西遊記
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第五回 悟空蟠桃園暴れるのことその五
「食べてないですよね」
「食っとらん」
「桃の臭いが凄いですが」
「気のせいじゃ」
「そうでしょうか」
役人は悟空がこっそり食べているのではないかと思いましたが実際そうでした。彼は仙桃を無墨食いしていました。
ですがこれ位はとです、皆知っていても見逃していました。それで悟空も見付からない様にこっそりとですか。
「食っていますか」
「左様」
神界に来た独角鬼王にお話しました。
「内緒だがな」
「こっそりと」
「見付からない様にせねば」
「気を付けておるぞ」
「ではこれからも」
「そうしてな」
気を付けてというのです。
「つまみ食いをしていく」
「ご注意下さい」
「その様にな、しかも食うとな」
「寿命が延びるのですな」
「もうわしは不老不死だが」
そうなっているけれど、というのです。
「これが美味くてな」
「時々ですか」
「食しておる、そして今度な」
悟空は鬼王に言いました。
「西王母様が来られる」
「あの崑崙の」
「左様、池でな」
こちらでというのです。
「その仙桃を食うな」
「宴を開かれますか」
「それで七人の仙女達が来てな」
そうしてというのです。
「仙桃を頂きに来るとのことだ」
「西王母様とは」
「かなりのことだな」
「はい」
実にとです、鬼王も答えます。
「それはまた」
「その向けの準備もな」
「しておられますか」
「そうだ、まあ準備と言ってもな」
悟空は笑って鬼王と一緒にお茶を飲みつつお話します。
「これといってな」
「やることはありませぬか」
「仕事はしておるが昼寝もしておる」
そうだというのです。
「かなり気楽にな」
「働いておられますか」
「そうしておる」
「そうなのですな」
「至ってな」
笑ってお話します、そして鬼王が帰ってからです。
悟空は仙女達が来る日を待ちました、西王母はとても奇麗な赤と桃色の服を着た気品のある少しふくよかな人間で言う中年の女性のお姿をしています。この方が今七人の仙女に命じました。
「では今からです」
「はい、蟠桃園に参り」
「そしてです」
「桃を頂いてきます」
「その桃を食べる宴なので」
仙女達にそれ故にと言います。
「ですから」
「必ずですね」
「あの桃は必要ですね」
「絶対に」
「そうですから」
だからだというのです。
「貰って来るのです」
「承知しています」
「必要なだけです」
「頂いてきます」
「お願いします、それとです」
西王母はさらに言いました。
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