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西遊記

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第十回 皇帝冥府から戻るのことその九

「これはまさに神仏の領域です」
「死相というものがあるが」
「それが見える人もいますが」
「はっきりとはだな」
「人にはわかりません」 
 そうだというのです。
「これが」
「そういうものだな」
「はい、そして」 
 判官はさらにお話しました。
「貴方様の寿命は延びましたが」
「それでも何時かは死ぬな」
「絶対にです」
 そうなるというのです。
「そうなります、ですからまた」
「こちらに参上するな」
「そうなります」
「ではまた会おう」
 皇帝はそれならとです、笑顔で応えました。
「それまでに朕はだ」
「唐の皇帝としてですね」
「己の責務に励む」
「そして唐を平和で豊かにされますか」
「万民達がそうなる様にな」
「これまであちらは大いに乱れていました」
「うむ、漢が衰え」
 皇帝は唐の前のことからお話しました。
「三国に分かれな」
「一旦一つになりましたが」
「晋によってな、しかしな」
 それでもというのです。
「この国の天子は随分出来の悪い者ばかりでな」
「皇室についても」
「互いに殺し合い遊び惚けな」
「国を乱し」
「北の者達に攻められ国を滅ぼしてだ」
「戦乱を起こしました」
「その戦乱が長く続いた」
 そうであったというのです。
「そうなり隋が統一するまでな」
「戦乱が絶えず」
「おかしな者も多く出てな」
 そうもなってというのだ。
「民達は大いに苦しんだ」
「長きに渡って」
「そして隋が一つにしても」
 この王朝がというのです。
「またすぐにだ」
「乱れてしまいました」
「煬帝によってな、朕は煬帝の様にはならず」  
 皇帝はお顔を引き締めさせて言いました。
「無論晋の皇帝や皇室の者達にもならず」
「その後の長い戦乱で出たおかしな者達にもですね」
「ならずな」
 むしろ彼等を反面教師としてです、皇帝は心の中で強くそう思いつつそのうえで判官に対して話すのでした。
「そしてだ」
「そのうえで」
「唐を治めてな」
「天下泰平が長く続く様にですね」
「治めていく」
「そのお務め是非です」
 判官は皇帝に畏まって応えました。
「果たされて下さい」
「その様にする、ではな」
「はい、人界にお戻り下さい」
 判官がにこりと笑って言うとです。
 皇帝は目を覚ましました、そして枕元に立っていた魏徴に言いました。 
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