西遊記
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第九回 易者龍王を占うのことその五
「きっとです」
「万歳老にもですか」
「取り直して下さいます」
「わかりました」
ここで龍王はその万歳老が天帝と勘違いしていました、尚易者は人なので地上の皇帝だと思っています。
ですが二人共気付かないままです、二人は別れることになりまして。
龍王はこの時です、こんなことを言いました。
「おかしなことはしないことですな」
「叱られることになるので」
「はい、やはりしっかりとです」
その様にというのだ。
「仕事をすべきですね」
「その通りです、仕事はです」
易者も確かにと頷きます。
「真面目にです」
「すべきですな」
「真面目が一番です、貴方も及第されたら」
書生が実は龍王と知らず言います。
「真面目にです」
「働くことですな」
「そうすればです」
「叱られずむしろ」
「万歳老にも認められ」
そうしてというのです。
「身を立てられます」
「そうですな、では」
「はい、それでは」
これでお別れしました、そしてです。
龍王はすぐに魏徴が長安の何処にいるか調べて夜に彼が寝ている時に夢の中に素性を出して言いました。
「魏徴殿か」
「はい」
お髭がなく細面のお年寄りです、その目はしっかりとしています。
「私が魏徴ですが貴方は」
「私は杷河の龍王ですが」
「何と、龍王様ですか」
魏徴はそう言われ夢の中で驚きました。
「それはまた」
「いやいや、恐縮なさらずに」
「恐縮しない筈がありません」
魏徴は恭しく応えました。
「龍王様ですから」
「だからですか」
「どうしてです」
それこそというのです。
「礼節を守らなくては」
「噂は聞いていますが」
龍王は魏徴を調べるうちに聞いたことをお話しました。
「噂に違わぬ礼儀正しい賢人ですな」
「勿体ないお言葉」
「そのお言葉にも表れています」
魏徴の人となりがというのです。
「全く以て」
「そうなのですか」
「私も神の端くれなのでわかります」
こう言うのでした。
「そのことは」
「そうですか」
「その魏徴殿にお願いがあります」
龍王はあらためてお話しました。
「まずはこれを」
「いやいや、とんでもない」
龍王が多くの銀や金、宝玉を出すと魏徴は右手を前に出して首を左右に振ってそのうえで龍王に言いました。
「私は唐朝より充分以上の禄を頂いています」
「だからですか」
「そうしたものはです」
「受け取りませんか」
「誰からも」
「ううむ、精錬とは聞いていましたが」
龍王はまた魏徴の人となりに頷きました。
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