西遊記
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第十回 皇帝冥府から戻るのことその十一
「とても」
「そうすることか」
「はい、そうされて下さい」
「そこまで言うならな」
皇帝はこう言って頷きました。
「今日はだ」
「休まれますか」
「うむ」
皇帝は頷きその日は休みました、ですが。
次の日は起き上がって朝議は明日からと医師に言われたことを守り魏徴だけを呼んでそのうえで政治のことをお話しましたが。
それが終わってからです、魏徴にこんなことを言われました。
「実は夜夢を見まして」
「今度はどうした夢だ」
「旧友に会いました」
「そうなのか」
「はい、崔鈺という者で」
魏徴はその名前も言いました。
「私の義兄弟でもありました」
「そなたの義兄弟なら相当な者だな」
「かつては先帝の下で礼部侍郎を務めていました」
「待て、それなら朕も会ったことがないか」
「あの頃万歳老は戦によく出られていまして」
それでというのです。
「彼とは然程です」
「会っておらぬか」
「何分先帝の頃なので」
「この前のことだがな」
「それでもです」
「縁がなかったか」
「実は今は冥界で判官をしておりまして」
魏徴はこのこともお話しました。
「夢の中でよく会っています」
「待て、朕は冥界の判官と会ったが」
皇帝は魏徴のお話にはっとなって言いました。
「まさにだ」
「はい、そう語っていました」
「朕に会ったとか」
「その様に」
「やはりそうか」
「それでその崔鈺の話ですが」
皇帝に畏まってお話しました。
「万歳老は多くの戦を経て来られました」
「そして多くの敵を倒してきた」
「他にも皇帝になられるまで」
「うむ、朕も罪深い」
皇帝は自分でこのことを言いました。
「実にな」
「ですから」
それでというのです。
「ここは万歳老が倒してきて今冥府にいる御仁達の魂を鎮める為に」
「動くことか」
「それでこれも崔鈺に話されたことですが」
そうであってというのです。
「開封に相良という者がいまして」
「あの街にか」
「かなりの財産があり人界の者ですが冥界とも縁が深く」
「そなたと崔鈺以外にもそうした者がおるか」
「はい、そして」
そうであってというのです。
「あちらにも財産があり」
「それでか」
「こちらに十三、あちらに十三それぞれです」
それだけの数のというのです。
「金庫を持っているとのことです」
「合わせて二十六か」
「左様です、その者にまず冥界の金庫を一つ開けてもらう」
「その分を朕が建て替えるか」
「はい、そしてそのことで冥界に行く使者ですが」
「朕でもそなたでもないな」
「我等はまだ死ぬ時ではないので。ですが均州の劉全という者が細君に事故で先立たれ」
そうなりというのです。
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