西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその八
「きっとな」
「よき方にですか」
「是非にと言われてな」
「婿に迎えられたのですか」
「若しくは嫁いできておった」
「そうでしたか」
「そしてその学識と志があるから」
それ故にというのです。
「天下に身を立てておる」
「拙僧は」
「うむ、それだけの人物だ」
「顔のことからも言われるとは」
「しかし実際によいからな」
お顔立ちも人相もというのです。
「だからじゃ」
「言われますか」
「そうじゃ、ではな」
ここで高僧は一旦お話を切って言いました。
「もう食事の時じゃ」
「では有り難く」
「いただこうぞ」
「それでは」
玄奘も頷いて食事となりました、お食事はお粥と少しのお野菜といったものですが玄奘は微笑んで食べて言います。
「結構ですね」
「その結構がな」
「凄いな」
「玄奘殿はいつもこうだ」
「どういったものも笑顔で食べる」
「不足は言わない」
周りの僧侶達は思って言いました。
「美味しいと言われる」
「この玄米と稗の粥にもな」
「文句を言われぬ」
「実に質素なものだが」
「それでもな」
「質素などとはとんでもない」
ですが玄奘はこう言います。
「全ては恵みで糧なのですから」
「だからですな」
「笑顔で食べられる」
「御仏そして人々からの頂きものなので」
「感謝する」
「それ故に美味しいのですな」
「まずいと思ったことはです」
食べてというのです。
「これまで決してです」
「なかった」
「そうですな」
「確かにその考えですと」
「全てが美味くなりますな」
「そうですな」
「全てが恵みです」
玄奘は笑ったままお話します。
「ですからそれで、です」
「これからもだな」
「玄奘殿はそうして頂かれるな」
「あらゆるものを」
「感謝して」
「そうしていきます」
こう言って誰が見ても粗食であるお寺のお食事を笑顔で食べるのでした、そしてその後で学問と修業に励みますが。
そのどれもです、非常に真面目に努力していてです。
「只でさえ才覚があるのに」
「あそこまで努力しているからな」
「尚更凄い」
「誰よりも努力している」
「玄奘殿は見事だ」
「しかもだ」
周りはここでも言うのでした。
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