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西遊記

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第十回 皇帝冥府から戻るのことその十

「そなたに救われた」
「お戻りになれましたな」
「この通りな、礼を言うぞ」
「勿体ないお言葉」
「うむ、そなた達もいるな」
 身れば二人の逞しい武人もいます、尉遅敬徳と秦淑宝です。尉遅の髭は濃く秦はお髭がありません。二人共とても大柄で筋骨隆々としています。
「朕を待っていてくれたか」
「はい、万歳老のご帰還をです」
「待たせてもらっていました」
 そうであるとです、二人は答えました。
「ご無事で何よりです」
「よく戻られました」
「この通りな。しかし今思ったが」
 皇帝は二人を見て思って言いました。
「そなた達は強いな」
「そのお言葉光栄です」
「実に」
「そのそなた達の姿を描けば」
 そうすればというのです。
「魔除けにもなるな」
「悪い鬼や妖怪を退ける」
「それになりますか」
「そなた達の強さは比類ない」
 そこまでの武勇だというのです。
「だからな」
「我等の姿を描き」
「それを魔除けにしますか」
「朕だけでなく天下にだ」
 まさに天下万民がです。
「それで悪い鬼や妖怪に困らぬ様にしよう」
「悪しき鬼や妖怪も馬鹿に出来ません」 
 魏徴も言ってきました。
「呪いを用いれば」
「天下も乱すしな」
「隋を見ましても」
「うむ、猫鬼を使った呪いだな」
「独狐陀を見ますと」
「あれは朕も知っているが」
 このお話はというのです。
「まさにだ」
「天下の大事でした」
「ああした災厄からも民が逃れられる様にな」
「お二方を描いてらい」
「そしてな」
 そのうえでというのです。
「悪い鬼や妖怪を退けよう」
「ではその様に」
「是非な」
 皇帝は微笑んで言いました。
「天下はそこからもだ」
「泰平にしますな」
「うむ、冥界に赴きな」
 そうしてというのです。
「そこで鬼達を見てだ」
「思い至ったことですか」
「今のことはな、そう思うとな」
 皇帝はベッドから上体を起こして笑顔で言いました。
「冥界に行って無駄ではなかった」
「確かに。では今は休まれますか」
「休んだ方がいいか」
「今蘇られたばかりですから」
 魏徴はそれでと応えました。
「やはり」
「休むことか」
「そして元気になられれば」
「もう英気に満ちておるが」
「いえ、油断はなりません」
 魏徴はベッドから出ようとする皇帝をぴしゃりと止めました。
「流石に今はです」
「蘇ったばかりでか」
「大事を取られ」
「元気になってからか」
「明日以降医師がよしと言わねば」
 そうでなければというのです。 
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