大阪のミンツチ
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第三章
「何度かお母さんに連れて行ってもらったけれど」
「あそこは緯度が高いですし」
「スカパフロー生まれだけれど」
自分の母はというのだ。
「もうあそこは夏でもね」
「涼しいですわね」
「ええ、ただ今はね」
ここで玲那にこうも言った。
「北海道のこと言ったわね」
「はい、そうですわ」
「最近あそこも暑いらしいわよ」
「夏でもですの」
「何でも四十度いったそうだから」
「北海道でもですの」
これには玲那も驚いた、そのうえでの返事だった。
「四十度いきましたの」
「この前エックスで見たわ」
「そうですの」
「もうね」
これがというのだ。
「北海道も今はね」
「夏はそうですの」
「今年はね」
「信じられませんわね」
「いや、うちの学校北海道の子もいて」
この地域出身のというのだ。
「あんたもお付き合いあるでしょ」
「ええ、ですがそのお話は聞いていませんわ」
玲奈は正直に答えた。
「熊のお話は聞いていますけれど」
「熊が出て大変だって」
「それで駆除するなと他の地域から言う人が出ていると」
「あれね、はっきり言って馬鹿よね」
その話についてだ、杏は眉を曇らせて返した。
「熊は怖いわよ」
「それで人を害するならですわね」
「やっぱりそうした熊はね」
「狩るしかないですわね」
「さもないと人が死ぬわよ」
杏は真面目な顔で話した。
「実際そうした事件起こってるしね」
「ですわね」
「それでそんなこと言うのは」
「おかしいですわね」
「馬鹿よ、何かあったら邪魔にしかならない奴っているわね」
「足を引っ張る様なことを言って」
「凶悪犯が出てもそうだし」
加害者の人権だの言ってというのだ。
「熊だってね」
「そんなこと言う人いますわね」
「馬鹿っているわね」
そう言うしかない輩はというのだ。
「本当にね」
「そうですわね」
「全くだ」
ここで川の方から声がしてきた。
「熊は怖いぞ」
「そうよね」
「わし等もどれだけ襲われたか」
「わからないのね」
「蝦夷最強の獣だぞ」
声はこうも言った。
「どれだけ怖いか」
「ええ、ただあんた何者よ」
杏は自分が応じる声に問うた。
「明らかに玲那の声でも喋り方でもないけれど」
「私お話していませんし」
玲奈も言ってきた。
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