阿倍野の座敷童
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第二章
「残したのは千億の赤字の三重の方の」
「あそこね」
「この前変にバズって人気出たけれど」
ネットの宣伝でというのだ。
「それまではね」
「大赤字だったわね」
「そこだけ残したのよ」
「色々酷いわね」
「リストラもやたらしたし」
このこともあってというのだ。
「何言われても平気でグループの評判が落ちてもね」
「平気だったのね」
「絶対に皆使うものがグループの基本でしょ」
まさにとだ、波留はビルを見つつ話した。
「移動には」
「ええ、あのグループはね」
沙織もその通りだと答えた、尚二人はそれぞれ八条グループの企業で働いている。学生時代からの知り合いで今は大阪でそれぞれの夫と暮らしていて今も仲がいいのだ。
「そっちが柱だから」
「赤字になっても潰れないわね」
「そんなグループだから」
それ故にというのだ。
「評判が落ちても平気だから」
「無茶苦茶もやって」
「酷いことも平気で言ったわね」
「常識を疑う様なことも凄く言ったし」
波留は言葉を続けた。
「あのビルもね」
「その会長が建てたわね」
「グループで反対意見もあったけれど」
「採算がつくか」
「百貨店も厳しいし」
「今はね」
「けれどその反対意見を説得したっていうけれど」
それでもというのだ。
「多分実際はね」
「知れたものね」
「そんな奴が会長やってたグループで」
そうであってというのだ。
「そんな奴が建てさせたビルで百貨店だから」
「入る気になれないわね」
「あんなとこ入るなら」
それならというのだ。
「八条百貨店行きましょう」
「そうね」
沙織はそれがいいと頷いた。
「あそこはね」
「何でもグループ全体でどんどんサービスの質落ちてるみたいだし」
「そうなってるのね」
「そんな奴が死ぬまでずっと会長やってて」
それでというのだ。
「まともな経営だったか」
「その筈ないわね」
「赤字のテーマパークだけ残して他のもの全部劇団もテーマパークも球団も全部潰して社員のクビ片っ端から切ってあるお酒が自分に相応しいとか優雅に言っててね」
波留はビルを汚物を見る目で見つつ話した。
「ワンマンで一度決めたことを変えない」
「しかも秘書、経理、広報だった」
「そんな奴の周りなんて」
「イエスマンばかりね」
「イエスマンだった連中がボスがいなくなって」
そうしてというのだ。
「経営やっても」
「碌なものにならないわね」
「イエスマンなんてね」
そうした輩はというと。
「出来る筈ないから」
「お仕事でも何でもね」
「諂うばかりでね」
自分の上の者にというのだ。
「頭にあるのはお金とか権力ばかりで」
「ゴマばかり擦って」
「それでね」
そうであってというのだ。
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