西遊記
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第十二回 玄奘西方に旅立つのことその一
第十二回 玄奘西方に旅立つのこと
観世音菩薩と二太子は長安に着きました、その賑わっている街を見て菩薩は二太子に笑顔で言いました。
「こうして人々が平和で賑やかですと」
「それならですね」
「それだけで、です」
「よいことですね」
「はい、平和はそれだけで尊いものであり」
そうであってというのです。
「賑わい、繁栄もです」
「よいことですね」
「人は真面目に働けば」
「それだけで修行になりますね」
「仏門でもそうで」
「道教でもですね」
「同じです、真面目に働いている人がとても多いので」
長安はというのです。
「ですから」
「菩薩様もですね」
「嬉しいです」
「左様ですね」
「しかも聞けば」
人々の言っていることをです。
「朝廷が法要を開くそうですね」
「餓鬼を救う」
「その壇主はです」
「玄奘殿だとか」
「この人はです」
玄奘はというのです。
「実は釈尊の二番弟子だった人で」
「そうであって」
「はい、そして」
それでというのです。
「金蝉子というお名前でしたが人界に転生する時に」
「まさに今ですね」
「その手配をしたのは私でした」
「そうだったのですか」
「ですから」
それ故にというのです。
「その玄奘殿が壇主となり」
「嬉しいのですね」
「心の底から」
菩薩はにこりと笑って言いました。
「左様です」
「そうですか、だからですね」
二太子はその菩薩に言いました。
「私達は今は人の姿ですが」
「旅の僧侶になっていますね」
「僧侶としては随分です」
「にこにことしていますね」
「謹厳ではなく」
「別に僧侶でもです」
菩薩は二太子にその笑顔でお話しました。
「笑顔でもいいのです」
「そうなのですね」
「そうです、むしろ常に微笑む」
「それ位でないとなりませんか」
「左様です、仏は常に微笑んでいますね」
「はい」
二太子も確かにと頷きます。
「そうですね」
「ですから」
「にこりとしてもですね」
「むしろそうであった方がいいのです」
そうだというのです。
「これが。それでです」
「今菩薩様はとてもですね」
「嬉しいのです、素晴らしいですね」
「はい、朝廷の法要の壇主とは」
「それだけの高僧になられたので、では」
「それではですね」
「これより玄奘殿の為にです」
まさにというのです。
「働きましょう」
「わかりました」
二太子も頷いてでした。
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