西遊記
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第十一回 皇帝玄奘を選ぶのことその二
「難事に至るとです」
「そのやるべきことを放り出して逃げた」
「それにより国は乱れ」
「隋は滅んだ」
「あの時煬帝が難事にあたればです」
皇帝の責務を果たしてというのです。
「叛乱も抑える様にしますと」
「隋は保たれていたな」
「そうでした」
「そうであるな」
「そもそも煬帝はその気質からです」
「皇帝になるべきではなかったな」
「はい」
そうだというのです。
「こう考えますと」
「全くだな」
「やはり隋は楊勇殿が皇帝になるべきでした」
「本来の太子のな」
「あの方ならです」
この人が皇帝になっていればというのです。
「もうです」
「あの様なことにはならなかった」
「確かに問題もありましたが」
「しかしだな」
「煬帝とは比べものになりませんでした」
「皇帝の責務をねげ出さなかったな」
「はい」
そうだったというのです。
「あの方なら」
「そうだったな」
「しかしです」
「煬帝は狡猾だった」
そうだったというのです。
「実にな」
「両親である皇帝、皇后をです」
「見事に欺いた」
「贅沢を好んでいましたが」
「質素である様に振る舞っていた」
「そしてご機嫌取りもです」
そちらもというのです。
「巧みでした」
「あの皇后は優れていた」
皇帝は真顔で述べました。
「独孤皇后はな」
「はい、非常に」
「しかしな」
「その独孤皇后ですらです」
「煬帝は欺いた」
「質素で善良である様に見せていた」
「逆に太子の悪評を捏造し流し」
そうしてというのです。
「貶め」
「両親に廃させた」
「そうでした」
「まことに巧みだった」
「そして太子となり」
「皇后が崩御すると本性を露わにした」
そうであったというのです。
「そして皇帝になるとな」
「あの有様です」
「人を欺くこともな」
「お気をつけ下さい。世にはあの様な者もいます」
「煬帝は人を欺いたな」
「煬帝のそのこともです」
人を欺くこともというのだ。
「お気を付け下さい」
「朕は欺かれてはならない」
「天下を泰平かつ豊かにされたいのなら」
そう願うならというのです。
「絶対にです」
「欺かれてはならない」
「左様です」
まさにというのです。
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