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西遊記

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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその七

「しかしそこまでの勇はな」
「拙僧以外にはですか」
「ない、だからそなたが天竺に向かおうとも」
 それでもというのです。
「供をする者すらだ」
「いませんか」
「そうなるがよいのか」
「構いません」  
 現状の言葉はここでも変わりませんでした。
「そうなろうともです」
「そなた一人でもか」
「天竺に向かいます」
「そして多くの経典を持ち帰ってくるか」
「あちらで聞いた御仏の教えも伝えます」
 そうもするというのです。
「拙僧は」
「では何としてもか」
「お許しを得たいです」 
 唐を出て天竺に向かうそれをというのです。
「何としても」
「拙僧は頷けぬ」
 高僧は現状に難しいお顔で答えました、そしてそのうえで彼に対してこうしたことを言ったのでした。
「そなたを死にに行かせる様なものだ」
「天竺に行くことは」
「そうだ、だからな」
 それ故にというのです。
「拙僧としてはな」
「どうしてもですか」
「だが止めぬ」
 それはしないというのです。
「それはせぬ」
「拙僧がその為に動くことは」
「止めぬと言った」
 まさにというのです。
「そして若しだ」
「若しですか」
「朝廷がよしとされるなら」 
 それならというのです。
「行くがよい」
「それでは」
「しかしまことにか」
 高僧は玄奘に問いました。
「そなた一人でもか」
「行きます」
「供の者がおらずともか」
「そうします」
「そなたの意志、そして勇は凄いな」
 玄奘の見事なまでに整ったお顔を見て思うのでした。
「絶世の美女の様な顔をしつつ」
「拙僧の顔は」
「ただ顔が整っているだけではない」
 玄奘はというのです。
「その相もだ」
「よいですか」
「稀に見る貴相じゃ」 
 そうだというのです。
「ここまでの相はそうではない」
「そうなのですか」
「その勇も出ておる」
「だからですか」
「よい顔だ、だがおなごだったなら」
 玄奘がというのです。
「きっと良縁に恵まれたな」
「いや、それは」
「男でも出家しておらねば」
 良縁と言われ苦笑いになる玄奘にさらに言います。 
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