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西遊記

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第十回 皇帝冥府から戻るのことその十二

「細君の後を追おうと子供さん達をご両親に預けたうえで」
「それはいかんな」
 皇帝はそのお話を聞いてすぐに言いました。
「悲しいのはわかるが」
「天寿を全うすべきですね」
「うむ、止めねばな」
「ですがその御仁も細君もまだ寿命でないので」
「死なぬか」
「丁度今冥界に向かっていますので」
 その劉全がというのです。
「私が手配をしてきて宜しいでしょうか」
「そうして朕に功徳を積ませてくれるか」
「なりませんか」
「いや、そう言うならな」
 それならとです、皇帝は魏徴に応えました。
「そなたに任せよう」
「では今晩です」
「夢の中でだな」
「崔鈺と会いまして」
「話をしてくれるか」
「その様に」
「では頼む」
 皇帝は魏徴に微笑んで命じました、そしてその夜魏徴は実際に義兄弟でもある判官と会ってそうしてでした。
 若いいい服を着た夫婦、劉全と奥さんそれに冥界に呼んだ相良長いひげを生やした恰幅のいい初老の人と会いまして。
 まずは相良にお話しました。
「そういうことでな」
「では建て替えておきます」
 相良は魏徴に笑顔で応えました。
「その様に」
「それではな」
「それで万歳老がですか」
「そなたが建て替えた分な」
「お金を渡してくれるのですね」
「そうなる、保証人は私とな」
「私です」
 判官も言ってきました。
「信じて下さるでしょうか」
「お二方なら」
 とても誠実なお二人ならとです、相良は笑顔で応えました。
「疑いませぬ。それに万歳老は名君です」
「約束は守られる方だ」
「そのこともご存知ですので」
「ではな」
「建て替えていきます」
「そして私がですね」
 今度は劉全が言ってきました。
「万歳老との戦でお亡くなりになった方々に」
「そのお金を渡してな」
「成仏出来る様にしますね」
「実は中には私によくしてくれた方もおられるのだ」
 魏徴は難しいお顔になってこうも言いました。
「今は万歳老にお仕えしているが」
「それでもですね」
「その方には苦しんで欲しくない」
 そう考えているというのです。
「縁者の方々にもな」
「それで、ですね」
「うむ、私からも頼む」
 こう劉全に言いました。
「この度は」
「それでは」
 劉全も頷きました、そしてです。
 彼は冥界で再会した奥さんと一緒に相良から多くのお金を受け取ったうえでかつて皇帝と戦った人達のところに赴き事情をお話してです。
 お金を渡しました、その人達は多かったですが相良のお金はかなり多くです。
 無事に支払われ皆成仏出来ました、魏徴はそのお話を劉全から聞いて笑顔で言いました。
「よかった、死んでも苦しむことはない」
「成仏すべきですね」
「戦で死ぬ者はな。悪人なら違うが」
 それでもというのです。 
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