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ナポレオンコンプレックス

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第四章

「イギリスでもだ」
「小柄でないですね」
「むしろ高い方ですね」
「一六七あるとも言われていますし」
「そして決してだ」
 ウェリントンはさらに話した。
「彼を侮らないことだ」
「手強いですね」
「やはりその軍事的才能は確かですね」
「天才と言っていいですね」
「これまで幾度も煮え湯を飲まされてきた」
 ナポレオンにはというのだ。
「それが癪でもな」
「小男なぞと言って馬鹿にせず」
「彼の背丈のことも詳しく知り」
「そして馬鹿にしない」
「そうすることですね」
「さもないとまた敗れる」 
 そうなるというのだ。
「だからな」
「彼のことをよく知り」
「そして戦い」
「そのうえで勝つことですね」
「そうだ、彼だけではない」
 ウェリントンは話を続けた。
「フランスのこともだ」
「よく知ることですね」
「どれだけの力があるか」
「そのことを」
「戦術についてもな」
 それもというのだ。
「知ることだ、あとだ」
「あと?」
「あとといいますと」
「どうもだ」
 ここでウェリントンはこんなことを言った。
「フランスも一枚岩ではない様だ」
「そうなのですか」
「彼の下一つになっている」
「そう見えますが」
「どうもだ」
 ウェリントンは真剣な顔で話した。
「ベルナドット将軍だが」
「彼も優れていますね」
「中々」
「侮れない人物です」
「思うところがあり」 
 そうであってというのだ。
「盟友とされるミュラ将軍もな」
「違いますか」
「非常に勇猛ですが」
「彼の妹婿でもあり」
「色々あるかもな」
 こう言うのだった、彼はフランス軍を見て言っていた。しかし政治のことは然程見ていないと言えた。
 その時フランスではある対立が生じていた。
「またか」
「はい」
 ある官吏がナポレオンに話していた。
「タレーラン殿とフーシェ殿がです」
「皮肉を言い合っているか」
「そうしています」
「二人共優れているがな」
 ナポレオンはそれでもと話した。
「どうしてもな」
「仲が悪いですね」
「どうもな」
 こう言うのだった。
「それもかなりだ」
「お二方は頼れますが」
「能力はな」
 ナポレオンはにこりともせず述べた。 
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