西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその四
「この度はな」
「それでは」
「そしてだ」
皇帝はさらに言いました。
「また一つな」
「徳を積まれますな」
「常に煬帝の様にならぬ様に気を付けているが」
それでもというのです。
「朕も多くの罪を犯してきた」
「その罪を思うと」
「そうしたことを多くすることもな」
「大事です」
「そうだな」
「その通りです」
魏徴はまさにと答えました。
「そのことは」
「罪を犯せばな」
「もっと言えば人はです」
魏徴は皇帝にこうもお話しました。
「生きていますと必ずです」
「罪を犯すか」
「そうしたものです」
「誰でもか」
「罪を犯さぬ者なぞです」
それこそというのです。
「一人もです」
「おらぬか」
「この世には」
「そういうものか」
「どういった聖人でも」
「罪を犯すか」
「人であるならば」
「時折自分は罪を犯したことがないと言う者がいるが」
「それはわかっていないのです」
魏徴は即座に答えました。
「自分が罪を犯したことが」
「自覚していないのだな」
「はい、それだけで」
「実はか」
「人であるのですから」
それ故にというのです。
「やはりです」
「罪を犯しているな」
「必ず」
「そういうものか」
「はい、そして」
魏徴はさらにお話しました。
「それで善人、聖人と思うなら」
「間違いか」
「いえ、そうとも言えません」
「違うのか」
「その者は自分の罪を自覚しないままです」
そのうえでというのです。
「生きていて自分を善人や聖人だと思っているので」
「そうであるからか」
「善行を行います」
「よい者と思うならな」
「善行を行いますね」
「そうなるな」
「ですから」
そうであるからだというのです。
「罪を自覚しておらぬ者も」
「善人、聖人であるか」
「左様です、しかし罪を自覚すれば」
「今の話では悪人になるな」
「そして自分の悪事を恥じ」
そうしてというのです。
「反省しそこからです」
「善行を積むか」
「そうしますので」
だからだというのです。
「これもまたです」
「善人、聖人か」
「左様です、しかしことの善悪がわからず」
そうであってとです、魏徴はここでお話を少し変えて皇帝にお話しました。神妙なお顔でそうしていきます。
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