西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその十一
「縁あってこの考えに至れば」
「冥界に行かれたそうで」
「そこで思われたのですね」
「法要を行おうと」
「色々あってな、朕が倒して成仏していないなら」
それならというのです。
「もうな」
「是非ですね」
「法要を行われ」
「成仏してもらいますね」
「既に布施で成仏してもらったが」
皇帝がこれまでの戦い等で倒してきた人達の魂はです。
「しかしまだだ」
「救われていない魂がある」
「餓鬼にまでなり果てた」
「そうした魂を救う」
「そうしますね」
「そうだ、そしてだ」
そのうえでというのです。
「多くの者をだ」
「救われますね」
「陳玄奘殿に法要をしてもらい」
「そうして」
「そうしよう、本朝は道教を大事にしているが」
皇帝はこのこともお話しました。
「朕としては御仏の教えもな」
「大事にされ」
「そしてですね」
「多くの魂を救われますね」
「そうする、また多くの教えが来ているが」
唐にはというのです。
「景教やマニ教とな」
「西方からです」
「実に多くの教えが来ています」
「御仏の教え以外にです」
「何かと来ています」
「拝火教も来ている」
この教えもというのです。
「世を乱さぬのならな」
「それならですね」
「よしとされ」
「そうしてですね」
「うむ、そしてだ」
そのうえでというのだ。
「広めることも許す」
「特にこの都に来ていますが」
「長安に」
「人が多く集まり」
「教えもですが」
「よい、謀反を企まないなら」
それならというのだ。
「それでよい、それで御仏の教えもな」
「認められ」
「そうしてですね」
「多くの魂を救われますね」
「そうもしよう、朕も多くの罪を犯してきたしな」
自省も込めて言う皇帝でした。
「その罪も償おう」
「そのお考えが大事です」
魏徴も言ってきました。
「まさに」
「そうであるな」
「罪を自覚せずとも善行を積めばいいですが」
「自覚して償うこともだな」
「よいです、むしろ万歳老が罪を自覚されるなら」
それならというのだ。
「そのことはです」
「よいことだな」
「万歳老にとっても天下万民にとっても」
「ではそちらも励もう」
「そうであってこそです」
魏徴はさらに言いました、穏やかですが極めて真面目なものがあり一本しっかりと芯が通った言葉でした。
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