西遊記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第十回 皇帝冥府から戻るのことその十八
「よりよい神になりますね」
「あれっ、けれど」
三太子は釈尊の今のお言葉を聞いて首を傾げさせました。
「お釈迦様斉天大聖を懲らしめたじゃないですか」
「確かに」
釈尊は笑顔で認められました。
「そうしました」
「そうですよね、怒ったのになんですか」
「見どころがありますので」
だからだというのです。
「敢えてです」
「怒ったんですね」
「私は誰でもです」
「怒るんですか」
「いえ、怒るのではなく諭すのです」
そうではないというのだ。
「私は怒りの心は捨てています」
「いつも笑顔でおられて」
「笑顔でいられる心であります」
「だから怒らないんですか」
「左様です」
そうだというのです。
「決して」
「そうなんですね」
「それで彼にも怒ったのではなく咎めたのです」
「そうなるですだ」
「それであの様か罰としました」
「それも朕が頼んで出てもらってのこと」
帝も言われました。
「だからな」
「それで、ですか」
「釈尊があの者を叱ったことではないのだ」
「咎めるのとは違うんですね」
「そうだ、むしろ釈尊は慈悲深いであろう」
「はい、とても」
三太子は畏まって答えました。
「そうした方です」
「厳しいことはだ」
「されない方ですか」
「そうなのだ、そして大聖にもな」
彼にもというのです。
「あの様にされただけだ」
「五百年、僕達の感覚では五百日ですね」
「意志の中にいるだけだ」
「それだけですね」
「それも間もなく終わる」
「そこからのことがです」
釈尊は再び微笑んで言われました。
「実にです」
「楽しみなんですね」
「はい」
そうだというのです。
「これからどうなるか」
「いよいよ冒険ですが」
「その時が楽しみです」
釈尊は笑顔のまま言われました。
「実に」
「そうなのですね」
「今から」
こうしたことを言われるのでした、そしてです。
今は静かに待ちます、人界の賢人の行いも見つつ。
第十回 完
2025・4・23
ページ上へ戻る