金木犀の許嫁
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第六十七話 白華のお見合いその九
「あちこちに関連企業あるから」
「そうですね」
「だからね」
「これからそのお店にですね」
「行きましょう」
「ご馳走になります」
「やっぱりすき焼きはいいものだよ」
笑顔でだ、佐吉も言った。
「本当にね」
「美味しいですよね」
「うん、維新から出てきて」
「今も定着していて」
「安定の美味しさがあるよ」
夜空にも話した。
「すき焼きはね」
「ご飯にもお酒にも合いますし」
「伊藤博文さんもお好きだったんだ」
明治の元勲と知られる彼もというのだ。
「あの人食べものにはこだわらなかったけれどね」
「かなり無頓着だったとか」
「もう何でも食べたよ」
「かなり粗食だったそうで」
「お酒もね」
「衣食住全部ですね」
「お家は雑草伸び放題で」
挙句飲み代が増えて家を売った話がある程だ、それで首相が家なしではとなって首相官邸がもうけられたのだ。
「服もかなり古いもので」
「暮らしは凄かったですね」
「女好きでもね」
このことも有名な人物である。
「それもご愛敬な」
「滅茶苦茶面白い人でしたね」
「あんな面白い人はそうはいないよ」
夜空に笑って話した。
「気さくで剽軽でざっくばらんでね」
「何か政敵も口説いたとか」
「そんな人でね」
「本当に面白い人でしたね」
「それで食べものは出れば何でもだったけれど」
それでもというのだ。
「その中でね」
「すき焼きお好きでしたね」
「そうだったんだよ」
「そうだったんですね」
「それと河豚が有名だね」
佐京が微笑んで言ってきた。
「あの人は」
「あっ、下関で食べて」
「それで美味しくてね」
「河豚解禁したのよね」
「お店の人は毒あるお魚出したから」
彼が下関条約締結の為にその下関に来ていた時の話である。
「平謝りだったけれど」
「仮にも当時の日本のトップだった人に」
「他に出せるお魚なかったから仕方なくにして」
「それで謝って」
「伊藤さん怒るどころか」
ここで怒らないのがこの人物の器であった。
「笑って許してね」
「逆に解禁したのよね」
「そんな人なんだよね」
「本当に面白い人だったのね」
「そうだったんだ」
伊藤博文はというのだ。
「本当にね」
「そうよね」
「それで河豚も」
この魚もというのだ。
「縁があったよ」
「そうだったわね」
「その伊藤さんも好きだったし」
「すき焼きは何かといいわね」
「食べてね」
そうしてというのだ。
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