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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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紅白:第十三話 管理AIデマーゼル

 
前書き
イクス2は書きません。
あれはアキュラとロロの物語でソウ達が入る余地はないし、そもそも一緒にはいないでしょうから。 

 
ソウとアキュラはパンテーラとモルフォとロロのサポートを受けながら翼戦士の幻影を蹴散らしながら突き進む。

「(あいつがどういう考えで動いているのか知らんし興味はないが…俺はあいつを許さん…弟を死んだ後も利用し、セプティマホルダーの未来さえ歪ませるあいつをな…)」

「(これで全てが終わる…俺の復讐も、マイナーズ達の苦しみも…全ての元凶…デマーゼル…妹をあんな姿に変え、幾十年も囚え続けた元凶を、俺は許さない!)」

デマーゼルが存在する最深部に到達したが、警備は人どころか警備メカすらない。

仮にも重要な場所であるにも関わらず、誰もいないと言うことは元凶の他者への不信を感じさせる。

「この気配は…間違いない…ここにいたか…アシモフ!!」

忌々しくも懐かしい気配を感じながら広い場所に出たソウの視界に入った人物は、ソウの師でもあり復讐対象でもあるアシモフであった。

「本当にアシモフだったとはな…」

『アシモフって確か大昔にアキュラ君が戦った組織の…』

『あれが、お父さんに戦い方を教えた師匠なの?』

「ええ、セプティマホルダーの自由の確立のために活動するレジスタンス…テロ組織とも言われていた組織のリーダーです。かつてソウとGVも所属していました。今では見る影もありませんが…かつてのフェザーの仲間を裏切ってまでここまでするとは驚きますよ」

自分を慕ってくれていた仲間を裏切り、その上死んだ後まで利用して自分の理想を叶えようとするその冷徹さにはパンテーラも嫌悪感を隠せない。

「それはこちらのワードだ。まさか、エデンのリーダーだった貴様が今でも生きていることもだが、あのソウが無能力者…おっと、今はセプティマホルダーとマイナーズだったか?マイナーズとチームを組んでここまで来るとはとんだサプライズだよ。奴のリアクションが薄いところを見ると大体のことはソウから聞いているようだ…。やはりソウはかつてのファングをロストしてしまったようだ。残念だよ…スメラギを手中に収めたことで、世界は、私の理想に大きく近づいた。ソウ達に裏切られてから時間はかかったが…あの日、この手で殺めねばならなかったキングとクイーンのピース…生きた雷撃能力者と電子の謡精も代わりを調達出来たことだしな?」

一応ソウへの制裁も兼ねてGVの死体を機械化することで無理やり動かしていたが、やはり死体では生者のような動きは出来ず、GVから能力因子を回収してブレイドが手に入るまで雷撃能力者の確保をしていたようだ。

雷撃能力の適合率の低さからブレイドが手に入るまでにどれだけの犠牲があったのかは知らないが。

「ブレイドとアキュラの妹のことか…」

『ブレイドとミチルちゃんが代わり…だって…?』

「下衆が…!妹もブレイドも、貴様の駒ではないっ!」

人を人と思っていない心がない存在であるアシモフにアキュラも怒りを露にする。

「今更ディスカッションをするつもりはない…異なる他者同士が、分かり合うことなど無いのだから。さあ、始めようじゃないか。セプティマホルダーとマイナーズ…相容れぬ両翼の…代理戦争をっ!!裏切り者達にもここでジャッジを下してやろう…来いっ!!」

アシモフに銃口が向けられ、同時にショットが放たれた。

それをアシモフはジャンプでかわすと着地と同時にナイフと手榴弾を投擲してくる。

「つあっ!!」

対戦車レールライフル“E.A.T.R(イーター)”を構えるとジャンプしながら雷撃を撃ってくる。

「「チッ!」」

2人がそれらをかわすとすぐにアシモフが雷撃鱗を展開しながら突進してくる。

「っ!」

回避後の隙を突かれる形となったアキュラに雷撃が迫るが、ソウが雷撃鱗を展開して受け止めるとアシモフが力負けをして弾かれて膝を着いた。

「ぬうぅ…っ!」

「早く攻撃しろ!!」

強制オーバーヒートしたアシモフにソウはチャージセイバーで追撃する。

しかし、斬り裂かれた体からは出血しないどころか電気が漏れ出し、すぐに傷が塞がった。

アキュラもアシモフを銃で殴り付けてロックオンショットを浴びせるものの、アシモフはオーバーヒートから復帰してしまう。

「ただでは転ばんっ!」

雷撃を拳に纏わせて床に叩き付けると床を巨大な雷撃が走り、ソウとアキュラ達は回避を余儀なくされる。

「ヴァニッシュだ!」

ソウの銃の前身である電磁加速銃“ダートリーダー”を抜いたアシモフはユニットを射出すると雷撃を纏った避雷針が広範囲に発射される。

「オロチか…厄介な…」

ソウは雷撃鱗で防げるが、アキュラはそうはいかないので雷撃鱗ロックオンでユニットをロックオンすると放電で破壊する。

「裏切り者め…マイナーズを庇うとはどうやらそこまでフォールしたようだな。チェイサー!!」

ミズチを使い、マーカーを5つ出現させてショットを放ってくる。

「(あのマーカーの位置で弾道が変化するのか…)」

ならばギリギリまで引き付けてからの回避が良いだろう。

アキュラはブリッツダッシュを駆使して軌道が変わる避雷針を回避していき、更にブリッツダッシュからのロックオンでショットを浴びせる。

「ファイア!!」

ギドラによる3連射。

ソウはスライディングでそれをかわしてアシモフに足払いをかけた。

「ロロ!!」

「テーラ!!」

『今あるEXウェポンを全部喰らえーっ!!』

「受けなさい!!」

ロロとパンテーラが今まで倒してきた翼戦士の力をアシモフに叩き込むとダイナインの偏向布巾のセプティマが一番ダメージが大きかった。

「クロスランサーが弱点か…」

「ならばモルフォ、あなたの力でサポートを!!」

『任せて!今回はアキュラも特別よ!!』

今回はモルフォがアキュラのパワーアップのサポートをしてくれるのでロロも戦闘に集中出来る。

『ありがとうモルフォ!助かるよ!』

ライバルではあるが、今回ばかりはありがたい。

「調子に乗らないことだ…マイナーズ!!裏切り者!!」

再び拳を床に叩き付けて大規模な雷撃が床を走る。

「チャージ!!」

昔ソウが愛用していた避雷針カートリッジ・ナーガを使用し、チャージショットを放ってきた。

放たれた雷撃の後にも雷撃が発生し、威力・速度・範囲共に正に凶悪だ。

しかし、欠点はある。

それはアシモフの背後だ。

「「はあっ!!」」

マッハダッシュとブリッツダッシュでアシモフの背後を取り、ソウのチャージセイバーとアキュラのロックオンショットがアシモフに直撃する。

「ぐあっ!?」

吹き飛ばされたアシモフにソウは拳に雷撃を纏わせて殴り飛ばし、許容範囲を大きく超える雷撃にアシモフが再度オーバーヒートする。

「滅べアシモフ!!」

アキュラは妹を苦しめた元凶が目の前にいることもあってかつての激情家の面が露になっていた。

「セプティマホルダーの自由と未来のために消えなさいアシモフ!!あの2人の仇!!」

『ミチルちゃんの痛みや苦しみはこんなんじゃないんだからね!!』

テーラもロロも目の前の仇敵を滅ぼさんと全開の力で攻め続ける。

「貴様だけは…必ず殺す…っ!迸れ!紅き雷霆よっ!!轟け、我が雷よ!!俺とGVとシアンの…貴様に裏切られた時の怒りと憎しみを受け取れ!!アシモフッ!!」

「やはりシアンと出会ってからのお前はファングが抜け落ちてしまったか…ナンセンスだよソウッ!!」

互いに雷撃鱗ロックオンからの放電をするが、やはり出力差があるのかソウの雷撃に押されてアシモフに直撃する。

「このままでは…やられん…っ!迸れ、蒼き雷霆よ…っ!!」

アシモフがセプティマを解放して鎖を召喚することでソウを弾き飛ばし、SPスキルを発動する。

「来るぞ!」

「回避に専念して下さい!」

「受けよ、フール共よ!!ヴォルティックチェーンッ!!!うおおおおおっ!!」

凄まじい勢いで雷撃を纏った鎖を召喚、展開していく。

「これはソウの弟の…奴も使えたか…!」

『でも展開の速さと出力が桁違いだよっ!!』

あまりの展開速度にアキュラとソウは回避に専念せざる得なくなる。

1回、2回、3回、4回と…回数を重ねるごとに鎖の数も増えていき、展開速度も上がっていく。

「はああああっ!!」

そして5回目はより大型の鎖が大量に召喚され、展開されていく。

ロロは即座に安全地帯を割り出した。

『みんな!上に逃げてっ!!』

『こっちよ!早くっ!!』

モルフォが叫びながら移動し、真上の鎖がない場所に飛ぶ5人。

直後に雷撃が迸ったのでギリギリだったのであろう。

しかし、ギリギリでも回避は間に合った。

ソウの斬撃とアキュラのショットによる同時攻撃がアシモフに炸裂した。

「ぐあ…っ…ぬうう…!」

ソウのチャージセイバーで真っ二つにされ、アキュラのショットがアシモフの体にいくつもの風穴を作り、アシモフは呻き声を上げて消滅した。

『消えた…?ロロ、これってもしかして…』

『うん、これは…質量を持ったホログラム?他の復活能力者と同じ…』

倒したアシモフはここに来る途中で倒した翼戦士の幻影と同じだったのだ。

「………」

ソウは違和感を感じて周囲を見渡すとノイズ混じりの無機質な声が聞こえてきた。

『無駄ナ足掻キダ…ソンナモノハ私ノ幻影ニ過ギナイ…』

「っ!避けろ!!」

「ぐあっ!」

ソウの声も虚しく、どこからか放たれた雷撃がアキュラの左目に直撃する。

『アキュラ君っ!!』

「無事だ…だが…くそ…!カメラアイが…」

アキュラの手が左目から離れると人工皮膚が剥がれて内部のカメラアイが露出する。

ソウがテーラのセプティマで人間の体を捨てて鏡で体を構成することで生き永らえていたように、アキュラもまた自らをサイボーグに改造することで生き永らえていたのだ。

『ホウ?ソノ姿、裏切リ者ガパンテーラノ能力デ鏡人間トナッテ生キ繋イデイタヨウニ、貴様モサイボーグダッタノカ…』

「貴様がフェザーとして活動していた時からどれだけ時が経ったと思っている?お互い、百年以上前の人間が、当時のまま生きている訳がないだろう……そこに考えが及ばないとは…そうか…貴様は…長い年月で、電子頭脳がエラーを起こしているな?道理で、正気とは思えない世の中になる訳だ。」

「元々、おかしい部分があったが、人の姿を捨てたことでよりおかしくなっていたんだろう」

『好キニ吠エロ、人ノ姿ニ固執スル愚カ者トオールドエイジノ遺物ヨ…見ルガイイ!』

アシモフがそう言うと大型のカプセルが出現し、電気が迸ったかと思えば電気が大きな人型となる。

「アシモフ…貴様、その姿は!?」

『その姿は…まさか私と同じ…!?』

蒼き雷霆と紅き雷霆とは近縁のセプティマである電子の謡精であるモルフォはアシモフの正体に気付く。

『ソウダ、自ラヲ電脳ヘト変ジタコノ姿コソ!オ前ガ到達出来ナカッタ雷撃能力者トシテ最モ純化シ、進化シタ姿!!私コソ、セプティマホルダー全テノ守護者!電人“デマーゼル”ダ!迸レ、蒼キ雷霆ヨ…旧時代ノ遺物、ソシテ我ガ過去ノ過チヲ清浄ナル蒼キ雷デ、浄化セシメヨッ!!』

アシモフはスメラギを掌握してから自らをセプティマその物となることで生き永らえていたのだ。

強大な力と引き換えに人の心を捨てて。

「何が浄化だ…化け物風情が…貴様のような化け物に、人の世を生きる資格はないっ!!」

「進化…か…俺には寧ろ貴様が退化したようにしか見えんがな。これ以上無様な姿を晒す前に地獄に叩き込んでやろう…GV達に会えると思うな?貴様は地獄の中で惨たらしく苦しめ」

『無能力者ト裏切リ者ガッ!!』

アシモフは怒りを抑えることもせずにソウに雷撃を放ってきた。

「とうとう頭まで退化したか?つい先程まで言っていたことまで忘れるとはな…まあいい、テーラ、モルフォ…行くぞ。ここで終わらせる」

「はい、ソウ」

『OK!!』

「奴を討滅する…やれるな?ロロ」

『勿論だよっ!ミチルちゃんやコハクちゃん…みんなの怒りと悲しみをぶつけてやるっ!!』

「「「『『覚悟しろ(しなさい)!アシモフッ!!』』」」」

何時もは反発していた両者だが、この時の想いは一緒だった。

この目の前の愚か者を許さない。

過去を清算するための戦いが始まった。

『弾ケ飛ベ!』

アシモフがソウ達に向かって小型の雷球を放ってきた。

サイズはGVが使うライトニングスフィアよりも遥かに小さいが、内包する電気は桁違いで紅き雷霆のセプティマホルダーであるソウにも回避を選択させる程だ。

『マンダラー!!』

アシモフが叫ぶのと同時に雷球が分離してソウ達に迫ってくる。

アキュラはブリッツダッシュによる回避、ソウはチャージセイバーで破壊することで防ぐ。

「ロロ、アンカーネクサスだ!」

今のアシモフは雷撃で構成されており、恐らく直接攻撃をしても無意味だろう。

しかし、アシモフの“自らを電脳へと変じた”と言う言葉を信じるなら恐らくアシモフはあのカプセルによって存在を維持しているはず。

ならばカプセルの中枢を攻撃すればアシモフにもダメージを与えられるはずだ。

アンカーネクサスの糸がカプセルの中枢を捕捉した。

「そこが弱点か!」

「受けなさい!!」

『行っけー!!』

アンカーネクサスの突進の後にロロとパンテーラが放った起爆のセプティマによる光弾が炸裂し、モルフォはソウとアキュラのパワーアップのために【霧時計】の歌を歌い続けていた。

『デリートダ…!』

しかしアシモフもこのまま攻撃を受け続けるはずがなく、他のカプセルから放電を発生させてソウ達を吹き飛ばす。

だが、一度ダメージを与えられればこちらの物であり、アシモフが放ってくる雷球を回避し、放電は射程範囲外からの攻撃で対処した。

逆にソウが雷撃鱗ロックオンで捕捉すると強烈な雷撃を浴びせてアシモフにダメージを与えていく。

『己…ッ!我ハ真ナル雷霆…人ノ姿ニ固執スル愚カ者トハ立ッテイルステージガ違ウッ!!』

「愚か者か…その惨めな姿よりもこちらの方が遥かにマシだ。これ以上生き恥を晒す前に貴様はさっさと地獄に堕ちろ」

『抜カセ!ファングヲ失ッタ愚カ者ッ!!サンダーッ!!』

アシモフは激怒しながら雷撃をソウ達に向かって叩き落としてくる。

「はあっ!!」

マッハダッシュでかわしながら距離を詰めながらチャージセイバーを叩き込むソウ。

そしてアキュラもまたブリッツダッシュを駆使して雷撃をかわすとアンカーネクサスで突進すると中枢をロックオンし、ショットを浴びせる。

『受ケヨ聖剣…!』

「スパークカリバーか!」

「しかも複数同時にか…だが、当たらなければどうということはない…!」

見覚えのある聖剣はソウとアキュラにとって見飽きた攻撃であり、回避は容易な攻撃だ。

「どうしたアシモフ?一発も当たっていないぞ?」

異形となって真の力を解放したにも関わらずほとんど攻撃を受けていない2人。

それに関してはアシモフも理解しており、視界不良を起こしているはずのアキュラにまで当たらないと言うことはアシモフの僅かな理性を更に削っていく。

それは当然である。

何故ならソウ自身が雷撃能力者であり、戦い方はアシモフに教わったのである。

そしてアキュラもソウとは何度も戦い、間接的にだがアシモフの戦い方を学習しているのだ。

当然そんなことへの理解が出来ないアシモフの攻撃は熾烈になりながらも隙が大きくなる。

『喰らえーっ!!』

「受けなさい!!」

アシモフの隙を見逃さないロロとパンテーラの爆発光弾がカプセルの中枢に当たる。

『己…過去ノ遺物が…ッ!』

「滅びろ化け物め」

中枢のダメージが無視出来ないレベルに達したアシモフの声に焦りが混じる。

そして爆風を突き破って突撃してきたアキュラが中枢にロックオンし、ショットを連続で浴びせる。

『忌々シイ無能力者ガッ!ジャッジヲ下ス!!』

アキュラからの攻撃がアシモフの怒りに油を注ぎ、アシモフはSPスキルを発動する。

『滅ビヨッ!ヴォルティックチェーンメテオ!!』

いくつもの鎖が召喚され、それが集まり巨大な雷球となり、そして雷撃が迸った直後に雷球は縦横無尽に駆ける。

「(ヴォルティックチェーンの強化スキルか…威力は確かに凄まじい…だが…)」

「(威力に反してスピードが遅い…ギリギリまで引き付ける…)」

ソウとアキュラは寧ろ好機と見てギリギリまで引き付ける。

そして雷球が床に着弾し、閃光が室内を照らす。

光が消えた時にはソウもアキュラ達の姿もなかった。

『フハハハハハッ!コレデオールドエイジノ遺物ハ消エタッ!!我ガ過去ノ過チモ何モカモ全テッ!!コレカラノ未来ハ我ガエイジダッ!!』

「「それはどうかな?」」

『!?』

2人の声に狂喜していたアシモフは驚愕する。

アシモフの眼前に見覚えのある鏡が現れ、反転と同時にソウ達が姿を現した。

「ふふ、残念でしたねアシモフ?」

「やはり退化だな…以前の貴様ならこんな隙は晒さなかったぞ」

「滅べ…アシモフッ!」

アキュラがSPスキルを発動する。

「行くぞロロ…」

『OK、アキュラ君!』

「離れていろテーラ」

ソウもSPスキルを発動し、アキュラとロロが高速移動しながらアシモフのカプセルの中枢を攻撃し、駄目押しと言わんばかりの最後のSPスキル・“インフィニティヴォルト”を発動する。

本来なら強化系のスキルだったのだが、セプティマを鍛え上げたことで肉体を強化する際の雷撃エネルギーが広範囲に放たれることになった。

強烈な雷撃をまともに受けたアシモフのカプセルの中枢が破壊される。

『やったわ!』

『グオァッ!馬鹿ナ…!コンナ…ハズガ…!?』

アシモフの存在を維持する中枢が破壊されたことでアシモフの存在が揺らぎ始めており、それを見たモルフォは勝利を確信した。

「終わりだアシモフ…これ以上生き恥を晒すな」

『マダ…ダ…タダデハ転バン…!』

「っ!?」

「ソウっ!!」

『え!?』

アシモフが最後の悪足掻きと言わんばかりにソウとパンテーラ、モルフォに雷撃を叩き落とした。

「ソウっ!?」

『パンテーラ!?モルフォ!?』

雷撃が消えた場所にはソウとパンテーラどころかモルフォの姿すらなかった。

アシモフは存在が消滅しようとしているにも関わらず、激しい憎悪を撒き散らしながらアキュラとロロを睨んだ。

「(…執念…っ!)」

『嘘…ソウとパンテーラとモルフォが…』

喧嘩ばかりとは言え実力だけは信頼していた2人と張り合いのあるライバルが消し飛ばされたことにロロは戦慄する。

「チッ!」

アキュラはアシモフにショットで攻撃するが、セプティマそのものと化し、痛覚さえあるのかも疑わしいアシモフに効果は薄い。

『無能力ァアアアアッ!!!』

ノイズまみれの声で巨大な雷撃の玉となったアシモフがアキュラを抹殺しようと迫る。

「攻撃は通用しないが、あれではアシモフも長くは保たないはずだ…時間を稼ぐぞロロ…!」

『う、うん…!』

アキュラは人としての僅かな心すら捨て去った化け物から逃げるために駆けるのであった。

アキュラは通路をブリッツダッシュで駆けながらアシモフから少しでも距離を取ろうとしていた。

無駄とは分かっていても時折、アシモフにショットを当てるものの僅かに動きを鈍らせるだけで終わる。

『グオァアアアアアッ!!』

「何と言う醜い姿だ…」

もう言語すら話せなくなったアシモフだった化け物。

憎しみの果ての末路を見せつけられた気分だ。

『だ、だけど…あんな出力を維持しながら暴走するなんて無理なはず!逃げていれば確実にあいつは消えるよ!!』

「奴の執念を見くびるな…ロロ…」

化け物から逃げ続けていたアキュラだったが、足を止めることになる。

何と目の前には地上でスメラギの兵士を引き付けていたはずのコハクの姿があったからだ。

「コハクっ!?」

「アキュラ君!その顔……でも良かったっ!無事だったんだね!?敵からの攻撃が止んだんだけど…凄い胸騒ぎがして…お姉ちゃんに助けてもらって…」

アキュラの露出したカメラアイに驚くコハクだったが、それでもアキュラが生きていてくれたことに安堵していた。

しかし、アキュラからすればそれどころではない。

急いでコハクを抱えてブリッツダッシュで逃走する。

『ウオオオオオオッ!!』

「な、何あれ!?」

「狂った化け物の成れの果てだ…!」

アキュラのジャケットの機動力は本来ならコハクを抱えて飛ぶことなど出来ないのだが、ダメージによって出力が低下している今ならコハクを抱えた状態でのブリッツダッシュが可能なのだ。

コハクが以前、ブリッツダッシュで空を飛んでみたいとアキュラに言ったことがあったが、こんな形で叶えることになるとは。

化け物がアキュラ達が通った場所に雷撃を落とす。

『あーもう!しつこいんだよ!!』

ロロはEXウェポンで反撃するものの効果はない。

それでもロロは2人の生存確率を少しでも上げるために攻撃を続ける。

「アキュラ君…」

心配してここまで来たのが仇となり、アキュラ達を追い詰めていることにコハクが辛そうに顔を歪めた。

すると、コハクの頬に冷たい物が落ちた。

「大丈夫だ…」

「アキュラ君…」

破損したカメラアイから冷却水が溢れていた。

それはまるで涙のように流れる。

「絶対に大丈夫だ…!」

これ以上失わない。

コハクだけではなく自分にも言い聞かせるようにアキュラは呟いた。

しかし、不運にも目の前は行き止まりであり、化け物は歓喜したかのように揺れる。

アキュラ達の真上から雷撃が落ちようとしており、アキュラはせめてコハクだけでもと、覆い被さった。

その時であった。

天井が砕け、雷撃の刃が化け物を両断した。

『ウギャアアアアアッ!!!』

「どうだアシモフ?インフィニティヴォルトで強化されたチャージセイバーの威力は?」

インフィニティヴォルトは発動すれば一定時間能力が強化されるのでチャージセイバーの威力も通常時よりも大幅に強化されており、今のアシモフさえ容易く両断してしまう。

『ソ…ウゥウウウウ……』

「少しは頭が冷えたか?俺達が倒された時のあれはテーラの幻覚だ。と言ってもテーラも相当疲弊していたから精度は低かったが、今のお前なら騙されると思ってな…言ったろ、俺から言わせればお前は退化したようにしか見えないとな……昔の…俺に戦い方を教えてくれた時のお前なら…こんな子供騙しの幻覚の違和感に気付けたはずだ。」

人間だった頃のアシモフならば、精度の低い幻覚を見破れたはずだ。

しかし、人の姿を捨てて永遠に等しい命を手に入れた代償は大きく、アシモフの冷静な判断力を奪っていたのだ。

『キ…エ…ル……ワ…タシ…ガ…』

「そうだ、消えるんだ。理解したのならさっさと死ね、アシモフ………じゃあな…」

ソウの言葉の直後にアシモフは消えた。

それを見た誰もが安堵する。

『もーーーっ!生きてるんならそう言ってよ!心配したじゃんっ!!』

「あら?あなたが私達の心配とは明日は雪でしょうか?」

『ひょっとしたら流星群かもよ?』

パンテーラとモルフォがロロの言葉に互いを見合わせるとからかうように笑った。

『ムカッ!』

「止めろロロ…コハク、大丈夫か?」

「ご、ごめん…腰が抜けちゃった…」

いくら肝が据わっているコハクでも流石にあれは恐ろしかったようだ。

「そうか…」

引き続きアキュラが抱き上げながら出口に向かう。

その途中でコハクは優しくアキュラの損傷した左目に触れた。

「アキュラ君…戻ったら、私がアキュラ君の目を直してあげるね?」

「………ああ…だが、俺の説明を聞いてからだ」

「うん…絶対に見えるようにしてあげるから」

「……聞かないのか?」

「……聞いたら教えてくれるの?」

「……すまない」

アキュラの左目…体のこと、そしてそうなる経緯について語るにはアキュラもまた心の準備が必要だった。

永すぎる年月のことを語るにはアキュラは心身共に疲れ果てていた。

「戦いは終わった…もう、やり残したことはないが……」

「少し休みましょう?戦い続けて疲れたでしょう?私はあなたの傍にずっといますから…」

アシモフを殺し、バタフライエフェクトも利用された弟も存在しなくなった世界でソウは何をすればいいのか分からず途方に暮れるが、パンテーラはそんなソウに寄り添う。

「そうだな…あいつと…ついでにアキュラの妹も日の当たる場所に葬ってやるとしよう。」

戦いは終わった。

憎しみの対象も過去の束縛も何もかも無くなったのだ。

これからどうすればいいのか?

それは誰にも分からない。

それでも、世界は動いていく。

良い方向にも、悪い方向にも。 
 

 
後書き
アシモフはどの辺りで人格破綻したのか、電人になった辺りからかな 
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