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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第156話 若手悪魔たちの試練!イッセーの課題をクリアせよ!

 
前書き
今回タイトルを変えました。キャラが多くて話が沢山あったので……申し訳ありません。 

 
side:ソーナ


 イッセー君に修行を付けてもらう事になって2日目、私は自分が如何に甘い考えだったのかを思い知らされたわ。


 それはイッセー君の事よ、初日はマルヤキブタとの戦闘後は軽い手合わせで食べてばかりで修行には思えなかった。


 でもそれは私達がどのくらいまでなら耐えられるのか確かめていただけだったの、何故なら次の日からの修行は一切の容赦がなかったからよ。


「きゃあっ!結界が!?」
「き、木場君に匹敵する速さじゃない!私じゃ追いつけないよ!」
「パワーは戦車以上!打撃も斬撃も通じない!?」
「ラ、ラインを掴まれて……ぶへぇっ!?」
「鏡だけ器用に避けられて反撃されたわ……完璧なタイミングだったのにどうして?」


 私達ソーナ眷属はイッセー君と組み手をしていたんだけど、初日の優しさはなく全員が投げ飛ばされて地面に何度も叩きつけられた。


 眷属達の弱点や足りない部分を完全に見切られていて私も何度も地面にキスをしたわ、でも決して眼鏡は割れなかった。


 そして傷ついた体をアーシアさんに回復してもらい次の修行……正直最初はイッセー君はドSなんじゃないかと思ってしまった。


「ぐううっ!?我が愛馬ごと持ち上げるとは!?」
「軽いな、馬もお前ももっと食って力付けろ」


 今イッセー君はサイラオーグの騎士であるフールカスと手合わせをしているわ、彼の光速の槍さばきを完全に受け流して懐に入って馬ごと片手で持ち上げた。


「お前は図体はデカいんだからもっと足元を注意しろ!じゃないとこんな風に反撃を受けるぞ!」
「ガアアッ!?」


 サイラオーグの戦車であるバラム、彼の巨大な腕の一撃を軽く受け止めて足払いをして、更に顔にパンチを打ち込んで地面にめり込ませる。


「ほらほら!魔法と剣技のコンビネーションをもっと意識しろ!一瞬でも気を抜けばその隙を突かれるぞ!」
「いくらなんでも理不尽すぎるだろう!?どうして生身で増加した重力を受けてなんともないんだ!?」
「この程度ならヘビーホールの最初の層あたりの重力だな、余裕で動けるぞ」


 サイラオーグのもう一人の騎士であるクロセル、彼は魔法剣士であり巧みな剣術と様々な魔法で相手を責めるスタイルなのだけど、イッセー君は素手で氷や炎をかき消して神器『魔眼の生む枷』によって増加した重力を受けても何の影響も受けていなかったわ。


「ドラゴンの力を完全には使えていないな。よし、遠慮なく攻撃を打ち込んでこい!自分の全力が分かれば力のコントロールを掴むきっかけになるはずだ!」
「な、なぜマトモに攻撃を受けて傷一つついていないんだ!?いくら赤龍帝だとしてもおかしいだろう!?」
『その程度の攻撃で俺達を傷つけられると思っているのか、小僧?』


 サイラオーグの戦車であるブネ、彼は悪魔でありながらドラゴンの力を司る一族でありその中でも限られた者だけが竜の姿に変化できる能力を持っていると言われていた。


 でも実際にその力を見たのは生まれて初めて、今まで全く情報の無い展開に私達は驚いていたわ。


 そしてそれ以上に驚いたのは巨大なドラゴンになったブネの攻撃を軽くいなすイッセー君だ。なにせ赤龍帝の籠手すら使っていないのよ。


 驚くブネにイッセー君から別の声が聞こえた、あれは赤龍帝ドライグの声?その声を聴いたブネは冷や汗を流す。


「おらぁッ!!」
「がはぁッ!?」


 お腹に拳を打ち込まれたブネが痙攣しながら倒れていったわ。


「動きが硬いぞ!個人の服装をどうこう言う気は無いがスーツはどうなんだ?似合ってるけど」
「このスーツは特注品よ、そこらの戦闘服より機敏に動けるわ!貴方が早すぎるのよ!」


 サイラオーグの僧侶のコリアナ・アンドレアルフスがイッセー君に向かって投げ槍のような氷の魔力をいくつも放つ。


 しかしあっという間に接近されたイッセー君に抑え込まれてしまったわ。


「そらよ」
「きゃあッ!?」


 そして背中から地面に叩きつけられたわ。


「いった~っ……もう、女性には優しくしなさいよね」
「修行にそんな事は関係ない、それとも色目使って手加減するような男が好みか?」
「いいえ、そんな男はまっぴらごめんよ」


 イッセー君はコリアナに手を差し出して彼女を起こした。


「魔術師の弱点は総じて身体能力の低さだ、最悪相手から逃げられるくらいの体力と身のこなしを付けてもらうからな」
「能力を封じ込めたのにどうして……ガハッ!?」
「動揺する暇があったら直に頭の中を切り替えて対策を考えろ!魔法使いは常にクールであれってどっかの漫画に描いてあったぞ!」


 サイラオーグのもう一人の僧侶、サブナック。彼は相手の能力を封じ込める神器『異能の棺』を使い赤龍帝の能力を封じ込めた。


 でもイッセー君は最初から赤龍帝の籠手を使っていなかったので、なんなく地面に叩きつけられたわ。


「面白い術だが少し過信があるな、破られた時の事も考えておくんだ!」
「ど、どうして素手で『穴』を破壊できるの!?サイラオーグ様でも不可能な事をこうも簡単にするとは……!?」
「直感だ!」
「意味が分からないわ!?」


 サイラオーグの女王であるアバドンが自身の能力である『穴』を破壊されて驚いていた、この穴は異界に繋がっていて何でも吸い込んでしまうと聞いていたけど普通にイッセー君に破壊されていた。


「ぐうっ!?こんな重い打撃は生まれて初めてだ……!がはっ!?」
「サイラオーグ!お前は今まで自分と互角に殴り合える存在がいなかった!だから攻められると対処が遅れてしまう!考えるな、感じろ!己の直感を信じるんだ!」
「あのサイラオーグがタコ殴りにされてるぞ……」
「信じられませんわね……」


 サイラオーグはイッセー君に一方的に攻められてボコボコに殴られていた、それを見ていたゼファードルとシーグヴァイラが青冷めた顔で見ていたわ。


「サイラオーグ様!どうか私をお使いください!この男はあまりにも強すぎる!」
「しかし……」
「切り札なんだろう?使っていいぞ、お前の本気を一回見てみたいからな」
「……分かった、ならば遠慮なく使わせてもらおう」


 サイラオーグは生きた神器のレグルスと合体して黄金の鎧を身にまとったわ。


「喰らえ!フラッシュ・ピストン・マッハ・パンチ!!」


 そして一瞬で数十発のパンチを放ったわ、まるで拳の壁ね。


「アイスピックフォーク!おらおらおらおらっ!」


 イッセー君は指を1本立てて突きを連続で放った、そしてイッセー君に当たる前に拳の壁が全て止まってしまったの。


「俺の拳を全て止められた!?」
「次は俺の番だ!5連釘パンチ!」
「ごはぁぁぁぁっ!?」


 全てのパンチを止めたイッセー君はサイラオーグのお腹に打撃を打ち込んだ、するとサイラオーグの体が浮かび上がり空中を跳ねまわって地面に叩きつけられたわ。


「ぐぅ……凄まじい威力だ……がはっ!」
「アーシア、回復してやってくれ」
「はい、分かりました」


 アーシアさんがサイラオーグの元に向かい彼を回復していく、もう何回も皆を回復させているのに彼女は疲労すら感じさせないわ。見た目に反して凄い体力なのね。


「よし、次はゼファードルとシーグヴァイラだな。眷属もまとめて全員でかかってこい!」
「うえっ!?俺達ィ!?」
「あ、あの……私は辞退したいと思って」
「俺に指一つでも触れれたらIGOが所有しているGTロボの製造工場を見学させてやるぞ」
「何をしているのですか、ゼファードル!行きますわよ!」
「ひえぇぇぇぇっ!?」


 ノリ気ではなかったシーグヴァイラがその一言でゼファードルを引っ張って行ってしまった。そして案の定彼らは眷属も含めて全員が地面に叩きつけられていたわ。


「ライザー!お前は不死身の再生力に頼り過ぎだ!この世界じゃ一瞬で殺されてしまう事も珍しくない!もっと回避を意識しろ!」
「ぶへぇぇぇっ!?」


 イッセー君のパンチを受けてライザーが白目をむいて泡を吹いていたわ。炎を出して反撃しようとしてるけどイッセー君はビクともしない。


「いった~い……あの人鬼だよ……」
「体がボロボロ~……」
「私達、一体何回地面とキスしたかしら?」
「10回目から数えていない……」


 ライザーの眷属達もボロボロになって地面に倒れていたわ。双子の少女イルとネルは地面に倒れて雪蘭は疲労した様子で何回地面に叩きつけられたかをミラに聞くが、彼女も遠い目をして数えていないと答えた。


「うっ……うぅ……痛いですわ……」
「レイヴェル様、やはり貴方は見学をしていた方が……」
「こんな風に痛めつけられるなんて事は初めての体験ですわ、でも何故かちょっと良いと思ってしまう自分がいますの……あんなに優しくて強い人が戦いでは容赦なく痛めつけてくる……ポッ♡」
「えぇ……」


 令嬢である令レイヴェルさんも容赦なく地面に叩きつけられていた、心配した眷属の一人であるイザベラさんが声をかけるが何故か喜んでいた彼女を見て少し引いていたわ。


「皆やってるわね、昔私達もあんな風に何回も叩きつけられたわよね」
「しかもあの時は不意打ちやら奇襲なら当たり前にされたんですよね、嫌でも警戒心が強くなってしまいますよ」
「男性に容赦なく地面に叩きつけられるなんて体験はあの時が初めてでしたわ、普通なら怖くなってしまうのですけど、下心無く真剣に戦ってくれるイッセー君はかっこよかったです♡」


 リアス、木場君、姫島さんが思い出話をしていた、今は真正面から相手してくれているけどリアス達の時は不意打ちや奇襲もしてきたのね。


 ……そう思うと私達って相当手加減されているのね。もし奇襲や何でもありの襲撃を受けたら本当に心を折られていたかもしれないから。


「師匠~!ベジタブルスカイからお野菜をいっぱい持ってましたよ~!」
「ご苦労様、ルフェイ。これで栄養をすぐに取れてオマケに消化も早い修行に最適な料理を沢山作れるぜ」


 そこに何処かに行っていたルフェイさんが戻ってきて異空間から大量の野菜が出てきたわ。


「うわぁ、すっごい量の野菜だね!これってもしかして今日のお昼ご飯なの?」
「ああ、修行中の昼飯は全部この野菜を使った料理を作るぞ」
「はぁ?野菜じゃ力が出ねぇよ、肉喰わせてくれよ」
「そう言うなって、騙されたと思って一口喰って見ろ」


 留流子が大量の野菜を見て驚いていた、そしてイッセー君がこの野菜を使って料理を作ると話す。


 それを聞いたゼファードルが野菜じゃ力が出ないと文句を言ったわ、そんな彼にイッセー君は近くにあったトマトを彼に渡した。


 渋々という感じで一口トマトを齧るゼファードル、でも次の瞬間目を丸くして驚いていたの。


「う、うめぇ!?これが野菜!?肉を食ったような重量感と旨味が一気に口に広がりやがった!?野菜なんて食う奴は馬鹿だと思ってたけどコイツは主食級の美味さだ!」


 あれだけ馬鹿にしていた野菜を絶賛して持っていたトマトをあっという間に食べてしまったわ。


「コイツは普通の野菜じゃない、食べた者がベジタリアンに目覚めてしまう程の美味さを秘めた特別な野菜だ。コイツで美味い野菜料理をたらふく食わせてやるからな!」


 イッセー君はそう言うと異空間に入って調理を始めたわ、その間匙やゼファードル、留流子が野菜をつまみ食いしていたけどあんなことをして料理が胃に入るのかしら?


「よし、出来たぞ!」


 イッセー君は大量の野菜料理を持って現れたわ、なんて良い匂いなのかしら……


「それじゃ手を合わせるぞ。この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」
『いただきます!』


 私たち全員が手を合わせて合掌して食材に感謝を込める、最初は面倒くさがっていたゼファードルやその眷属達も今は素直に行っていた。


 まあイッセー君に鬼の形相で睨まれたら嫌でもやるようになるわよね。


「うっめー!このラタトゥイユ、野菜の奥まで味がしみ込んでいて噛めば噛むほど旨味が出てくる!」
「この野菜グラタンも美味しい!ホロホロと野菜が崩れて旨味がいっぱい出てくるわ!」


 匙と桃がそれぞれ料理を食べた感想を話していたわ、この短期間でこれだけの料理を作れるなんて……


「兵藤君、一体どうやってこれだけの手間がかかりそうな料理を短時間で作れるんですか?」
「俺が入っている異空間は節乃っていう人がアザゼル先生と協力して作った特別なモノなんだ。作るのが滅茶苦茶手間がかかるけど中は時間の流れがこっちと違ってゆっくりになるから手間のかかる料理を作れるのさ」
「そんな空間が……ならそちらで修業した方が効率もいいのでは?」
「そう上手くはいかないよ、俺達みたいに鍛えた体じゃないと体に不具合が出て最悪死ぬからな。多分サイラオーグでも5分は耐えられないと思うぞ」
「それは……なるほど、私達では無理ですね」


 椿姫がイッセー君にどうやってこれだけ多くの料理を短時間で作っているのかを質問していた。


 イッセー君が言うには節乃という人がアザゼル先生と協力して作った時間の流れが遅くなる異空間の中で調理したからだと彼は答える。


 節乃さんって確か前に助っ人に来てくれた女性の事よね?やはり只者ではなかったのね。


 それを聞いた椿姫はその異空間の中で修行した方が効率が良いんじゃないかと尋ねる、でもイッセー君は苦笑しながら私達では負荷に耐えられずに最悪死ぬと話した。


 サイラオーグでも5分ほどしか耐えられないなんて……その異空間相当に危険なのね。そんな場所でケロッとしながら料理するイッセー君も大概だと思うけど。


「まあ本当なら小猫ちゃんがいればこんな手間もかけないですんだんだけど、生憎節乃お婆ちゃんの修行の日と被っちゃったからな」
「塔城さんはそんなに料理が上手なの?」
「ああ、あの子は天才さ。最早俺なんかじゃ太刀打ちできないほどの腕を持っている、いずれはこの世界で一番の料理人になるはずさ」
「へぇ~、そんなに絶賛するなら私も小猫ちゃんの料理食べてみたかったな~」
「最後の方で来れそうって言っていたからその時に作ってもらおうぜ」
「やったー!」


 イッセー君は塔城さんがいればこんな手間をかけなくてもいいと話す、それを聞いた桃がイッセー君に塔城さんは料理が美味いのかと尋ねたわ。


 するとイッセー君は誇らしげに頷き塔城さんをベタ褒めし始めた。それを聞いていた留流子は彼女の料理を食べてみたいと興味を持ったように話していた。


 私も料理はするけどイッセー君の腕前は相当なものだと分かる、そんなイッセー君がかなわないという塔城さんの料理の実力は一体どんなものなのかしら?


「いや~、食った食った!まさか野菜で腹いっぱいになるなんて思わなかったな!」
「本当に美味しい野菜料理だったわ、こんな美味しい野菜なら毎日でも食べたいくらいね」


 ゼファードルは満足そうにお腹を撫でていた、シーグヴァイラも上品にハンカチで口元を拭きながら絶賛していたわ。


「兵藤様、少し宜しいでしょうか?もしよろしければこの野菜のある場所を教えていただきたいのです、お嬢様も非常に気に入られた様子なので是非この野菜を仕入れたいのですが……」
「止めておいた方がいい、あんたも強いんだろうがこの野菜があるベジタブルスカイに続く道は相当な険しさだ。この島の猛獣とは比べ物にならない強さの猛獣に悪魔も嬲り殺す積乱雲がある、今より弱かったころとはいえ俺達も全滅しかけたからな」
「さ、さようでございますか……ではわたくしではとても行けそうにありませんね」
「気に入ったって言うなら依頼で俺達が取ってきてもいいぞ。報酬は……まあ出世払いでいいや、この世界の通貨持ってないだろうし」
「よろしいのですか?心より感謝いたします。もしよろしければお嬢様とも長くお付き合いしていただけると幸いなのですが……」
「まあロボットの話が出来るのは俺くらいだろうし、時間があればな」
「ありがとうございます」


 シーグヴァイラに使える執事のアリヴィアンさんがイッセー君と話しをしていたわ。野菜のある場所を聞こうとしたみたいだけどイッセー君に止められていた、彼らが全滅しかけたってどんな地獄なのかしら……


 後さりげなくシーグヴァイラとの関係を深めさせようとしているわね、そこは悪魔らしいわ。


「そうだ、お前さんとブネだったか?ドラゴンだからドラゴンアップルっていうのしか食べられないんだろう?」
「ええ、その通りです」
「俺はドラゴンに変化するだけで悪魔だから純粋なドラゴンではないぞ」
「そうなのか?まあドラゴンになれるならこの際そう言う細かいことはいいや、実は二人に食ってもらいたいものがあってな。


 イッセー君はそう言うと真っ赤な果実を取り出した。


「以前から竜王タンニーンっていう人からサーゼクスさんを通じて相談があってな、この世界にドラゴンアップル以外に竜が食べられる食材はないかって聞かれたんだ。それで心当たりがあるのがこのグランドベリーだ」
「これは……本来ドラゴンアップル以外の食材に興味を惹かれることは無いのですが何故か美味しそうに見えてしまう」
「確かになんだか唾液が出てきたな」


 グランドベリーを見た二人はゴクリと喉を鳴らしていたわ。そして恐る恐る果実を一口食べてみる。


「た、食べられる!?ドラゴンアップル以外の食材が!?それに信じられないほど美味しい!?」
「俺も信じられないほど美味く感じる!?言葉にするなら俺の細胞一つ一つが喜びで震えているようだ!?」
「どうやらドライグの推測は当たっていたようだな」
『ああ、グランドベリーからはドラゴンアップルに似た味を感じたからな。もしかしたらと思ったが食えるみたいだ』


 グランドベリーを食べた二人はあまりの美味さに目を見開いていたわ。どうやらイッセー君はドライグの助言を得てこの発想に至ったみたいね。


「他にもハニードラゴンの蜂蜜やミルクジラのミルクといったドラゴンが好む食材を持ってきた。甘いもんばかりで申し訳ないけど……」
「いえ、これはドラゴンを救う貴重な一歩になるかもしれません!強さに反して数を減らすドラゴン、その原因の一つがドラゴンアップルの数が少なく十分な栄養を得られないことでしたが……もしこれらを安定して供給できればその問題を解決することが出来ます!貴方はドラゴンの救世主です!」
「うめっ!やべぇ!俺悪魔だけどこの蜂蜜もミルクも手が止まらねえ!」
「あまり食い過ぎると虫歯になるぞ」


 アリヴィアンさんが興奮した様子でイッセー君の手を掴んで力説していたわ、ドラゴンからしたら本当に驚きの発見だったのね。


 その横でブネが蜂蜜やミルクを堪能していた、私達も後から味わってみたけど信じられないくらい美味しかったわ。


 そんな様子で皆食事を楽しんでいたんだけど、ある出来事が起こったの。


「ぐぅっ!?なんだ、腹が……!?」
「ライザー様!?うぅっ!?」


 するとライザーとユーベルーナが急にお腹を押さえたわ……ぐっ!?彼らだけじゃない、私や他のメンバーもお腹を押さえた。何が起こったの!?


 アリヴィアンさんはドラゴンなので野菜料理を食べていなかったから無事みたいだけど……


「安心しろ、野菜が消化されて体が排泄しようとしているだけだ」
「消化って……まだ食べて数分しかたっていないのに!?」
「ああ、それだけ消化が早いんだ。全員分のトイレは用意しておいたからそれを使いな」
「うわぁぁぁっ!もうダメだぁぁぁぁ!」


 イッセー君の説明にライザー眷属の雪蘭があまりの消化の速さに驚いていた。確かにこれだけ消化が早いのならその後に激しく動いても体に負担はないだろうけど……


 一目散にトイレに入ったライザー眷属のカーラマイン、私達も直ぐにイッセー君が用意してくれていた仮設トイレに駆け込んだ。


 ふぅ、恥をさらさずに済んだわ……


「私達も事前に知識があればあんな思いはしなくて済んだのにね……」
「あの日から仮説トイレを異空間にしまうくらいになったからな」


 リアスが何か遠い目をしてボソッと何かを呟いていた。それを聞いていたであろうイッセー君が神妙な顔をして彼女の肩をポンッと叩いた。


 一体どうしたのかしら?気になるけど何だか声をかけたらいけない気がするわ……


「さあ、腹も膨れただろう?次の修行に移るぞ!」


 休む暇もなく私達は次の修行に移ることになったわ。


「ぎゃあああっ!!く、食われるぅぅぅ!?」
「安心しろ、悪魔の耐久ならそいつらの牙を数回は耐えられる!」
「そんなこと言ったって……いってぇぇぇぇ!?」


 私達は島の外海を錘を付けて泳いでいたわ、そこに弾丸みたいな鮫が突撃してきて匙のお尻に噛みついた。


「ソーナ、その子達は『特攻サメ』よ。捕獲レベルは1よ、肉は不味いけどフカヒレは結構いけるわ」
「そ、そうですか。教えてくれてありがとう、リアス」


 リアスは数匹の特攻サメを気絶させて異空間に放り込みながらそう話していた。今夜はフカヒレね、多分……


「きゃああっ!ゼファードル様!助けて!」
「うおおおっ!?なんか触手みたいなのが出てきたぞ!」


 ゼファードルの眷属の女の子が海から出てきた触手に捕らえられていた。ゼファードルは必至にその女の子を助けようとしたが他の眷属と一緒に捕まってしまったわ。


「おおっ!捕獲レベル2の『大王スミイカ』だ!こいつの体から出ているイカ墨は絶品だぞ!よし、捕まえるんだ!」
「むちゃ言うなぁぁぁぁ!?」


 イッセー君が涎を垂らしながら捕まえろという、しかしゼファードルは触手に振り回されながらそう絶叫していたわ。


 結局サイラオーグやライザーがなんとか大王スミイカを倒して事なきを得たわ、因みにその日の夕食はフカヒレのスープとイカスミパスタだった。


 そして次の日、私達はハングリラ島の近くにある別の小島に来ていた。


「ここはカンダン島、気温の差が激しい島だ。今日はここで過ごすぞ」
「ひぃぃ……寒い……」
「こっち側は熱すぎるよ……」



 そこは気温の差が激しく片方は溶岩、もう片方は氷山と別々の気温が私達を襲ってきたわ。匙は震えて留流子は汗を流していたわ。


「ソーナ、まだこの島は優しいわ。私達が行ったアイスヘルは−50℃まで下がった極寒地獄だったから」
「溶岩の熱さとは違うけど僕達の行ったデザートラビリンスという砂漠は大体80度くらいの高温地獄だったね。この島はまだ涼しいよ」
「木場、前から思っていたけどお前ら良く死なないよな……」


 リアス達はケロッとした様子で自身が行ったことのある場所を懐かしそうに話し合っていたわ。それを聞いていた匙が木場君にそうツッコミを入れていた。


「ゴガアアアァッ!」
「シャアアッ!」
「な、なんだぁ!?芋みたいな体をした土竜と雪だるまの化け物が襲い掛かってきたぞ!?」
「おおっ、体がホクホクの甘い芋で出来た土竜『イモグラ』と冷たいアイスクリームで出来た体を持つ雪だるま『ユキダルマン』か。丁度いい、こいつらを捕獲するんだ」
「捕獲レベルはどちらも2ですのでお気をつけてください」


 地中から芋のような体をした土竜が現れて私達に襲い掛かってきた、そして氷山の方では雪ダルマのような怪物が現れてそれも襲い掛かってきたの。


 それを見たイッセー君は彼らを捕獲しろと言ってきたわ、アーシアさんが捕獲レベルを教えてくれたけどこれで2なの?


 私はさっきイッセー君に捕獲レベルという言葉を教えてもらったわ、なんでもプロのハンターが10人くらいいて捕獲できるのが1らしいの。


 最初はそれにしては悪魔の私達でも苦戦していないかと思ったけど、G×Gの人間は栄養のある食べ物を摂取してるからかD×Dの人間よりも強いらしいの。


 場合によっては中級悪魔も倒せる一般の美食屋もいると聞いてこの世界は人間が強いんだと思い知ったわ。


「キュイイイイッ!」
「ぐはっ!?」


 イモグラ達が回転しながらドリルのようになって突っ込んできた。その攻撃をカーラマインがまともに受けて吹き飛ばされる。


「シャアアアッ!」
「ぬうっ!?」


 ユキダルマンが口から蒼い光線を吐き出した、それがライザーの腕に当たると一瞬で凍り付いてしまう。


「気を付けろ、ユキダルマンが吐き出す光線は生物を一瞬で凍らせてしまうからな」
「ならば私が受ける!


 私の眷属で戦車の『由良翼紗』が人工神器『精霊と栄光の盾』を使いユキダルマンの冷凍光線を受け止めた。


「おおっ、やるじゃねえか!」
「ふふっ、元士郎。油断は大敵だぞ」


 感心する匙、しかし彼の近くの地面からイモグラが飛び出して襲い掛かった。しかし翼紗はそれに気がついていたようで匙のフォローに入る。


「はあっ!」


 そしてイモグラの突進を精霊と栄光の盾で受け止める。でも……


「なにっ!?」


 盾にヒビが入ってそのまま壊されてしまったわ。


「馬鹿な!?まだ十分に耐えられるはずなのに……!?」


 イモグラが翼紗に向かって突っ込んでいった。このままでは彼女が危ない……!


「ふっ」


 でもそこにイッセー君が割り込んでイモグラを掴んでしまった。じたばたと彼の手の中でもがくイモグラ、そこに指を刺してイモグラの動きを止めてしまった。


「由良、盾が破壊されたのに驚いていたな?」
「あ、ああ……まだ全然耐えられたはずなんだが」
「普通ならな、だがお前はさっき冷凍光線を盾で受けて匙のいる高温エリアに来ただろう?急激な温度差によって盾が脆くなったのさ」
「そういうことか……」


 翼紗はどうして精霊と栄光の盾が簡単に破壊されてしまったのかイッセー君に説明してもらい納得した様子を見せる、確か高温の状態の皿を急激に冷やすと割れてしまうという話を聞いたことがあるけどそれと同じことが起こったのね。


「温度の急激な変化は頑丈な武器だって壊してしまう、それは武器だけじゃない」


 イッセー君が周りを見渡すと全員に異常が起こっていたわ。


「な、なんだ……力が出ない」
「動きが鈍いぞ……」


 サイラオーグやライザーが汗を流して息を荒くしていた、それだけでなく他のメンバーも全員が苦しそうにしていた。私もなんだか普段よりも疲れが出るのが早く感じる……


「急激な温度変化で体が疲れてしまい普段よりも体力の消耗が大きくなってしまうんだ。ここでの修業は戦う事じゃない、この環境に適応して効率よく体を動かせるようにするんだ。リアスさん、手本を見せてやってくれ」
「分かったわ」


 イッセー君が私達が不調になった理由を教えてくれたわ、するとリアスが前に出て猛獣達を挑発する。


「いらっしゃい、相手をしてあげるわ」


 リアスはわざと力を抑えていた、それによって猛獣達は恐れずにリアスに向かっていく。


 リアスは猛獣達の全ての攻撃をいなして回避し続けた、それも熱い個所と寒い個所をわざと行ったり来たり移動しながら。


 でもリアスは息切れ一つもせずに30分間猛獣の相手をし続けた、遂には猛獣の方が疲れ果ててしまい気を失ってしまう。


「なんて体力だ、あの温度差の中を何度も激しく移動して息も乱していないとは……」
「ふふっ、これでも過酷な環境を何度も切り抜けてきたからね」


 サイラオーグはリアスの体力に驚いていたが、リアスはなんてことなさそうに笑みを見せる。


「今日の修行は如何にこの環境の変化に慣れる事ができるかってないようだ、悪魔の身体能力ならこの程度の環境なら1日もあれば慣れる。猛獣退治以外にも食材を取ってもらうし手合わせもしていくぞ」
「もし体調が悪くなったらすぐに言ってください、回復しますから」


 イッセー君はこの環境の変化に慣れるのが今日の修行だと話す、アーシアさんは体調が悪くなったら自分が回復すると話した。


 以前は傷以外は治せなかったけど、今は軽い病気や異常なら治せるらしいの。凄い万能な回復能力になっていて驚いたわ。


「ゴガァァァッ!」
「バギャアアッ!」


 するとマグマの中から真っ赤なナマズが、氷山から真っ白い大きな角を生やした白熊が現れた。


「おっ、『オイルナマズ』に『一角ベアー』か。どっちも不味くて食えたもんじゃないから殺すなよ。さあ逃げて逃げて逃げまくれ」
「皆、逃げるわよ!」


 さらに増えた猛獣から私達は必至になって逃げまわったわ。


 それ以外にも燃えるニンジン『キャンドルニンジン』を火傷しないように素早く引っ込ぬかされたり、冷たい池の中に住む鮭『シャーベットサーモン』を水の中に入って捕獲させられたりと色んなことをさせられたわ。


 アーシアさんがいなかったら間違いなく風邪をひいていたわね。


 その日の夕食はイモグラを煮込んだ辛いシチューにキャンドルニンジンとシャーベットサーモンのソテー、デザートにユキダルマンのアイスクリームだった。


 辛いシチューはスパイスが聞いてイモグラのトロッとした触感によくマッチしていたわ、そこに冷たくて甘いアイスクリームは格別な味だったの。


 そして次の日はハングリラ島の近くにあった空に浮かぶ島に来ていた。


「ここは特殊な磁場によって空に浮かぶ石の空島『石の楽園』だ。ここには食える石『味石』があってな、砕いて調味料として使うと万能なんだ」
「い、息がしにくい……」
「ここは標高4600くらいだからな、まあ悪魔なら直ぐに慣れるさ」


 とても高い高度なので息がしにくいわ、でもリアス達はそれ以上の高さを登ったことがあると話を聞いた。もう悪魔すら超えていないかしら?


「お前ら全員悪魔だから飛べるよな?」
「ええ、全員飛べるわ」
「なら今日はこの『ロック・ファルコン』の卵をハングリラ島にまで運んでもらうぞ」
「こ、この大きな卵を?」


 私達の目の前にはイッセー君やサイラオーグすら超えた大きな卵がいくつもあったわ、ダチョウの卵すらコレの前にはうずらの卵レベルね……


「今回は全員で協力していくぞ、この卵を一個貰っていく。当然親はブチ切れて追っかけてくるだろうから必死で逃げろ」
「よし、なら俺とガラムで運ぼう。援護は頼むぞ、行くぞガラム」
「かしこまりました、サイラオーグ様」
「えっ?お前喋れたの!?」
「ああ、喋れるぞ。普段は喋らないだけだ」


 卵はサイラオーグとガラムが持っていくことになったわ、私達は彼らを守る役目ね。


 因みに今まで叫び声しかあげなかったガラムが流暢に話したことに匙が驚いていたわ、普段は無口なだけだったのね。


「よし、運ぶぞ」


 サイラオーグとガラムが卵を持ち上げてゆっくりと動き始めた、私達もその後に続き周囲を警戒しながらハングリラ島を目指す。


「……ふう、どうやら親は戻ってこなかったみたいだな」
「元ちゃん、それってフラグって奴じゃない?」
「えっ?」


 匙が周囲を見渡して卵を産んだ親鳥が来ないことに安堵のため息を吐いた、それを見ていた桃が冷や汗を流しながらフラグを立てたんじゃないかと呟く。


 フラグ……旗のことよね?どういう意味かしら?


「キョオオオオッ!!」
「な、なんだ!?」
「上から何か来るわ!」


 すると耳を引き裂くような甲高い叫び声が響き空に影が出来た、上を見上げた匙と雪蘭は驚きの声を上げる。


 何故なら巨大な鷹のような怪鳥がこちらに向かって空から凄い勢いで急降下してきたからだ。


「ガアアァァァッ!」
「何か吐き出してきたぞ!凄い速度だ!」
「不味い、回避が間に合わない……!」


 怪鳥は口から凄い数の岩をまるでマシンガンのように吐き出してきたわ、それは凄い速度でこちらに向かってきていきなりの事に回避も出来なかった。


 ライザーは炎を放とうとするがサイラオーグの言う通り間に合わない……!


「魔剣よ!」


 でもそこに私達を覆い隠すほどの魔剣が異空間から現れて石を防いでくれたの、これは木場君の魔剣創造?


「キョオオオオッ!」
「時よ止まれ!」


 更に追撃をしようとする怪鳥、でもギャスパー君の目が光ると怪鳥は動きを止めてしまった。


「駄目だぜ、皆。どんな時でも気を貼っていないとな」


 するとイッセー君が前に出て来て私達にそう言ってきたわ。


「あいつは捕獲レベル5の『ロック・ファルコン』、鉱石を食べる怪鳥で食べた石を体内にため込んで戦闘時にああやって吐き出して攻撃してくるんだ」


 イッセー君は私達にあの怪鳥の情報を教えてくれた。


「あいつの石は鉄の壁にすら穴を開ける、悪魔なら耐えられるだろうが相当なダメージを負う。しかも今は卵の搬送中でマトモに戦うのは得策じゃない。じゃあどうすればいいか分かるよな?」
「戦闘を避けて逃げに徹する……ね」
「その通り」


 私がそう回答するとイッセー君はニコッとほほ笑んで褒めてくれたわ。


「でもよ兄貴、逃げに徹しろって言うけどもうあいつはウラディが動けなくしてくれたじゃん」
「ギャスパー、解除していいぞ」
「はぁい、分かりました」
「えっ?」

 匙が首を傾げながらそう言うとイッセー君はウラディ君に時止めを解除しろと言ったわ。まあこうなるとは思っていたけど……


「ちょっ!?兄貴なにやってんだよ!?」
「なにってそれじゃ修行にならないだろう?捕獲レベル5はサイラオーグでもなければ厳しい相手だ、だから最初は相手の出方を見てもらうためにフォローしたんだ、ここからはお前らの判断に任せる」
「カァァァァァッ!!」
「ひいいいッ!?」


 匙が慌てるけどイッセー君の言う事は当然ね、だってそれでは意味がないもの。動き出したロック・ファルコンは再びこちらに敵意を向けてきたわ。


「カァァァァァッ!!」


 ロック・ファルコンはまた口から岩を吐き出してきたわ。


「ここは任せてくれ!」


 クロセルは神器『魔眼の生む枷』を使い視界に入れた石の重力を増加させて海に落下させていく。


「ぐっ、数が多すぎる!それにあの巨体でなんて速度だ、視界にとどまらない!?」


 しかし石の数が多すぎるため全てを視界に入れる事が出来なかったようね、しかも本体は高速で空を飛び続けているので捕らえる事が難しいみたい。


「ならば私が撃ち漏らしを防ごう!」


 そこに翼紗が前に出て精霊と栄光の盾を展開して撃ち漏らした石を防いでいく。


「ぐっ、凄まじい重さだ……!だが兵藤の拳と比べればなんてことはない!」


 敵の攻撃は激しかったけど翼紗は見事に防いで見せたわ。兵藤君の拳を何度も受けた上に温度の変化も克服したから耐久が上がっていたみたい、凄いわ。


「よし、今度はこっちから攻めるぞ!」
「ああ、行くぞ!」


 攻撃を凌いだ私達、すると今度は攻めに転じる為にゼファードルとライザーが前に出てそれぞれ構えを取った。


「いくぜ、俺の新技……!」
「はぁぁぁ……!」


 ゼファードルは魔法を使い腕をバネのような形に変化させた。そしてライザーは自身の炎の翼から一つ羽根を取り出して蒼くなるまで温度を上昇させる。


 しかしあの炎から熱さは感じない、もしかしてフェニックスの再生の炎を使ってるのかしら?


 再生の炎は熱や熱さはない、だが触れた者を回復させたり回復を反転させて強い痛みを与える事も出来るみたいなの。


 その際炎は蒼くなると言われているけどアレがそうなのかもしれないわね。


「いっくぜぇぇぇっ!新技『スプリング死拳(デスノック)』!!」


 ゼファードルのバネに変化した腕が勢いよく伸びて空気を切り裂く程の速度で放たれた。


「喰らえ!『青炎雁(ブルーバード)』!!」


 ライザーは羽根を再生の炎に変えて高速で撃ち放ったわ、二つの攻撃は高速で動き回っていたロック・ファルコンの体に的確に当たったわ。


「はっ!兵藤や木場と比べたら止まって見えんだよ!」
「よし、奴が怯んだぞ!今の内に卵を運べ!」


 二人の攻撃で動きの止まったロック・ファルコン、私達は今の内に卵を運んでいく。


「キョアアアアッ!」
「うわっ!もう持ち直したぞ!?」
「いえ匙、皆が時間稼ぎをしてくれたので魔法が完成しました」


 こちらに向かってきたロック・ファルコンを見て狼狽える匙、しかしシーグヴァイラは冷静でした。


「この魔法は普通は時間がかかりますが、当たれば大きな力の差を覆します……『ノロノロビーム!』」


 シーグヴァイラの手から何か輪のような光線が放たれてロック・ファルコンを包み込みます。するとロック・ファルコンの動きが遅くなってしまったわ。


「我が一族は『時』の能力を受け継いできたわ、その力を今回の修行で対象を遅くすることが出来るようになったの。今はまだ力を溜めるのに時間がかかるけど当たれば問答無用で遅くできるわ」


 シーグヴァイラは自身を持ってそう説明した、時の力を利用して遅くしたのね。


「おい兵藤、コイツは食えるのか?」
「卵は美味いが親の体は石のように固くて食えたもんじゃない」
「つまり殺すなって事だな、おらあああッ!!」


 ブネはドラゴンに変化するとロック・ファルコンを掴んでそのまま投げ飛ばしたわ。


「よっしゃー!これであとは卵を運ぶだけだな!」
「そう上手くいくと良いがな」
「えっ?」


 匙が脅威が去ったことに喜ぶがイッセー君の言葉に首を傾げた。


「兄貴、それってどういう……」
「キョアアアアッ!」


 すると別の方角からもう一匹のロック・ファルコンが姿を見せたの。


「げぇっ!?また一匹出やがった!?」
「あれは父親の方だな」


 ロック・ファルコンの父親は血走った目でこちらに石を吐き出してきたわ。


「させない!」


 クロセルが再び神器で石の重力を増加させて下に落としていく、でも母親よりも石の数が多くて全てを止められなかった。


「気を付けろ、ロック・ファルコンの雄は吐き出す石の量が雌の倍はあるからな」
「あの数では私だけでは防ぎきれないぞ!」


 イッセー君の説明を聞いた翼紗は自分一人では対処しきれないと話す。


「なら私達も手伝うわ!雪蘭!」
「ええ、やるわよ!」


 ミラと雪蘭が前に出て何かを取り出した。それは手甲と黒い筒のようなものだった。


鎧化(アムド)!」


 雪蘭がそう叫ぶと手甲がまるで溶けたかのように広がって彼女の額、右肩、左腕、左胸、右膝、左足を覆い軽装の鎧のような形に変化した。


「はあっ!」


 そして威力と速度、防御力を増した彼女は飛んできた岩を砕いていったわ。


「伸びろ、ブラックロッド!」


 ミラの持っていた筒が勢いよく伸びて更に先端に魔力の刃が構成された。


「はぁぁぁぁっ!」


 そして棍のように振るい石をいくつも破壊していく。


「二人とも、そいつらの使い勝手はどうだ?」
「手に馴染むように使いやすいわ、初めて使ったとは思えないほどね!」
「私も凄く使いやすい!特に魔力を込めて威力を上げられるから魔法が苦手な私でも魔力を有意義に使えるのが嬉しい!」
「そりゃよかった、礼はルフェイとアザゼル先生に言っておけよ」
「えっへん!私達の自信作です!」


 二人が持っている武器はルフェイさんがアザゼル先生と協力して作ったモノみたいね、人工神器の代わりらしいけどそれに劣らない物だと私は思うわ。


「俺だって修行して少しは強くなったんだ!ライン・ウォール!!」


 匙は飛んできた石を黒い龍脈の触手で作った網に引っ掛けてそのまま跳ね返した。それは姉さまの恋人であるサニーさんの『髪ネット』によく似ていたわ。


「へへっ、サニーさんほどの防御は出来ないけど俺も上手く出来たぜ!」
「やるじゃん、匙」


 匙は得意げに笑いイッセー君も褒めていたわ。


「もう少しでハングリラ島に着きますわ!」
「ですがそう上手くはいかないみたいですね……」


 レイヴェルさんが島が見えてきたという、でも護衛のミラベルは別の方向を見てそう呟いた。


「カァァァァッ!」
「うわっ!母親が帰ってきたよ!?」


 先程ブネに投げ飛ばされた母親のロック・ファルコンがこちらに向かって来ていたの。


「あの~、シーグヴァイラさん。先ほどのはもう一度できないのでしょうか?」
「残念だけどアレは使うのに時間がかかるの」
「そうですか。こういう時私は何もできないのが悔しいです……」


 私の眷属の僧侶『草下憐耶』がシーグヴァイラにさっきの技を使えないかと聞く、でもシーグヴァイラは申し訳なさそうにそう答えた。


「桃、一回だけ私達を守れますか?」
「ええっ!?全員を守れる結界は流石に出せませんよ!?」
「あと少しだけ時間を稼いでほしいのです。匙、ストックしていたエネルギーを桃に渡してください」
「分かりました!」


 匙は桃に向かって触手を伸ばしてストックしていたエネルギーを分け与えていきます。


 匙の黒い龍脈は繋げた対象のエネルギーなどを奪う事が出来るの、そして修行の成果で少しだけ奪ったエネルギーを自身の中にストックしておくことが出来るようになった。


「花戒!受け取れ!」
「んんっ……♡元ちゃんのが私の中に入ってくる……♡」
「おい、なんか反応がおかしくないか!?」


 何故か体を震わせて息を荒くする桃、匙は顔を赤くしてそう言ったわ。いきなり大量のエネルギーを体に流し込まれて苦しいのかしら?彼女には悪いことをしてしまったわ……


「はぁはぁ……♡元ちゃんの力、受け取ったよ♡」
「お、お前体は大丈夫なのか?なんかすっげぇエラそうだけど……」
「大丈夫!今なら凄い結界を貼れそうだから!」
「おい!2匹まとめてきたぞ!」


 苦しそうにする桃に心配そうに声をかける匙、でも桃は高揚した顔でそう叫んだわ。ゼファードルが2匹のロック・ファルコンが来ると叫んだ。


「刹那の絶園!!」


 桃は私達を取り囲むほどの大きな結界を出して2匹のロック・ファルコンの攻撃を完璧に防いだ。


「皆!ロック・ファルコン2体を何とか近くに引き寄せれないかしら?」
「策があるのか?」
「ええ、とびっきりのがあるの」
「なら俺達が引き寄せよう、タイミングは任せたぞ!」


 私はメンバーにロック・ファルコン達を近くに引き寄せられないかと言う、ライザーは自分達がその役目をするといい向かっていった。


「鳳凰印!」


 ライザーは眷属達にロック・ファルコンの気を逸らさせて背中に強烈な蹴りを打ち込んだ。


「スプリング狙撃(スナイプ)!」


 ゼファードルは眷属達の作った魔力の壁を使いロック・ファルコンの周りをバネの体になって跳ねまわっていた、そして一瞬のスキを突いてお腹に突っ込んで体当たりをする。


「クカアアァァッ!」
「ケキョォォォッ!」


 二匹のロック・ファルコンは私の近くまで吹き飛ばされてきた。


「今よ!水牢!」


 私は海の水を集めて2匹のロック・ファルコンを包み込むように覆って閉じ込めた。


「カカッ……!?」
「いくら強くても呼吸が出来なければ生物は生きていけない……ごめんなさい、貴方達の卵は大事に頂くから」


 私は溺死する前に魔法を解除した、2匹のロック・ファルコンはフラフラとしながら去っていった。


「よっしゃー!卵を無事に運べたぞー!」


 匙や他のメンバーも喜びを露わにしていたわ、私達本当に強くなれたのね。


「協力すれば捕獲レベル5にも対抗できたか……そろそろ頃合いだな」
「イッセー、本当にするの?」
「ああ、俺達だって無茶やってきたんだ。なんとかなるさ」
「まあ私達がしっかり見ておけばいいだけよね」


 そんな私達を見てイッセー君とリアスが何かを話していたが、私達は喜んでいたためそれに気が付かなかった。


 いよいよ修行も最後を迎えようとしている、最後まで皆と共に頑張るわ。

  
 

 
後書き
 匙元士郎だ!兄貴の特訓で俺達も強くなった!今ならどんな奴にも負ける気がしないぜ!


 えっ、最後の試練?それをクリアできたらリゾート地への招待券をくれるだって!?それなら会長の水着姿も見れるかも……こりゃやるしかないよな!


 次回第157話『地獄の試練!俺達が挑むのは虹の実の捕獲!?』で会おうな!


 次回も美味しくいただきます! 
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