西遊記
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第五回 悟空蟠桃園暴れるのことその四
「それぞれの実を食べますと」
「美味いか」
「これが頬も落ちそうなまでに」
「そこまで美味いのか」
「それにです」
役人はさらにお話しました。
「召し上がりますとそれぞれ相応の長寿を得ます」
「そうか、しかし神界の者はな」
「どなたも不老不死ですね」
「お主もじゃな」
「ですから長寿は意味がないですが」
それでもというのです。
「まことにです」
「美味いのでか」
「神界でも評判です」
「そこまで美味いなら食いたいものだ」
「いえいえ、とんでもない」
悟空の今の言葉にです、役人は慌てて止める様に言ってきました。
「その様なことはです」
「食ってはならんか」
「神界でもとても貴重な桃なので」
だからだというのです。
「とてもです」
「食ってはならんか」
「左様です」
「そうか、仮にも園の管理を任されているなら」
「それならです」
「尚更だな」
「はい」
まさにというのです。
「そうしたことはです」
「してはならんな」
「左様です」
まさにというのです。
「くれぐれも」
「ううむ、しかし気になるな」
「そこはご自重を」
「自重?わしが一番苦手なことだ」
悟空は真顔で言いました。
「何が苦手かというとな」
「動かずにいることとですね」
「我慢することでな」
「ご自重は我慢ですから」
「それはだ」
どうにもというのです。
「苦手でな」
「それで、ですか」
「今も言う」
そうだというのです。
「嘘はいかんからな」
「ですがここはです」
「自重してか」
「はい」
そうしてというのです。
「やっていかれて下さい」
「しかし美味そうな匂いもしてきたぞ」
悟空は舌なめずりして言いました。
「桃のな」
「ですから管理しているものなので」
「手を出してはいかんか」
「はい」
役人はあくまで真面目でした。
「そこはお願いします」
「くれぐれもか」
「くれぐれもです」
まさにというのです。
「宜しいですね」
「全く、これは困った」
「困っておりません」
兎に角仙桃を食べてはならないとです、役人は悟空に言いました。こうして悟空は園の管理が仕事となりましたが。
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