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西遊記

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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその十四

「人界の生きものは人でかなり」
「長いのか」
「鼠は二年です」
「何っ、あっという間だぞ」 
 悟空はそれに驚きました。
「干支の神に鼠もおられるが」
「最初の神様ですね」
「うむ、干支というとな」
「かなり位の高い方々です」
「神々の中でもな」
「それでも人界の鼠はです」
「二年か」 
 土地神に神妙なお顔で応えました。
「それだけか」
「それだけです、また蜻蛉ですが」
「あの細い虫か」
「透明な」
「あの虫は一年か」
 鼠が二年ならとです、悟空は思いました。話の流れから鼠より短いと思いそれでこう土地神に応えたのです。
「それ位か」
「鼠が二年なら」
「それ位か」
「成虫になると二日です」
「二年どころではないな」
 これには悟空も驚きました。
「最早」
「はい、虫はおよそ一年もです」
「生きられぬか」
「種類によりますが春に生まれ」
 そうしてというのです。
「冬に入るとです」
「死んでおるか」
「何年も生きられるなら冬眠してです」
「熊や栗鼠の様にだな」
「冬を越しますが」
「また春を迎えるな」
「大抵はです」
 多くの虫はというのです。
「春に生まれ」
「冬になる頃にはか」
「死にます」
「そんなものか」
「そうなのです」
「わし等なら瞬くする間だ」
 それこそと言う悟空でした。
「春から冬なぞな」
「神にとっては」
「人の世のな」
「そうですね」
「うむ、全くだ」
 それこそというのです。
「そんなものだが」
「虫はその間にです」
「生まれて死ぬか」
「そうなのです」
「実に短いな」
「はい、人界の生は」
 人も他の生きものもというのです。
「そうしたものです」
「そうなのだな」
「はい、そして」
 そうであってというのです。
「人にしてはこうしてです」
「わしが待っている間もか」
「かなりのです」
「時なのだな」
「そうなのです」
「左様か」
「若しです」
 土地神はさらにお話しました。
「旅に出て何十年もとなりますと」
「ちょっとした旅だな」
「その旅もです」
「人ならかなりの者だな」
「それこそ人生の何割にもなる」
 そこまでのというのです。 
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