
確かにそれしか考えられません。
魯粛が周瑜を頼ったのは周囲に敵が多かったからです。
しかし、揚州から遠く離れた地にいる私を頼るとはどういうわけでしょう。
彼女はまさか美羽がちかじか南陽大守に任じられることを知っているのでは?
今や私と麗羽が許嫁というのはこの中原では知らない者はいないので、商人の魯粛ならそのことは知っていると思います。
魯粛が美羽の任官の話を知っているのなら、彼女の立場からして美羽の親族になる私とのパイプを強くしたいのでしょう。
美羽は袁家の一族といってもまだ幼いです。
対して私は中原、河北で知らぬ者がいないほど武名が轟き、賊からは恐怖の対象になっています。
美羽は揚州に近い場所に任官されるので、魯粛が身の危険を感じたら美羽の元に身を寄せればいいです。
私を恐れて美羽に近づくものはいないでしょうから、もっとも安全な場所になると思います。
後は心配の種の母親を私に保護して貰えば安心といったところでしょう。
しかし、嘆かわしいことです。
今の朝廷は金をちらつかせれば情報が簡単に手に入る状態です。
だから、私の身辺は司馬家の手の者に秘密裏に守らせています。
彼らに始末された者は私が司隷校尉になってから数知れずです。
揚羽が私の許嫁で本当に助かります。
「・・・・・・これはどのような意味かな?」
「他意などございません。私は劉正礼様を心服しております。心服するお方に尽くすのが私の心情でございます」
彼女は拱手し私に頭を垂れました。
他意はない?
大有りだと思います。
何処の誰が自分の全財産を何の見返りもなしに他人に差し出すと言うのでしょう。
とはいえ、魯粛を懐に組み入れたいので気が進みませんがこれを受けるしかないでしょう。
「分かった・・・・・・。ありがたく頂戴しよう」
「劉正礼様、ありがとうございます」
「魯子敬、寄付の礼という訳ではないが、私にお前の家族を保護させて欲しい。昨今、黄巾賊が跋扈してお前も大変であろうと思う。それと私に士官し、私の真名を預かっては貰えないか。私の真名は正宗。よろしく頼む」
私は魯粛に士官の話と家族の保護の話を切り出しました。
「なんと!劉正礼様、その話を本当にございますか?この魯子敬、幸福の極みにございます。日々、賊がはびこり母のことが心配でございましたがこの魯子敬安心いたしました。この私の真名は渚にございます」
彼女は私の申し出を喜んで受け入れました。
「茶番ですな」
周瑜は私と魯粛に文句を言ってきました。
茶番なのはいちいち言われずとも分かっています。
渚の望みを叶えただけです。
だいたい、本来なら茶番と言ったあなたが私の立位置でしょうが・・・・・・。
「周公瑾殿、手厳しいな。さてと呂子明、周幼平。お前達は私に士官してくれるのか?」
周瑜の言葉を軽く受け流し呂蒙、周泰に声を掛けました。
「ああ、あの!私のような者でいいのでしょうか?私は『阿蒙』と呼ばれる位に頭が悪いです。劉正礼様のお役に立つとはとても思えません」
「ならば勉強をすれば良いだろう。お前の周囲にはお前を理解できる者がいないから『阿蒙』などと言うのだ。それにお前は武の方はなかなかと聞いているぞ」
私は自身無さげな呂蒙にやさしく諭すように言いました。
「わ、私でも勉強をすれば頭が良くなるでしょうか・・・・・・?」
呂蒙は少し期待を込めた目で私を見つめました。
「ああ、私が見込んだのだから間違いない」
私は呂蒙に笑顔で応えました。
「あ、あのあの・・・・・・。呂子明、劉正礼様に士官いたします。私の真名は亜莎といいます。」
私と亜莎のやり取りを眺めていた周泰が手を上げました。
「あ、あ、はいっ!私も劉正礼様に士官いたします。私の真名は明命といいます。」
「そうか明命、心強いぞ!私の真名は正宗。よろしく頼む」
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」
私が彼女の手を握ると明命は顔を赤らめて俯きました。
「もう我慢できない!私がこの者達と同列と言うのか!」
周瑜は拳を震わせながら激怒しました。
呂蒙、周泰は周瑜を怖がっています。
「周公瑾殿、落ち着かれよ。呂子明、周幼平は農民の身なれど才溢れる者達です。あなたは見かけのみで人を判断されるのですか?」
「ほう、劉司隷校尉はこの者達が才溢れる者と言われるのか?」
周瑜は呂蒙、周泰を一瞥しました。
「周公瑾殿、質問に質問で返さないでくれ。彼女達の才はおいおい分かる。それよりあなたの士官の条件の話だが後日にしましょう。あなたも他の3人も長旅で疲れていると思う。私が洛陽に宿を取るので、そちらで休むといい。あなたとは明日、2人だけで話す場を設ける。あなたも私と二人で話した方が気が楽ではないか?」
周瑜は私の申し出に頷きました。
私は水蓮に申し付けて、4人を宿に案内させました。
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