ああっ女神さまっ 森里愛鈴
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8 天上界 女神として 母として
他力本願寺の母屋を掃除していたベルダンディーは、動きをふと止めた。
「愛鈴…」
娘が法術を使ったのが感じられたのだ。
玄関の電話が鳴っている。
「はい森里です」
『こちらは「天上界最高特別査問委員会です。森里愛鈴について参考人としてあなたの出頭を命じます』
「──了解しました。直ちに戻ります」
受話器をおいた背後から、ウルドが声をかけた。
「こっちは螢一に任せなさい。大丈夫、何があっても私達はあんたの味方だよ」
「ありがとうございます」
いつもの微笑が浮かんでいた。
鏡を使って天上界へ。
天上界最高特別査問委員会
白銀の光が満ちる円形の大広間。天上界でも限られた存在しか立ち入ることを許されぬ、「審問の間」
そこには、三柱の審問官――時を司る老神ライアル、秩序の女神クラリエル、そして因果を見守る少年神アレク――が円卓を囲んでいた。
中央には、静かに立つベルダンディー。
その表情は穏やかだが、瞳の奥に宿る光は、どこか張り詰めている。
少年神アレクが口を開いた。
「第一級神二種族非限定女神ベルダンディー。審問の名の前に、まず確認したいのは、二つ。森里愛鈴は君の娘だね。そして愛鈴は気の血を引いて法術が使える。間違いないかな」
「間違いありません。あの子は私の娘です」
次に声を発したのは、秩序の女神――「クラリエル」
彼女は淡々とした声で告げる。
「森里愛鈴、まだ未認可の状態にありながら、高位法術を発動した事実が確認されている。 対象は、現世で起きた人命の危機。だが、いかなる正義の名の下でも、それは「規律違反」に変わりない」
続けて、少年神――アレクが視線を逸らすように口を開いた。
「……ユリという人間の少女を救うために、封印を外し回復術式と魂の拡散防止術式を同時に用いた。」
老神クラリエル。
「友の命を助ける。たしかに美しい行為だ。だが「規律違反」には違いない。だが、女神としての登録前から無断での「法力使用」これは本来ならば天界への帰還命令、そして場合なら神力の永久封印となる事案だ」
クラリエル。
「ベルダンディー。貴方は女神として母として愛鈴の力に封印をしたと聞く。だが彼女はそれを解除までして力を振るった。この事態をどう考える」
ベルダンディーの微笑
「女神としては褒めれたものではありませんが、母親としては「よくやりました」と褒めたいです。──ですが、もう少し法力の使い方を勉強すべきかと。愛鈴はまだ若く、未熟な娘です。ですが彼女は、誰よりも深く“責任”というものを知っております。わたしが導きます。母として、そして、彼女の神として――」
しばしの沈黙。
時を司る老神ライアル。
「君の自宅には特殊な亜空間と接続しているようだが。そこと天界でなら法術の使用を認めよう」
秩序の女神クラリエル。
「ただし、地上界で法術を再び使った場合、再びこの委員会は開かれる」
因果を見守る少年神アレク。
「森里愛鈴は女神として輝くものを持っている」
時を司る老神ライアル。
「君は森里愛鈴を教え導くものとして、女神として、母として間違いがないように指導してくれ」
「勿論です」
次の瞬間、審問の間の天井から光が差し込み、白羽のような煌きがベルダンディーの肩へ降りた。
それは、女神の誓いを、天が一時的に受理したしるし。
クラリエルが重々しく口を開いた。
「最後に一つベルダンディー、君に質問をしたい」
「はい」
「もしも愛鈴が道を外し天界人界魔界に弓を引く存在となったら君はどうする?」
ベルダンディーの迷いない瞳。
「その時は、私が処分します。それは、私の教えと導きが愛鈴に届かなかったから。愛鈴の責任ではありません」
しばらく誰も口を開かった。
クラリエル。
「貴方の女神としての覚悟と母としての愛に祝福を──これにて当委員会の閉幕を宣言する」
病室で愛鈴と螢一が語り合っている。
ドアを開いてベルダンディーが入ってきた。
「愛鈴、よかった。目を覚ましてたのね」
「お母さま」
螢一が、上を指差して。
「あっちのほうはどうなったの?」
「問題ありません、詳しくは今晩にでも」
甘える愛鈴の手を取りながらベルダンディーは微笑んだ。
後書き
ちょっと重くてごめん 次からは明るくなりなす 多分
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