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ナポレオンコンプレックス

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第六章

「それでもだ」
「認めておられるのですね」
「だから尚更だ」
「用いられるのですね」
「何時裏切ってもな」
 二人がというのだ。
「再びな」
「それでもですね」
「いいのだ、そして今はだな」
「いがみ合っておられます」
「まただな、フーシェの後はだ」
「フーシェ殿ですね」
「彼しかいない」 
 こう言ったのだった。
「タレーランの言葉だ」
「フーシェ殿がですね」
「自分の後釜を狙う者を次々と陥れ消しているからだとな」
 謀略によってというのだ。
「言っている」
「左様ですね」
「そしてタレーランの為の部屋がだ」
 こんなことも言った。
「タンプル塔にある」
「牢獄の部屋が」
「そう言われている」
「それはですね」
「フーシェの言葉だ、お互いにだ」
「悪事をご存知ですね」
「そうなっている、そしてだ」
 そうであってというのだ。
「お互い隙があればな」
「陥れようとしている」
「また私もな、だが彼等は私を英雄と言うが」
 それでもというのだ。
「小男とは言わない」
「真実ではないことは」
「しっかりと見ている」
「陛下を」
「ならいい、これからも用いる」
 有能だが平気で裏切ってきた彼等をというのだ。
「そうする」
「そうされますか」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「フランスと私の為にだ」
「働いてもらいますね」
「そうしてもらう」
 こう言うのだった、そして。
 その二人はだ、こう話していた。いがみ合っているが共に食事を摂りつつだった。
「さて、陛下だが」
「戦いを止めないな」
「これ以上は仏蘭西の為にならない」
「だからだな」
「離れるべきだな」
「そうだな」
 フーシェはタレーランの言葉に頷いた。
「その時だな」
「英雄であられるがな」
「野心が過ぎる」
「それが強過ぎる」
 このことをだ、タレーランは指摘した。 
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