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金木犀の許嫁

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第七十二話 また来る時までその十三

「行方不明になったともです」
「言われてるんですね」
「はっきりしないです」
「そうですか」
「その義子息を連れて逃げた」
「このことですね」
「どうしてご子息が木下家に入ったか」 
 幸雄はこのことについて話した。
「治房さんが連れて来たと思われます」
「入った経緯ははっきりしないんですね」
「そのことは伝わっていません」
「真田家にも」
「木下家に入られたことは事実でも」
「大坂夏の陣の終わりからそこまでの経緯はです」
 それはというのだ。
「どうもはっきりしないのです」
「では」
「よく治房さんが連れてきまして」
 木下家に秀頼の子をというのだ。
「そして託したと言われていますが」
「事実かどうかはですね」
「わかっていません」
 そうだというのだ。
「これが」
「助かったことは事実でも」
「そこはわかっていません、そして治房さんがどうなったか」
「わかっていないですか」
「そうです、秀頼公は薩摩に落ち延びられ」
「ご子息は木下家の分家になっても」
「しかしです」
 それでもというのだ。
「治房さんはわかっていません」
「あの、それは」 
 夜空はここである人物のことを思い出して話した。
「明石さんもですね」
「切支丹であった人ですね」
「あの人もわかっていないですね」
「大坂の陣の後行方不明です」
 夏の陣のというのだ。
「薩摩に落ち延びたともです」
「言われていないですか」
「あの戦いは行方不明になった人も多い様で」 
 大野治房やその彼の様にというのだ。
「それで、です」
「わかっていないですか」
「左様です」
「そうなんですね」
「薩摩に逃れたとも言われていますが」
 それでもというのだ。
「少なくとも真田家にはです」
「伝わっていませんか」
「はい」 
 そうだというのだ。
「これが」
「薩摩に逃れたなら」
 それならとだ、真昼は言った。
「真田家にもお話が伝わっていますね」
「そうとも限らないのです」
 幸雄はこう返した。
「逃れてもすぐに何処かに去れば」
「それではですか」
「伝わりませんし薩摩藩も人が多かったです
「武士で確か五万ですね」
「他の藩と比べて」
 薩摩藩はというのだ。
「武士が多かったです」
「それもかなりですね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「その中に入られますと」
「わからないですか」
「木の枝を隠すには何処がいいか」
「森っていいますね」
 真昼はすぐに答えた。
「そう言われていますね」
「そうです、事実真田家と十勇士それぞれのお家もです」
「大勢の武士の人達の中にあったので」
「隠れられた一面があります」
「薩摩藩の沢山の武士の人達の中に」
 佐京も言った。
「隠れられたかそこからすぐに何処かに行ったならわからないですね」
「そうです、また薩摩藩に逃れたのか」
「そのこともですね」
「わからないですし」
「あの人がどうなったか」
「全くわかっていません」
 そうだというのだ。
「これが」
「そうした人もいるんですね」
「そうです、世の中わからないこともあります」
「歴史においても」
「そうしたこともあります」
 こう話すのだった、一行は間もなく伊賀を後にしようとしていたがその中でこうした話もしたのだった。


第七十二話   完


                    2025・5・1 
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