西遊記
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第九回 易者龍王を占うのことその三
「流石に幾ら漁をしても魚は減らぬがな」
「木もです」
「確かに長安の周りの木は少ないですが」
「それでもです」
「なくなることはありません」
「しかし多く取られ過ぎるのはな」
それはというのです。
「思わしくないな」
「全くです」
「こちらも魚を多く出さねばなりません」
「毎日大漁ではです」
「そして木の方も」
「林や山の神が困る」
そうなるというのです。
「だからな」
「どうにもですね」
「あの易者の占いは嫌ですね」
「我等にとっては」
「あの易者気に入らぬ」
龍王は苦い顔で言いました。
「丁度北海龍王様からそろそろ雨を降らす様に言われているが」
「あの方からですね」
「四海龍王の一柱の」
「あの方から」
「その仕事をするか、しかしその前にな」
易者のことを言うのでした。
「一つわしも占いを受け」
「そうしてですか」
「そこで、ですか」
「あの者に恥をかかせますか」
「そうしようぞ」
こう言ってでした。
龍王は書生、科挙を受けるその者に化けてです。そうしてでした。
長安に入りそのうえで易者のところに行きました、そのうえで易者に言い枚s多。
「一つ占ってもらいたいのですが」
「何についてでしょうか」
「はい、何時雨が降り」
そしてとです、書生に化けた龍王は易者に言いました。
「どれ位降るか」
「そのことですか」
「知りたいのですが」
「降るのはです」
すぐにです、易者は答えました。そして量はといいますと。
「大雨になります」
「大雨ですね」
「はい」
そうだというのです。
「それだけです」
「そうなのですね」
「間違いありません」
「そうですか、では当たりましたら」
龍王は笑って言いました。
「五十両払います」
「五十両ですか」
「銀で」
「それは大きいですね」
易者もその額には喜んで応えます。
「暫くの間暮らしに困りません」
「ですが外れますと」
龍王はこうも言いました。
「貴方の名は落ちますな」
「私の占いも外れる時があると」
「そうなるので」
「そうなります、如何でしょうか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「外れた時は宜しくです」
「はい、その時は五十両はいりません」
易者ははっきりと答えました。
「そういうことで」
「では」
「雨が降った後でまた来て下さい」
龍王に微笑んで言います、そしてです。
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