ハッピークローバー
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第百七十四話 煙草その三
「これまで以上に強くなって」
「無敵になりたいわね」
「文字通りのね」
それこそというのだ。
「桑田さんも来てくれて」
「その桑田さんも言ってるし」
「煙草は駄目って」
「本当に煙草はね」
「吸わないことね」
「さっき作家さんはとか言ったけれど」
富美子は話をそちらに戻した。
「昭和の作家さんなんかもう手にはね」
「何時もある感じよね」
理虹が応えた。
「昭和の作家さんなんて」
「着物着ててね」
「そうそう、座布団の上に座って机に向かってね」
「万年筆で原稿用紙に書きながら」
そうしてというのだ。
「煙草も吸う」
「そんなイメージよね」
「実際芥川龍之介さんなんか」
大正から昭和にかけて活躍したこの作家はというのだ。
「一日百本吸っていたそうだし」
「早死に確定ね」
理虹は一日百本と聞いてこう言った。
「何よそれ」
「自殺したけれどねこの人」
「自殺しなくても煙草で癌にでもなってたんじゃないかしら」
「何でも結核だったらしいわ」
肺結核だったという。
「それでもね」
「煙草吸ってたのね」
「そうみたいよ」
「余計に悪いわね」
理虹は眉を顰めさせて富美子に言葉を返した。
「結核で煙草を吸うなんて」
「そうよね」
「絶対にアウトでしょ」
「肺にも悪いしね、煙草って」
「むしろ肺に一番悪い?」
「そうかもね」
富美子も否定しなかった。
「煙草って」
「それで結核抱えてなの」
「一日百本ね」
「完全に自殺行為ね」
理虹は真顔で言葉を続けた。
「実際自殺したけれど」
「そのままで長く生きられなかったかもね」
「結核だったしね」
他には梅毒だったと坂口安吾が言っているがこの話については坂口以外は言っていないかも知れない。
「そうだったでしょうね」
「結核は当時助からなかったし」
「あまり身体強い感じしないし」
「細いしね、あの人」
「イケメンだけれどね」
「身体は強くなさそうだし」
富美子はそれでと話した。
「あの人はね」
「長生き出来なかったわね」
「どのみちね」
「折角頭がよくて」
極めて教養が高くその教養は学者にも匹敵するまでだった。
「イケメンだったのに」
「残念よね」
「太宰治さんと並んでね」
「ああ、その人も煙草吸ってたわ」
かな恵は二人に応えて言った。
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