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金木犀の許嫁

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第七十二話 また来る時までその八

「これが」
「だから滅ぼすつもりなら」
「とっくにしていました」
 大坂の陣の前にというのだ。
「江戸や駿府に移りましても」
「暗殺は出来ましたか」
「ずっといて隅から隅まで知っているお城の中にいましたから」
 秀頼はというのだ。
「本当に一服盛ることなぞ」
「簡単でしたね」
「おそらく密偵もです」
 大坂城に潜り込ませただ。
「いたでしょうし」
「そういえば」
 真昼が言ってきた。
「片桐且元さんは」
「豊臣家の家老であった」
「あの人は実は」
「そうした説がありますね」
 幸雄も応えた。
「そうですね」
「本当でしょうか」
「怪しかったと思います」
 幸雄も否定しなかった。
「情報を幕府に渡し」
「不穏な動きがないか」
「幕府に知らせたと思います」
「そうでしたか」
「淀殿がです」
 秀頼の母である彼女がというのだ。
「問題で」
「ヒス持ちだったんですよね」
「感情的でしかも気位が高く」
 秀頼の母であるという自負心が強くだ。
「そして政治については全く駄目でした」
「そんな人だったので」
「ですから何をするかわからないので」
 幕府も危惧してというのだ。
「それで、です」
「片桐さんを送って」
「密かに目付にしまして」
 そうしてというのだ。
「そのうえで、です」
「連絡も取っていましたか」
「その可能性が高いです」
 片桐且元の場合はというのだ。
「忠義の人だったという一面があろうとも」
「幕府との連絡役でもあった」
「実際幕府がつけさせた人でしたし」
 豊臣家にだ。
「元々豊臣家の家臣でしたが」
「確か」
 佐京も片桐且元について話した。
「あの人も賤ケ岳で」
「七本槍のお一人でした」
「そうでしたね」
「福島正則さんや加藤清正さんと並んで」
「あの戦いで活躍した」
「豊臣家の人でした」 
 この家の家臣だったというのだ。
「あの人は」
「そうでしたね」
「ですが」
 それでもというのだ。
「豊臣家は淀殿がおられて」
「その人が問題で」
「実際何もわかっていなかったのですから」
 政治のことがだ、また大坂冬の陣でも籠城策を押し通しその後砲撃に恐れを無し迂闊な講和に至ってもいることから軍事のことにも疎かったことは間違いない。
「それではです」
「目付の人も必要でしたね」
「お江さんは何としてもです」
 二代将軍徳川秀忠の正室であり淀殿の末の妹だった。 
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