西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその十三
「是非です」
「続けることだな」
「そうされることです」
「左様だな」
「ですから」
それでというのです。
「煬帝を反面教師にしご自身を律されることもです」
「続けていこう」
「さすれば」
「その様にな」
こうしたお話が朝廷で行われました、そしてこの時悟空は山で岩から頭を出したままこんなことを言うのでした。
「さて、もうすぐ運命がはじまるが」
「それがですか」
「人の時ではまだ先だな」
「はい」
土地神はそうだと答えました。
「むしろまだまだです」
「そう言っていいな」
「人の時は短いので」
「光陰矢の如しだな」
「瞬く間に進み」
そうしてというのです。
「終わります」
「そうしたものだな」
「人は」
「まさにわし等にとっては一瞬の間でな」
「生を終えます」
「わしの猿の寿命は三百四十年とちょっと位だったが」
悟空は自分のことを言いました。
「こんなものな」
「あっという間ですね」
「まさにな」
それこそというのです。
「あっという間だ」
「そうですね」
「仙人の修行をしてな」
「そうされてですね」
「遊んでな」
そうしてというのです。
「気付けばな」
「寿命でしたね」
「そんなものだった」
「三百四十年と少しは」
「そうだったがな」
「それで不老不死になられましたね」
「点鬼簿から名前を消してな」
自分のそれをというのです。
「仙桃も老君の薬もいただいてな」
「そうして不老不死になられ」
「何時までも健康にもなった」
「そうですね」
「しかしまことにだ」
「寿命に至るまですぐで」
「今話した通りだ」
まさにというのです。
「光陰矢の如しだった」
「人はもっとです」
「早く死ぬな」
「三百年どころかです」
それこそというのです。
「その五分の一にならぬかならないか」
「大体七十年か」
「それ位になりますと」
それこそというのです。
「古稀と言われます」
「古来稀か」
「そう言われます」
「たった七十年で稀か」
悟空はそのことに神妙なお顔になりました、そのうえで土地神に対してこんなことを言ったのでした。
「何と短い」
「人間五十年とも言われます」
「もっと短いな」
「もっと短い生もです」
「あるのか」
「左様です」
「ううむ、人の生は短いものだな」
「それが人でして」
土地神はさらにお話します。
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