阿倍野の座敷童
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第三章
「屑ばかりだから」
「有能な筈がないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「今あそこのグループはね」
「どうにもならないわね」
「昔から東大京大出た人ばかり優遇して」
そうしたグループでというのだ。
「そのことが問題だったそうだし」
「学閥ね」
「その会長は確か京大で」
「東大卒と仲が悪かったのね」
「それで色々やったみたいだし」
「そうしてイエスマンだけが残ったのね」
「そうだと思うわ、そんなグループの百貨店なんて」
それこそというのだ。
「行くべきじゃないわ」
「そうよね」
二人でこんな話をしてだった。
阿倍野から地下鉄で梅田の八条百貨店に行こうという話をしたが梅田は少し距離があって地下鉄等で行くことになるのでそれは止めてだった。
阿倍野の他のところで買いものをした、そして帰る前に休憩で喫茶店に入ったが。
その喫茶店の中の傍の席で親子連れがいたが。
小さな女の子がだ、母親にこんなことを言っていた。
「ねえ、さっきね」
「どうしたの?」
「ほら、私達が行った百貨店ね」
オレンジジュースをストローで飲みつつ話していた。
「変な形の」
「変な形の百貨店って」
波留はすぐに察した。
「さっき私達が話してた」
「あのグループの百貨店よね」
「そう、あの会長のね」
「あそこよね」
「そうよね」
沙織と話した、そしてだった。
女の子六歳位の彼女はだ、可愛らしい顔で話した。
「小さな着物の女の子が前にいて」
「女の子?着物?」
母親はそう聞いて首を傾げさせた。
「いたかしら」
「いたよ、ここには最初から入らないってね」
その様にというのだ。
「言ってたわ、何でもね」
「何でも?」
「あの百貨店貧乏神がいるそうだから」
「その女の子は入らないの」
「それで別のお店に入ったわ」
そうしたというのだ。
「百貨店の近くのね」
「着物の女の子なんていなかったけれど」
母親は女の子の言葉に首を傾げさせていた。
「お母さん見なかったわよ」
「いたよ」
だが女の子は言うのだった。
「赤い着物でね、おかっぱ頭の」
「あそこの前にいたのね」
「そうよ」
「そうだったかしら」
母親は眉を顰めさせ首を傾げさせるばかりだった、だが。
店を出てからだ、波留は沙織に真顔で言った。
「あの女の子が話していたね」
「おかっぱの着物の女の子ね」
「間違いないわよ」
沙織に夕方の阿倍野の道を歩きつつ話した。
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