西遊記
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第九回 易者龍王を占うのことその八
「その魏徴殿ならです」
「必ずや万歳老に口添えしてくれますね」
「この度の龍王様の行いについて」
「そうして下さいますね」
「左様、万歳老の叱責も怖いが」
龍王は自分の玉座でこうも言いました。
「一番怖いのはな」
「北海龍王様ですね」
「龍王様の直接の主であられる」
「あの方ですね」
「実はな」
「あの方がですね」
「四海龍王の中で最も穏やかな方であられるが」
そうであるがというのです。
「実はお怒りになられるとな」
「その時はですか」
「最も怖いのですか」
「あの方が」
「うむ」
そうだというのです。
「だからな」
「直接命じられたのはあの方ですし」
「あの方のご命令に逆らってとなりますと」
「やはり怒られますね」
「左様ですね」
「万歳老がお叱りになられれば」
そうなると、というのです。
「必然的にな」
「北海龍王様もとなりますね」
「あの方も」
「そうなりますので」
「ここはですね」
「動いてよかった、ではだ」
龍王は微笑んで言いました。
「これでな」
「はい、夜ですし」
「あらためてですね」
「お休みになられますね」
「そうするとしよう」
こう言ってでした。
龍王は床に入りました、この時彼はこれで終わりだと思っていました。ですが長安に向かう観世音菩薩はふとお空を見上げて言いました。
「天帝がお怒りですね」
「はい、どうやら」
供にいる二太子もお空を見上げて言います。
「その様ですね」
「これはどなたかがです」
「不始末をして」
「叱責を受けますね」
「そうなりますね」
「さて、誰が何をしたか」
菩薩はお空を見上げたまま言いました。
「一体」
「わからないですね」
「はい、ですが」
それでもというのです。
「今の私達はです」
「関わりのないことですね」
「叱られる神には気の毒ですが」
「菩薩様がとりなしはですね」
「出来ません、若しその場にいれば」
その時はといいますと。
「どなたでもです」
「とりなしをされますね」
「それが仏の道であり」
そうでありというのです。
「慈悲なので」
「だからですね」
「そうしますが」
「菩薩様は御仏の中でも釈尊と並ぶ慈悲の持ち主であられるので」
「いやいや、とんでもない」
菩薩は二太子の今の言葉は否定しました。
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