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ナポレオンコンプレックス

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第五章

「頼れる」
「能力は、ですか」
「しかしだ」
 それでもというのだ。
「その性格はな」
「頼れないですか」
「二人は仲が悪いが同じだ」
「そうなのですか」
「頼れない、信じられないということではな」
 その点ではというのだ。
「同じだ」
「謀略家ですか」
「共にな、常に企んでいる」
 タレーランもフーシェもというのだ。
「汚職もすればな」
「そのこともご存知ですか」
「有能だから見過ごしてやっている」
 二人の汚職もというのだ。
「だがそうしたこともしてだ」
「常に企んでいる」
「彼等にあるのは欲だ」
 そうだというのだ。
「忠誠心なぞない」
「陛下に対する」
「フランスは愛しているがな」
 それでもというのだ。
「そうしたものは備えていない」
「そうなのですね」
「だから隙があれば」
「陛下を裏切りますか」
「必ずそうする」
 極めて冷静に述べた。
「これまでもだ」
「裏切ってきましたか」
「そうしてきた、だが用いている」
 自分を裏切ってきたがというのだ。
「有能だからな」
「だからこそですか」
「彼等以上に有能な者はいない」
「政治において」
「全く信用出来ないが」
 それでもというのだ。
「欧州でも特にだ」
「優れておられますか」
「だからな」
「用いられるのですね」
「それこそ何かあればな」
「陛下を裏切っても」
「何度もな、そして今もだ」
「何かあるとですか」
「裏切る、忠誠心なぞ持ち合わせていないこともな」
 自分自身に対してというのだ。
「同じだ、倫理なぞなくだ」
「汚職も行い」
「賄賂も取る」
「そして常に企んでいる」
「そうして決してだ」
「決して?」
「私を侮っていない」  
 ここでだ、ナポレオンは笑って話した。
「全くな、むしろだ」
「認めておられる」
「そうだ、私が優れた者とだ」
「英雄であると」
「認めている、育ちが悪いだのも思っているが」  
 ナポレオンをというのだ。
 
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