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西遊記

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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその九

「只学識があり修業に励むだけではない」
「決して怒らず怒鳴らず」
「人に尊大でない」
「謙虚で礼儀正しい」
「しかも公平だ」
「疑うことも執念深くもない」
「非常に優れた人格だ」 
 そうだというのです。
「非のうちどころがない」
「強いて言うなら少し融通が利かないな」
「真面目過ぎて」
「堅物過ぎるところか」
「しかし僧籍にあるなら」
 それならというのです。
「別にいいな」
「堅物であっても」
「真面目過ぎても」
「融通が利かずとも」
「慈悲深く優しい」
「そうでもあるしな」 
 それならとです、玄奘についてお話するのでした。玄奘はその人格も皆から評価され素晴らしいと言われていました。
 ですがそれでもです、玄奘は謙虚に自分はそれ程ではないと答え人格も磨いていくのでした。そんな人ですので。
 皇帝もです、こう言いました。
「朝廷が開く天下の法要はな」
「誰にするか」
「もうお決めになられていますか」
「そうなのですか」
「魏徴も勧めたしな」
 その魏徴を見つつ廷臣達にお話します。
「陳玄奘にしようと思っておる」
「洪福寺のですね」
「若き高僧と呼ばれる」
「あの御仁にしますか」
「僧侶達の間でもだ」
 仏教のというのです。
「是非あの者にと言う位だ」
「誰もが」
「嫉妬なぞなく」
「そのうえで」
「むしろあの者以外いないとな」
 玄奘以外はというのです。
「言う位だ」
「あれだけの高僧はいない」
「それ故に」
「そう言うのですね」
「ならばだ」
 それならというのです。
「朕も他の者は考えられぬ」
「陳玄奘殿以外にはですね」
「考えられず」
「それで、ですね」
「あの者にする」
 絶対にというのです。
「それでいいな」
「はい、それでは」
「その様にしましょう」
「この度は」
「あの者にも伝えよう」
 こうして玄奘に唐の法要を命じることになりました、そして実際に玄奘に皇帝の使者が法要をする様に伝えました、するとです。
 玄奘は畏まってです、皇帝の使者に言いました。
「私なぞがしていいのか」
「いえいえ、万歳老も仰せです」
 使者も畏まって応えます。
「玄奘殿でなければとです」
「仰せなのですか」
「はい」
 そうだというのです。 
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