西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその三
「あの独孤皇后ですら欺かれたのです」
「そしてあの皇帝も愚かではなかった」
「隋の文帝も」
「朕も気を付けねばだ」
「欺かれます」
「煬帝の様に邪な知恵に満ちた者もいる」
「お気を付けよ、そして」
魏徴はさらに言いました。
「皇帝の責務はです」
「何があっても離れぬ」
「またみだりに建築や戦もです」
「せぬ」
「その様に」
こうしたお話をしつつです、皇帝は政務に励みました、そして魏徴は皇帝に今度はこのことを言ったのでした。
「夢で友に言われました」
「あの判官にだな」
「はい、法要もです」
これもというのです。
「行うべきとです」
「あの者が言っておるか」
「はい」
そうだというのです。
「これが」
「そうなのだな」
「お布施だけでなく」
「法要もだな」
「亡くなった者達には必要です」
「それにより成仏してもらうな」
「左様です」
その通りだというのです。
「その為にも」
「うむ、そうだな」
皇帝は魏徴の言葉に頷きました。
「戦やあの変だけではない」
「非業の死を遂げた者は」
「ならばな」
「法要を行わせますね」
「そうする、天下の法要だ」
それになるというのです。
「まさにな」
「そうなりますと」
魏徴は天下の法要と聞いて言いました。
「それを行う僧侶もです」
「かなりの高僧でないとな」
「なりません」
「そうであるな。誰かいるか」
皇帝は魏徴に尋ねました。
「それで」
「天下の法要を行うとなりますと」
魏徴は考えるお顔になって答えました。
「陳玄奘殿でしょうか」
「洪福寺のか」
「はい、あの御仁です」
「何でもだ」
皇帝はこの僧侶について言いました。
「まだ若いが」
「それでもです」
「かなりの学識がありな」
「徳も備えました」
「見事な高僧だそうだな」
「はい」
まさにというのです。
「天下の高僧です」
「ではな」
「玄奘殿にですな」
「頼もう」
天下の法要をというのです。
「そしてだ」
「多くの魂を救われますか」
「成仏させよう」
そうしようというのです。
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