西遊記
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第七回 悟空如来様に封じられるのことその三
「全くです」
「青龍偃月刀もであり」
「方天戟でもです」
「まことに何も通じませぬ」
「鞭も棍もです」
「打っても同じです」
「まさに無敵だな、しかし裁きは受けたな」
切られて打たれて射られてです、悟空は笑って言いました。
「わしはこれで放免だな、では飲むに行くか」
「いや、そうはいかぬ」
ですがその悟空に真君は言うのでした。
「一度身体がどうにかならねばな」
「ならぬか」
「本来は首を切ってだ」
「またくっつけてか」
「よしとするつもりだったのだ」
「そうならねばならぬか」
「これではだ」
真君は考えつつ言いました。
「身体を燃やすか」
「武器が通じぬならか」
「おそらく術もだしな」
それでというのです。
「ここはだ」
「ではどうするのだ」
「ここは老君にお話してだ」
真君はすぐに答えました。
「八卦炉を使わせてもらおう」
「何っ、八卦炉だと」
悟空はそう聞いて声をあげました、まだ柱にくくりつけられていますがそれでも元気さは変わりません。
「あの入れると何でも燃やす」
「左様、全てを灰にするな」
「あの炉に入れて貴殿を焼いてだ」
「灰にしてか」
「それで終わりとする」
「ううむ、では蒸し風呂の様なものか」
「いや、そんなものではない」
真君はそこは断りました。
「地獄の炎より熱い」
「仏界のか」
「それも無間地獄のな」
地獄の中でも最下層で最も熱い場所のというのです。
「それよりもだ」
「そう聞くと蒸し風呂どころではないな」
「そこに入れて焼く」
「打ち首で駄目なら火炙りか」
「左様、裁きは果たす」
「真面目にか」
「ことは果たす、ではよいな」
こう悟空に告げてでした。
実際に悟空は八卦に分かれているその炉の前に連れて来られました、真君はすぐに老君に事情をお話しました。
「そういうことなので」
「わかった、では使うがいい」
老君はそれならと応えました。
「それではな」
「話は整った、しかしあれから雷も火も何でも浴びせたが」
真君はまた悟空を見て言いました、今は縛られています。
「やはり何もなかったな」
「やはりわしは不死身になったか」
「武器や術では傷付かないな」
「有り難いことだ」
「だが流石に八卦炉に入れるとな」
そうすると、というのです。
「灰になる、観念するのだな」
「ううむ、火の気が強いとはいえ難儀なことだ」
「では難義にならぬ様に自重するのだ」
悟空に怒った目で告げてでした。
真君は彼を炉に入れました、そして思いきり熱しまして。
四十九日経てです、兵達はな真君に言いました。
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