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ハッピークローバー

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第百七十四話 煙草その四

「太宰さんもね」
「そうなのね」
「作品の中にも吸う描写あるし」 
「ああ、富嶽百景だった?」
「その作品にあるし」
 こう富美子に話した。
「あの人も結核だったし」
「何か結構やばかったのよね」
「自殺する間際はね」
 愛人と心中したことを知らない者は日本にどれだけいるだろうか。
「相当にね」
「病状進んでたの」
「だから自殺しなくても」
 それでもというのだ。
「長くなかったみたいよ」
「そうだったのね」
「それで結核でもね」
「あの人煙草吸ってたのね」
「そうだったのよ」
「余計に悪いわね」
「そうよね、あとね」
 かな恵は話を続けた。
「あの人歯が悪かったみたいよ」
「そうだったの」
「抜けた歯が多くて」 
 それでというのだ。
「噛むのにね」
「苦労していたのね」
「そうそう、歯は大事よ」
 留奈はまさにと言った。
「うちの家よくお母さんが言うのよ」
「歯を大事にしなさいって?」
「だから歯磨きをね」
 一華に話した。
「忘れるなってね」
「おばさん言ってるの」
「そうなのよ、何歳になってもね」
「歯は大事に」
「そう言ってるのよ」
「確かにね、歯がいいと」
 一華もそれからと返した。
「健康よね」
「その分ね」
「そうでしょ」
「よく言われることだけれど」
「歯が丈夫だとね」
「その分健康ね」
「太宰さん母が悪かったっていうけれど」
 かな恵が今しがた話したことを話した、実は留奈は太宰の歯が悪かったことは今の今まで知らなかった。
「ルイ十四世なんて一本もよ」
「ああ、フランスの娘が言ってるわ」
 一華はすぐに返した。
「今農業科にいるね」
「アンジュちゃん?」
「あの娘がね」
 彼女の名前も出して話した。
「言ってたわ」
「あの王様が歯がなかったって」
「何でもとんでもない藪医者の言うことを聞いて」
 歯が万病の元と主張していたのだ。
「その言うこと聞いて」
「手術を受けてね」
「歯を全部抜いたのよね」
「麻酔なしでね」
 当然凄まじい激痛に襲われたが国王として呻き声一つ出さなかったという、流石と言うべきだろうか。
「そうしてね」
「その後の抜いた穴はハンダゴテで焼いて塞いで」
「その時の手術の失敗で」 
 こうした意味でも藪医者であった。 
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