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西遊記

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第五回 悟空蟠桃園暴れるのことその九

「顔が真っ赤だぞ」
「毛だらけの顔でもわかるぞ」
「どうせ飲み過ぎて行き先を間違えたんだろう」
「何処かとな」
「ううむ、そうか」
 悟空も言われて納得しました。
「おおよそわかった」
「いや、わかったじゃないぞ」
「用がないなら大人しくしろ」
「帰れとは言わないがな」
「今老子様はお留守だ」
「何だ、留守か」 
 悟空はそう聞いてそれならと言いました。
「では帰ろうか」
「全く騒々しい」
「何で来たのだ」
「今我等は金丹を預かっているのだ」
「大事な用を仰せつかっているのだ」
「その中で来られてだ」
「いささか困っているぞ」
「金丹?あの飲めば不老長寿を得られ」
 金丹と聞いてです、悟空は言いました。
「美味いというあの薬か」
「そうだ、その金丹だ」
「我等はそれを預かっているのだ」
「だから番をしている」
「いるなら茶を出すから飲め」
「酒をくれ」
 茶ではなくとです、悟空は酔っているのでさらに飲みたいと思ってそのうえで二人の童子達に言いました。
「それとつまみをな」
「わかった、今持ってくる」
「待っておれ」
 童子達は内心図々しいと思いつつもでした。
 悟空に出してやることにしました、そしてです。
 その二つを持って来ることにしました、その時に悟空に言いました。
「今から客室に案内する」
「そこで待っているのだ」
「我等は厨房から酒とつまみを持ってくる」
「捧げものの精進酒と鹿の干し肉がある」
「それを持って来るからな」
「待っていよ」
「それではな」
 悟空もそれではと応えました、そしてです。
 童子達は悟空を客室に案内し一旦厨房に行きました。悟空は客室に彼だけになりましたが元々悪戯好きな性分でして。
 しかも今は酔っています、それで悪戯心がむくむくと身を起こしまして。
 金丹を摘まみ食いしてやろうと思いました、それで分身達を出して彼等の姿を消させて素早い動きで宮殿の中を探させてです。
 金丹を宮殿の薬の兆号室で見つけるとすぐに自ら飛んでいってぽりぽりと食べました、すると随分美味く。
「いやあ、いいものを食ったな」
「おい斉天大聖持って来たぞ」
「酒とつまみだ」
 ここで客室の方で童子達の声を聞いてでした。
 客室に飛んで帰って何もなかった様に椅子に座って応えました、そして言うのでした。
「おう、早いな」
「ある場所はわかっていたからな」
「すぐに持ってこられたぞ」
「では飲め」
「そして食うのだ」
「それではな」
 悟空は何もなかった様に飲み食いしました、そして太上老君がいない宮殿を後にしました。その時童子達に今度は事前に来る様に知らせてから来る様にと言われました。
 そして園に戻って役人にこれまでしたことを誇らしげに言いますと。
 役人は文字通り飛び上がって驚いてです、悟空に言いました。 
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