西遊記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十二回 玄奘西方に旅立つのことその二
そのうえで宮廷に赴き言いました。
「私達はこうした者です」
「えっ、菩薩殿ですか」
「その証に」
門番に本来の姿に戻ってみせました、そうして言うのでした。
「信じて頂けますね」
「何と、まさか」
「それで皇帝陛下にお会いしたいのですが」
「わかりました」
門番だけでなく彼の上官である近衛の士官の人も応えました、そしてすぐに近衛軍の司令官にお話しますと。
司令官はまさかと思い菩薩と二太子に会いました。
「見たところ旅の僧だが」
「この通りです」
ここで菩薩はまた本来の姿に戻ってみせて言いました。
「これで信じてもらえますね」
「ううむ、何故万歳老にお会いしたいのか」
「玄奘殿にお渡ししたいものがありまして」
「玄奘殿ならおられます」
司令官は彼の名前を聞いて応えました。
「今丁度」
「宮廷にですね」
「万歳老と抱擁のことでお話をされるために」
「それで、ですね」
「おられます」
「では都合がいいですね」
「はい、それでは」
司令官もそれではとなってです。
皇帝にお話しました、すると皇帝は言いました。
「そなたが言うなら嘘ではない」
「それでは」
「観世音菩薩殿と金吒太子殿をお連れしてくれ」
「わかりました」
こうしてでした。
菩薩と太子は皇帝の前に案内されました、すると皇帝は皇帝の座から下りて二仏を恭しく迎えて言いました。
「よくぞ来られました」
「お迎え頂き有り難うございます」
「いえいえ、まさかです」
「私達が来るとはですか」
「夢にも思いませんでした、しかし」
皇帝は菩薩に言いました。
「玄奘殿にお渡ししたいものがあるそうで」
「その為に参上しました」
「そうなのですね
「この二つですが」
袈裟と錫杖を出して見せました。
「是非です」
「これは」
皇帝はその二つの宝を見て言いました。
「随分と価値のあるものですね」
「おわかりですか」
「銀にしてどれ位でしょうか」
「袈裟で五千両でして」
それだけの価値があるというのです。
「錫杖で二千両です」
「わかりました」
皇帝はそれならと答えました。
「買い取り玄奘殿に下賜しましょう」
「いえ、お金はいりませぬ」
菩薩は微笑んで応えました。
「これは玄奘殿の為に用意したものなので」
「だからですか」
「はい、このままです」
「お渡ししてくれますか」
「そうします、それでは」
「はい、必ずです」
皇帝はその二つの宝を受け取ってから答えました、受け取ったそれだけのことでもとても尊いものを感じました。
ページ上へ戻る