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西遊記

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第八回 観世音菩薩それぞれの者と会うのことその十

「それこそです」
「あっという間ですね」
「永遠の時を生きているので」
「神仏は」
「神界の五百日もです」
「あっという間のことですね」
「それこそ一瞬のこと」
 菩薩は微笑んで言いました。
「そう考えると大聖が受けた罰は」
「ほんの叱り程度ですね」
「それ位のものです」
「そうなのですね」
「はい、そして」
 菩薩はさらに言いました。
「これよりです」
「その五百年の務めを終えようとする斉天大聖のところに行き」
「お話しましょう」
「わかりました」
 二太子も頷きました、そしてです。
 山に入るとです、そこにでした。
 封じられている悟空がいました、この時彼はどうしていたかといいますと。
 寝ていました、まるでこの世全体に轟かせる様ないびきをかいています。二太子はその大いびきを前にして言いました。
「気持ちよさそうに寝ていますね」
「はい、流石ですね」
 菩薩もその悟空を見つつ笑顔で言いました。
「封じられていてです」
「ここまで眠れるとは」
「大物です」
「伊達に神界で大暴れした訳ではないですね」
「はい、しかし」
 それでもと言う菩薩です。
「彼は邪な心があるか」
「ないですね」
「左様ですね」
「確かに暴れましたが」
 それでもというのです。
「別に神界を我がものにしようなぞととは」
「思わなかったですね」
「全く」
 そうだというのです。
「これが」
「邪な心がなく」 
 それでというのです。
「野心もです」
「ないですね」
「そうしたものは一切なく」
「ただのやんちゃ者ですね」
「そうです、根はいいのです」
 悟空はというのです。
「気風も面倒見もよく器が大きく」
「思いやりもありますね」
「義侠心も備え」
 そうであってというのです。
「よい者です」
「そうなのですね」
「ですから」
 そうした者だからだというのです。
「裁きもです」
「これで終わりますね」
「左様です、では今から起こしますね」
「わかりました」
 二太子も頷きました、そして菩薩は悟空に声をかけました。
「斉天大聖、起きて下さい」
「その声は」
 悟空は言われてその声に応えました。
「観世音菩薩様ですか」
「はい、私です」
 目を覚ました悟空に微笑んで答えました。
「もうです」
「ああ、五百年経ちましたか」
「左様です」
「あっという間でしたね」
 悟空は石箱から顔だけ出しています、そのうえで言うのでした。 
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