西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその十
「まことに」
「そうなのですね」
「それでどうされますか」
「万歳老がそう仰せなら」
玄奘はそれならと応えました。
「慎んで」
「お受けされますか」
「はい」
畏まったまま返事をしました。
「宜しくお願いします」
「それでは万歳老にお伝えします」
「そうして下さいますか」
「それが私の責務なので」
「それでは」
「はい、では法要の時と場所はです」
その二つはといいますと。
「後程です」
「伝えて下さいますか」
「そうさせて頂きます」
「そのこともお願いします」
「はい、しかし」
ここで使者は玄奘の非常に整ったお顔を見て言いました。
「噂に違わぬ美男ですな」
「あの、そのことは」
「言って欲しくないですか」
「人は顔ではないとです」
その様にというのです。
「思っていますので」
「だからですね」
「はい」
それ故にというのです。
「言われることは」
「そうですか」
その美女の様なお顔を見て言う使者でした。
「それではです」
「そのことはくれぐれもです」
「言わない様にします」
「そうして頂ければ」
「わかりました」
使者は礼儀正しく頷き以後彼のお顔のことは言わない様にしました、そして皇帝は玄奘が法要を受けてくれたと使者から聞いてです。
今度は時と場所のことを決めることにしましたが。
それに相応しいお寺を探し時間も暦や占いも見て考えて決めて言いました。
「化生寺とする」
「場所はですか」
「あの寺にされますか」
「そうされますか」
「そして日時はな」
朝廷で文武の廷臣達にお話します。
「貞観十三年九月三日だ」
「その日ですか」
「その日に行うのですか」
「化生寺において」
「そうする、四十九日のな」
それのというのです。
「施餓鬼法要をだ」
「行い」
「多くの者を救いますね」
「成仏させますね」
「餓鬼になった者達をな、餓鬼に堕ちると」
どうなるかともです、皇帝はお話します。
「そうおいそれとはな」
「成仏しない」
「そう言われていますね」
「人から餓鬼に堕ちると」
「そうなると」
「だからな」
それ故にというのです。
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