| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

西遊記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七回 悟空如来様に封じられるのことその四

「もういいかと」
「かなり焼きましたので」
「これで」
「そうだな、もうどの様なものでも溶けるか灰になっている」
 真君も応えました。
「では開けよう」
「わかりました」
「さて、大聖様のお裁きも終わりですな」
「これで」
「手間のかかる者だ」
 真君は呆れた口調で述べました。
「全く以てな」
「左様ですね」
「実に厄介な御仁です」
「強過ぎるというのも」
 兵達も苦笑いで応えます、そして炉を開けますと。
 悟空が胡坐をかいて座っていました、そのうえで真君達に右手を頭の高さで挙げてこう言うのでした。
「おう、熱かったぞ」
「炉の火も通じぬか」
「いや、八卦の全てのものを受けたが」
 呆れる真君に言うのでした。
「平気だった、しかし煙でいぶされてな」
「それで目が赤いのか」
「元々火の気が強いので赤いがな」
「よりだな」
「この通り金色にまでなった」
 その目を指差してお話します。
「よいであろう」
「それはな、しかし八卦の炉でもか」
 真君は腕を組み難しい顔で述べました。
「裁きとはならぬか」
「やはり金丹は強いな」
「そうだな、しかしだ」
「わしの裁きはか」
「わしへのだな」
 真君は訂正させました。
「そこは」
「おっと、そうなるか」
「そうだ、では今度はな」
「いやいや、待て」
 悟空はどうしようかと考える真君に笑って言いました。
「一つ大事なことを見逃しておらんか」
「何だ、それは」
「貴殿程の者でもわからぬか」
「何をだ、いや」
 ここで真君も気付きました、何とです。
 悟空は自由に手足を動かしています、それは即ち。
「私の金縛りの術が解けたか」
「四十九日も経ったのだ」
「その間に解けたか」
「炉に入れられた時点でな」
「炉は老君の炉、私の力なぞ消してしまうか」
「あまりに強くな、それで四十九日の間熱い思いをしておったが」
 そうであったがというのです。
「自由に動けてよかった」
「くっ、だがここでまた」
「そうなると思うか、わしはこの時を待っておったのだ」 
 悟空は不敵に笑うとです。
 蠅に変身しました、そうして言うのでした。
「さらばだ、さてまた思う存分暴れるぞ」
「まて、裁きを受けるのだ」
「あがけるだけあがくと言ったな」
「だからまだあがいてか」
「そしてだ」
 そのうえでというのです。
「暴れてやるわ」
「おのれ、懲りぬ者だ」
「わしの辞書に懲りるという文字はないわ」
 高笑いまで浮かべてでした。
 悟空は何処かに飛び去ってでした、そのうえで。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧