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金木犀の許嫁

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第七十二話 また来る時までその十

「戦わずにことが済むなら」
「いいですね」
「ですから戦で滅ぼさず」 
 豊臣家をというのだ。
「秀頼さんが急死すれば」
「急死ですね」
「まことに当時小さなお子さんはすぐに亡くなりましたし」
 それこそ風邪や麻疹ですぐにだ。
「何とでもなります」
「刺客を送れば」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「秀頼さんしかいないので」
「豊臣家は」
「その秀頼さんがいなくなれば終わりですから」
「簡単に滅ぼせましたね」
「まことに」
 幸雄は確かな声で答えた。
「そうでした」
「そうだったんですね」
「ですが」
 それでもというのだ。
「家康さんはしませんでした」
「そうでしたね」
「むしろ何かあると」
 幕府と豊臣家の間にだ。
「融和策を出して」
「過激な動きを止めましたね」
「そうでした」
「それで何とかですね」
「豊臣家を大坂から出し」
 そうしてというのだ。
「あの場所とお城を手に入れて」
「幕府の統治を盤石にしたかったんですね」
「そうでした、あくまで大坂です」
 家康が欲しかったものはだ。
「土地でありです」
「豊臣家の存亡はですね」
「残ってもです」
「よかったんですね」
「はい、それで何故戦争になったか」
 大坂の陣にというのだ、言うまでもなく歴史において豊臣家が滅び幕府の統治が確かなものになった重要な戦いである。
「あれはどうしてもです」
「戦わないといけなかったからですね」
「幕府としては」
「鐘の文字ではなかったですね」 
 真昼が言ってきた。
「方広寺の」
「国家安康、君臣豊楽ですね」
「家康さんを切って呪っていて」
「豊臣が栄えるですね」
「豊臣が臣楽と逆さになって」
「あのお話はどうも後世の創作です」
 幸雄は話した。
「実際はです」
「なかったですね」
「家康さんの家康は諱で」
 そうであってというのだ。
「普段は用いられず」
「豊臣もですね」
「本姓であり」
「やっぱり普段は用いられないですね」
「ですからありません、おそらくです」
 幸雄はさらに話した。
「家康さんは自分の諱と豊臣家の本姓が入っていないか」
「そこを聞いただけですね」
「それは不都合なので」
 用いられるにはだ。 
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