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西遊記

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第十回 皇帝冥府から戻るのことその七

「そのうえで、です」
「お話をしてだな」
「そして」
「蘇らせてもらうか」
「そうしましょう」
「うむ、しかしな」
 ここで皇帝はこうも言いました。
「まさかな」
「十王にお会いするとはですか」
「朕は多くの戦の場を経てきた」
「生き死にをですね」
「数多く見て来たが」
 それでもというのです。
「しかしな」
「冥界に来られて」
「そしてだ」
「十王にお会いするとは」
「思わなかった」 
 そうだったというのです。
「一度もな。来るとなれば」
「本当にですね」
「死んだ時でな」
「蘇るとはですね」
「思わなかった、しかしな」
「それでもですね」
「これも運命か」
 こうも言うのでした。
「朕の」
「左様ですね」
 判官も確かにと頷きました。
「貴方様の」
「そうだな、ではその運命に従いな」
「これよりですね」
「お会いしよう」
「それでは」
 こうお話してです、皇帝は判官に案内されてそのうえで冥府の十王の御前に行きました、するとそれぞれの色の官服を着た十王達がです。
 揃っていてです、横一列に卓に座ってお話しました。
「さて、唐の皇帝か」
「もう寿命の予定だったが」
「それが変わった」
「万歳老のお考えもありな」
「まだあの国には必要だ」
「唐の泰平の為に」
「そうだしな」 
 こうお話するのでした。
「ではな」
「ここはだ」
「我等に異存はない」
「既に寿命は延びている」
「だからな」
「ここは認めよう」
「我等もな」
 こうお話してです、皇帝に言いました。
「人界に戻るのだ」
「書場も受け取った」
「また来るがよい」
「だが今は戻れ」
「そして務めを果たすのだ」
「皇帝としてのそれをな」
「有り難くお言葉。しかし」 
 皇帝は十王に礼を述べつつ言いました。
「また急に死んだな」
「はい、人はです」
 判官が言ってきました。
「自分が知らぬ間にです」
「寿命が尽きるか」
「はい」
 まさにというのです。
「そうしたもので」
「それで朕もか」
「ご自身が知らない間に」
「寿命が尽きておったか」
「左様でした」
「一瞬前まで元気だったが」
「囲碁を打っておられましたね」
「うむ」
 その通りだと頷きました。 
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