西遊記
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第六回 悟空二郎真君と戦うのことその三
「しかし」
「それでもだな」
「そうそう出られませぬ」
「左様であるな」
「ですからいざとなれば」
「真君を向かわせよう」
「そうすべきです、ではまずは今の斉天大聖を見る為に」
その強さをというのです。
「まずはです」
「二太子を向かわせよう」
「一騎打ちに」
こう話してでした。
菩薩は二太子に頭の中で言いました。
「太子、宜しいでしょうか」
「これはお師匠様」
「はい、私です」
二太子に優しい声で語りかけます。
「今戦局は互角ですね」
「やはり斉天大聖は強いです」
二太子は戦局を見つつ答えます、神界隈の軍は悟空が自軍を率いて立て籠る花果山を陸と空から攻めています、ですが。
悟空はここでも分身の術を使います、そしてそれぞれの神と一騎打ちをしてです。
十万の敵軍にも分身が向かいます、神でない人達に悟空と戦える筈がなく。
「神は何とか渡り合えても」
「軍勢はですね」
「斉天大聖の分身達に倒されています」
そうだというのです。
「次々に」
「やはり強いですね」
「また斉天大聖は兵法も優れています」
「そちらも学んだので」
「陣に隙がなく若し援軍が来て攻めましても」
そうしてもというのです。
「容易には攻められません」
「そうなのですね」
「かく言う私も先程まで分身の一つと一騎打ちをしましたが」
「互角でしたか」
「持ち堪えるのが精々でした、殆どの神、父上も兄上もそうで」
それでというのです。
「二十八宿や九曜の方々も。互角なのは哪吒だけです」
「やはりそうですか」
「強いです、むしろ仙桃や老君の丹薬をたんと食べたので」
そうしてというのです。
「さらにです」
「そうですか、では」
菩薩はこれまでの話を聞いて言いました。
「手を打ちます」
「援軍を送りましても軍では」
「わかっています」
菩薩は愛弟子の言葉に微笑んで頷きました、そのうえであらためて帝に申し上げました。
「やはりです」
「真君を向かわせるか」
「そうしましょう」
穏やかな声で言いました。
「ここは」
「やはりそれしかないな」
「そうかと」
「全く、あの者は強いな」
「その強さは本物です」
悟空のそれはというのです。
「まことに」
「そうであるな、それならな」
「真君しかいません」
悟空に勝てるのはです。
「ですから」
「すぐに真君を呼ぶ」
帝は確かな声で言われました、そして一言言われました」
「二郎真君いるか」
「こちらに」
まさに一瞬で、でした。
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