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西遊記

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第十二回 玄奘西方に旅立つのことその十三

「実は雅号も考えてまして」
「拙僧のですか」
「はい」
 まさにといいます、宴は玄奘と皇帝、僧侶の姿になっている菩薩と二太子以外は朝廷の主だった廷臣の人達の限られた人達の間でささやかに行われています。
「今回の旅に相応しい」
「それまで用意して頂けるとは」
 玄奘はその好意に感激して言いました。
「何と有り難い」
「いえいえ、当然のことです」
「当然ですか」
「大事を為されるのですから」
 それ故にというのだ。
「それもまたです」
「そうなのです」
「それでです」
 菩薩宇はさらに言いました。
「その雅号ですが」
「どうしたものでしょうか」
「三蔵の経典を持って帰られるので」 
 玄奘はというのです。
「三蔵でどうでしょうか」
「まさにその名ですね」
「そしてこれからはです」
 玄奘にさらにお話します。
「三蔵法師と名乗られては如何でしょうか」
「何と尊い名か」
 玄奘はその名前を聞いて思いました。
「実に」
「そう言って頂けますか」
「そこまでの名を頂けるとは」 
 その雅号を聞いて言うのでした。
「有り難き幸せ」
「いえいえ、私もそう言って頂けると」 
 菩薩も畏まって応えます。
「嬉しい限りです」
「左様ですか」
「はい、それでは」
「この雅号で、です」
「旅をされますね」
「そうされて頂きます」
 こう菩薩に言うのでした。
「拙僧は」
「それでは」
「そして弟殿」
 皇帝は二人のやり取りの後で三蔵法師に言いました。
「別れの宴であるので」
「それで、ですね」
「一時の別れの挨拶も」
「せねばなりませんね」
「待っているぞ」 
 兄として弟に言うのでした。
「しかし再会までのな」
「別れの挨拶をですね」
「これよりしようぞ」
「はい」
 法師はそれではと応えました。
「これより」
「その杯を」
「それではです」
 法師は皇帝に言いました。
「拙僧の郷土の土がありますので」
「そうなのか」
「二太子殿が用意してくれました」
「こちらに」
 その二太子が言ってきました、一つまみの土を紙の上において持っています。 
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